弁護士コラム

少額債権の回収方法について

[投稿日] 2017年05月13日 [最終更新日] 2017年05月13日
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小川 智史 神田須田町法律事務所

依頼者のために最善を尽くしていきます

 日常の様々なトラブル、例えば契約上のトラブルや、事故や事件により生じた損害賠償請求等、相手方との債権債務関係に関するご相談を受けることが少なくありません。ただ、債権額が少額の場合、弁護士に依頼すると費用対効果に合わないケースが多いです。そこで、少額債権を回収する方法について検討を行います。

 

1.相手方への請求について

(1)まずは、法的手続に移行する前に、相手方への文書で正式な請求を行ない、話し合いによる解決の可能性を検討した方がよいでしょう。

 文書での通知に関しては、内容証明郵便を送付する方法が考えられまずが、内容証明郵便は1行の字数や封筒の宛名等について郵便局で厳格なチェックがなされるため手続的に面倒なほか、枚数に応じて1,000円超の料金が発生します(詳細は日本郵便のHPをご覧ください)。

 そこで、もう少し簡便な文書の送付方法として、特定記録郵便や簡易書留郵便を活用する方法が考えられます。特定記録郵便は、郵便局員が相手方のポストに送付した点が記録されて追跡可能な郵便方法であり、分量に応じて料金は242円~となります。簡易書留郵便は、郵便局員から相手方又は同居者等に受け取りがなされた点が記録されて追跡可能な郵便方法であり、分量に応じて料金は392円~となります。ただし、簡易書留郵便については、相手方が受領しなかった場合、不在返戻となる可能性があります。

 文書が送付された点は記録されるので、仮に相手方が当該文書到達・受領の事実を争ってきた場合には、代わりに受領した郵便物の提出を求める等の方法が考えられます。

 

(2)相手方の住所が分かっている場合は文書の送付が可能ですが、住所が分からない場合には住所を調査する必要があります。

 不動産に関するトラブルであれば、登記簿上所有者の住所が記載されていますが、最終の登記日が古い場合には、移転している可能性があります。

 交通事故の場合は交通事故証明書の取得、刑事事件であれば警察官や検察官に加害者の住所を教えて頂く等の方法が考えられます。

 その他の事案の場合は、個別の事情に応じて検討していく必要があるでしょう。

 

(3)また、相手方との交渉や法的手続への移行に備え、主として、①契約内容や事故・事件等、債権の発生原因、及び②請求者に生じた損害額及び原因行為との因果関係について、その根拠について理由づけるとともに、証拠を集めておく必要があります。

 

2.話し合いがまとまらない場合の対応策について

 話し合いがまとまらない場合は、相手方に対する訴訟提起が必要となる可能性が高く、この場合は請求内容を基礎づける法的根拠を主張するとともに、請求内容について立証する必要があります。訴額が140万円以下の場合、原則として簡易裁判所に提訴する必要がありますが、債権者住所地管轄裁判所に提訴することが可能です(民事訴訟法5条1号、民法484条)。

 もっとも、訴訟以外の方法による対応策としては、以下のような方法が考えられます。

 

(1)相手方に対する調停申立て

 相手方と話し合い自体は可能であるものの、具体的な見解について相違がある場合、簡易裁判所に調停申立てを行ない、裁判所に間に入っていただいた上で話し合いを行なう方法が考えられます。

 相手方と調停が成立して調停調書が作成されると、相手方が支払いに応じない場合には、強制執行が可能となります。

 ただ、調停の場合、①原則として相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する裁判所に申し立てる必要があるとともに(民事調停法3条1項)、②相手方との話し合いがまとまらない場合には調停不成立となる可能性があるので、注意する必要があります。

 

(2)支払督促の申立てについて

 相手方への請求金額が明確な場合は、簡易裁判所への支払督促申立てを行なう方法が考えられます(民事訴訟法382条)。

 相手方が異議申立を行なわなかった場合には、原則として仮執行宣言つきの支払督促が確定し、判決の場合と同様に強制執行が可能となります。

 ただ、支払督促の場合、①原則として債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てする必要があり(同法383条1項)、債権者住所地の管轄裁判所へ申立てできないとともに、②異議申立てがなされた場合は通常訴訟に移行するため(同法395条)、注意する必要があります。

 

(3)少額訴訟の提起について

 債権額が60万円以下の場合、簡易裁判所に少額訴訟の提起を行う方法が考えられます(同法368条)。少額訴訟においては、1回の期日での終結が原則とされ(同法370条1項)、初回期日までに全ての主張立証を行なう必要があります(同条2項)。

 ただ、少額訴訟については、被告が通常訴訟への移行を求めた場合、通常訴訟に移行する点に注意する必要があります(同法373条1項、2項)。

 

(4) 相手方財産の仮差押について

 訴訟等の法的手続を行なっているうちに相手方が資産隠しを行なう恐れがある場合、相手方の不動産、売掛金、預金等について仮差押を行なう方法が考えられます。なお、相手方の給与については、差押を認めると相手方の生活に重大な影響を及ぼす恐れがあり、債権の存在自体が確定していない「仮」差押の段階では認められる可能性は低いと思われます。

 ただ、①仮差押の申立てが認められるためには、裁判所の指定する一定割合の保証金を納付する必要があるほか、②少額債権の場合は、仮差押申立て自体が費用対効果に合わないおそれがあるとともに、③保全の必要性が認められない可能性がある点に注意する必要があります。

 

(5) 刑事事件の場合

  相手方の行為が犯罪に起因する場合には、まずは警察に被害届を提出して捜査して頂く必要があるでしょう。

  警察・検察等の捜査機関は、基本的には刑事処分を実施するために捜査を行ないますが、被害者のいる事案では、加害者から被害者に対する被害弁償や示談の成否を重視します。

  特に、加害者が逮捕・勾留されている場合には、起訴猶予や保釈、執行猶予つきの判決を求めて、被害弁償や示談申入れを行なってくる可能性がありますので、加害者の処分の動向を見極めたうえで、対応を検討する必要があります。

  また、犯罪行為が、①殺人罪・傷害罪等の故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪、②強制わいせつ罪等の性犯罪、③逮捕・監禁罪、④誘拐に関する罪の場合、「損害賠償命令申立て」といって、刑事裁判に引き続いて裁判所で損害賠償請求手続を行ない、刑事裁判の証拠を用いることが可能です(犯罪被害者等の権利利益を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律23条)。そのため、これらの犯罪については、捜査段階で検察官に積極的に正式起訴を求める旨要請するのも一つの選択肢です。もっとも、これらの犯罪被害の場合、被害額も相当額に上るため、「少額債権」とはいえないかもしれませんが。。。

 

 

3.相手方財産に対する強制執行について

(1) 訴訟による判決や、裁判上の和解が成立したが支払がなされなかった場合のほか、上記の調停調書や仮執行宣言つき支払督促があれば、相手方財産に対する強制執行が可能です。

 本執行の場合、給与の差押も可能ですが、原則として税金や社会保険料等を控除した手取り額の1/4までとされます。

 不動産競売申立を行なう場合、当該不動産にローン等によるの担保権が設定されている場合には、競売により担保権者に充当して余りが出ると見込まれる必要があります。

 預金債権の差押については、金融機関の支店名を特定する必要があります。金融機関によっては、弁護士会からの照会により、当該相手方の預金の有無につき全店舗を対象に回答頂ける場合もありますが、現状では一部の金融機関に限られます。

 

(2) 資産のある相手方であれば、強制執行を回避するため、敗訴が見込まれる段階で和解申入れを行なうか、遅くとも判決が確定した段階で支払いを行なってくると思われます。

 そうすると、現実に強制執行まで至る場合、実際には回収困難となり、費用倒れになってしまう恐れもあります。

 そのため、資力の乏しい相手方との場合、全額勝訴判決が見込まれる場合であっても、減額による和解を選択する必要が生じる場合が少なくありません。

 このような現状は、民事訴訟手続及び執行手続を無力化するものであって、執行制度の改正等の法改正も検討されていますが、現状の法制度においては、相手方からの現実の回収可能性も踏まえて対応を検討する必要があります。

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

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