弁護士コラム

てるみくらぶをめぐる諸問題について

[投稿日] 2017年04月01日 [最終更新日] 2017年04月03日
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小川 智史 神田須田町法律事務所

依頼者のために最善を尽くしていきます

 旅行会社「てるみくらぶ」が破産手続開始決定を受けたことに関連し、(1)同社の労働契約の関係では、特に、①新卒採用予定者の内定取消及び②内定が取り消された人を無試験で採用すると申し出た企業が現れたこと、(3)旅行代金については、①一般的な返還請求の可否のほか、②クレジットカード決済の場合救済を受けられる可能性について、(3)経営者の責任追及の可否等の様々な法的問題が生じています。そこで、以下検討を行います。

 

1.新卒採用予定者の内定取消の問題について

(1)内定取消の適法性について

 ア まず、労働契約一般において、採用内定については解雇権留保付留保契約と解されていますが、労働者の地位に重大な影響を及ぼすものであり、内定取消には客観的に合理的であり社会通念上相当な理由が必要とされています(最高裁昭和54年7月20日判決)。そのため、一般論としては、使用者からの内定取消については、契約中の労働者の解雇の場合と同様、厳しく制限されます。

 イ ただ、本件の場合は、てるみくらぶの破産手続開始決定に基づく内定取消となりますが、破産手続の場合、最終的には残余財産を処分して法人たる会社は消滅することとなります。そのため、会社自体の消滅が予定されている以上、内定取消にはやむを得ない事由があり、適法というべきでしょう。

 なお、日本航空の会社更生手続時における整理解雇について、解雇手続きや人選の妥当性も考慮した上で、適法とした裁判例があります。

 

(2)内定取消者の無試験での採用について

 まず、企業による労働者の採用については、契約締結の自由の一種として採用の自由を有しており、原則として企業が自由に採用できるとされます(最高裁昭和48年12月12日大法廷判決)。

 もっとも、一般的には各企業の業務内容や社風等を踏まえ、書類選考や面接等の慎重な採用手続きを経て、内定者を決定するものと思われます。そのため、てるみくらぶは旅行業であるところ、てるみくらぶが内定を出していたことをもって、他業種の会社が無試験で採用することが妥当なのか、という問題もあります。

 しかし、上記の通り企業は採用の自由を有しており、上記のような採用方法を含めてその企業が経営判断するので、その判断の妥当性については直接的には企業の経営者が、間接的にはその企業の取引先や株主等が判断することとなります。なお、特に新卒採用者の場合には元々職務経験をもとに内定が出されたとは言えない以上、業種が異なると言っても、その能力や人柄を活かした新天地での活躍を期待することになるでしょう。

 

2.旅行代金の返還請求等について

(1)支払済み代金の返還請求について

 まず、てるみくらぶへの支払済み旅行等代金について、一般社団法人日本旅行業協会のHPによれば、総額1億2000万円を限度に、認証を受けた顧客に対し比例按分した金額を還付するとされます。ただ、同HPによれば、還付請求額が1億2000万円を超える見通しであり、還付可能額は一部に限定されると思われます。

 同協会から還付を受けられなかった残額については、一般的な破産債権者として、てるみくらぶの破産手続において裁判所に届出を行なう必要があります。破産手続を経た上で一般債権者への支払い可能財産があれば配当がなされる可能性はありますが、おそらくは、ごく一部に限定されるのではないかと思います。

 

(2)クレジットカード決済の場合における救済可能性について

ア 上記(1)は一般的な返還請求の可否についてですが、クレジットカード決済の場合は、決済内容によっては、クレジットカード会社による立替払金の請求を拒絶できる可能性があります。

 その根拠としては、割賦販売上、「包括信用購入あっせんに係る購入」の場合には、対象商品あるいは役務を販売した業者(本件ではてるみくらぶ)に生じた事由を持った自由をもって、包括信用購入あっせん業者(カード会社)に対抗できるとの規定になります(割賦販売法30条の4第1項)。てるみくらぶの破産により、旅行代金の対価である旅行が実施実施されないため、旅行契約の債務不履行解除等により代金債務が消滅するとの事由を、カード会社にも対抗するということになります。

イ ただ、上記規定の適用にはいくつか要件があり、まず、①「包括信用購入あっせん」(同法2条3項1号)に該当する必要があります。「包括信用あっせん」には要件があり、加盟店(本件ではてるみくらぶ)との契約締結時から、カード利用者とカード会社との決済日まで2か月以上の期間が存する必要があります。分割払いの場合には通常は該当すると思いますが、一括払いの場合には、カード利用時から決済日まで2か月以内の場合が多く、適用対象外となる可能性が高いです。カード利用時と決済日までの期間につき注意する必要があります。

 次に、②決済金額が4万円未満の場合は、抗弁の対抗規定は対象外となります(割賦販売法30条の3第4項、同法施行令21条)。

 また、③旅行契約が営業としてまたは営業のために締結された場合も、適用対象外となります(割賦販売法8条1号)。そのため、特に法人用カードや個人でもビジネス用カードを利用して決済した場合には、適用対象外となる可能性が高いです。

  上記以外にも、④事業者が従業員に対して包括信用購入あっせんを行う場合等、いくつか除外事由がありますが、本件では主要な問題から外れるため、割愛します。

ウ 上記は、割賦販売法に基づくカード会社への抗弁の対抗の可否についてですが、個々のカード契約に関する約款の定めあるいはカード会社の対応によっては、個別の対応が可能となる可能性がないとは言えません。

 

3.経営者の責任追及について

(1)民事責任の追及について

 てるみくらぶが破産に至る経緯について、取締役に経営上の善管注意義務違反や忠実義務違反があれば、直接的には会社に対する損害賠償責任を負います(会社法423条1項)。ただし、取締役に故意または重過失がない場合には、代表取締役については報酬の6年分、それ以外の取締役については報酬の4年分を限度とする旨定款で定めることができるため(会社法426条1項、425条1項1号)、大きな会社ですと定款で責任を限定している例が多いです。

 破産手続が開始された場合には、会社役員の責任については、破産管財人の申立て又は裁判所の職権により、役員責任査定手続が行われる可能性があります(破産法178条1項)。

 ただ、取締役の善管注意義務違反等の成否については、結果責任ではなく、対象となる行為をした時点での判断の合理性が基準となります。報道によれば、てるみくらぶによる粉飾決算の可能性も指摘されていますが、当職も詳細な事実関係は把握しかねますので、具体的な言及は差し控えます。

 

(2)刑事責任の追及について

  旅行代金を支払ったにもかかわらず旅行がいけなかった、あるいは旅行先で苦難が生じた方については、詐欺に遭われたようなお気持ちもあるのではないかと思います。そこで、本件における詐欺罪の成否についても検討します。

  本件において、一般客に対する詐欺罪が成立するためには、旅行契約を履行する意思も能力もないのに旅行代金をだまし取ったことが必要となります。

  一般論としては、会社の法的整理という選択はやむを得ない最終手段であり、会社倒産の寸前まで業務継続を予定し、業務継続のための努力を続けている例が多いのではないかと思います。したがって、経営不振の会社が顧客に対し代金請求を行なっていたことをもって直ちに詐欺罪の成立を認めるのは困難です。

  もっとも、破産手続開始申立を決定し、業務継続の困難性が確実であるにもかかわらず、業務遂行可能かのように装って新規の契約を締結した場合には、詐欺罪が成立する可能性がないとは言えません。ただ、本件ではそのような事情があるか否かは分からず、安易に当職が言及することは不適切ですので、それ以上の言及は差し控えます。

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

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