弁護士コラム

交通事故で死亡した場合に被害者が将来受給できたはずの年金については,賠償されますか。

[投稿日] 2018年10月01日 [最終更新日] 2018年10月01日
Resized avatar mini magick20180601 14817 ignl90

岡田 正樹 弁護士 むさしの森法律事務所

【初回相談無料】弁護士歴30年以上で、書籍出版経験のある実績豊富な弁護士が、交通事故をはじめとした様々な法律問題に悩むご相談者様の話をしっかりとお伺いして、最適な結果を目指します。

1 年金について逸失利益性は認められますか。
年金には国民年金・厚生年金・共済年金があり,
それぞれに老齢,退職時支給・後遺障害支給・遺族支給があります。
(1)逸失利益の発生が認められるもの
老齢,退職時支給される国民年金・厚生年金・共済年金
例えば,老齢基礎年金,公務員退職共済年金,恩給等です。
(2)逸失利益の発生が否定されるものは遺族支給の年金


2 年金の逸失利益の計算は,どのようにしますか。
受給していた年金額(年額)×(1-生活費控除率)×死亡時年齢から見た平均余命数に対応するライプニッツ係数

例えば74歳で死亡した女性が年間60万円の年金を受給していたならば,74歳からの平均余命は16年間(平成28年:小数点以下切り捨て)であるので,それに対応するライプニッツ係数は,10.8378ですから,次のようになります。
なお,生活費控除率は50%としました。
60万×(1-0.5)×10.8378=325万1,340円


3 年金の死亡逸失利益が認められる場合の生活費控除率はどの位ですか。
原則としては60%ですが,事案により50から80%での範囲で個別に判断されます。
特に,年金以外の収入があったり主婦であったりした場合には,事案に即した控除率が採用されています。

年金については,制度の目的から,どうしても受給した分をそのまま生活費に使ってしまうと考えられ,従って,生活費控除率は高めになりがちです。
しかし,それぞれの状況に応じて異なってくると言えます。

年金以外に収入がある場合には通常の生活費控除率で行い,年金のみが収入の場合には幾分高めの生活費控除率で行う傾向があるようです。


4 年金受給前に事故で死亡した被害者について将来の年金に対する逸失利益は認められますか。
受給前であっても,年金の逸失利益を肯定することはできます。
その場合に,受給資格を既に取得していたかどうかにより,結論が異なってくることがあります。
つまり受給資格がない場合に,損害計算が煩雑になるだけではなく,将来の不確定な要素によらざるを得ないためにせっかく主張立証しても否定される可能性があるので十分に検討する必要があります。

受給前の場合の計算式を考えてみましょう。
ちなみに
受給後の場合には,
受給していた年金額(年額)×(1-生活費控除率)×死亡時年齢から見た平均余命数に対応するライプニッツ係数
となります。

これに対して,受給前では
{(予想される老齢・退職年金額)×(1-生活費控除率)×
[(平均余命に対応するライプニッツ係数)-(予想される支給開始までの年数に対応するライプニッツ係数)]}
-{予想される保険料の年額×保険料の支払いを要する年数に対応するライプニッツ係数}

受給前ですから,「受給していた年金額(年額)」に代えて「予想される老齢・退職年金額」を基礎額にします。

そして,受給後であれば単純に「死亡時年齢から見た平均余命数に対応するライプニッツ係数」をかけるところ,「(平均余命に対応するライプニッツ係数)-(予想される支給開始までの年数に対応するライプニッツ係数)」という算定をします。

その上で,生存していたならば支払いが必要な保険料を差し引かなくてはならないのです。
それが,{予想される保険料の年額×保険料の支払いを要する年数に対応するライプニッツ係数}です。
しかし,例えば現在50歳である場合に,支給開始が65歳(あるいは67歳)とした場合に,予想される老齢・退職年金額,平均余命,予想される支給開始までの年数,予想される保険料の年額,予想される支給開始までの年数等は,将来予測のために統計資料あるいは制度の変動もあり得るために不確実な要素が入っていることは否定できません。
ましてや,財政状況を考えると年金制度が今後どのようなものになるのかは,全く予断を許すことができない状況です。
その点が,受給前でも年金の逸失利益を肯定する原則に立ちながらも,受給資格などで「線引き」をする問題が生じている理由です。

岡田 正樹 弁護士

注力分野
交通事故
  • Icon 2初回相談無料
  • Icon 1法テラス利用可
  • Icon 5電話相談可
  • Icon 1当日相談可
  • Icon 5着手金無料あり
【初回相談無料】弁護士歴30年以上で、書籍出版経験のある実績豊富な弁護士が、交通事故をはじめとした様々な法律問題に悩むご相談者様の話をしっかりとお伺いして、最適な結果を目指します。

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

ページ
トップへ