弁護士コラム

民法改正について

[投稿日] 2017年05月29日 [最終更新日] 2017年05月29日
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小川 智史 神田須田町法律事務所

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 本年5月26日、主として債権法部分を改正する民法改正案が参議院で可決し、改正法が成立しました。現行民法のうち家族法を除く総則・物権法・債権法部分は明治時代に成立以降、細部の改正を除けば骨格としては大きく変わることなく維持されてきましたが、今回は大幅な本格改正となります。

 改正内容は多岐にわたりますが、主な改正内容は以下の通りとなります。

 

1.意思能力を欠く場合の契約等の法律行為の効力の明文化

 現行民法では、当事者が重度の認知症等、法的な判断を行なう意思能力を欠く場合の契約等の効力につき明文の規定はなく、解釈により無効とされています。

 しかし、改正後の民法では、意思能力を欠く場合における契約等の法律行為を無効とする旨、明文化されます。

 

2.債権の消滅時効について

(1)現行民法では、一般債権の消滅時効については権利を行使できる時から10年とされており(民法167条1項)、会社等の商事債権については5年(商法522条)、その他職業別の債権の消滅時効等が定められています。

 しかし、改正法では、①権利を行使できることを知った時から5年、または、②権利を行使できる時から10年とされるとともに、商事消滅時効や職業別の短期消滅時効は廃止され、消滅時効期間が大幅に整理されます。

(2)また、第三者からの不法行為に基づく損害賠償請求権について、現行民法では、損害および加害者を知った時から3年又は不法行為の時から20年経過した時は消滅時効にかかるとされます(厳密には、後者については「除斥期間」といって時効中断はなく、援用も不要とされます)。

 しかし、改正後は、特に生命・身体の加害により生じた損害賠償請求権については、被害者保護を強化すべく、①損害又は加害者を知った時から5年、または②権利を行使できる時から20年に伸長されます。

 

3.債権の法定利率について

 現行民法では、債権の法定利率については年5%と定められていますが(民法404条)、昨今の低金利状況を踏まえ、改正法施行後は3%とし、その後3年ごとに法定利率を見直すこととされます。

 なお、一般債権については利率の縮小となりますが、交通事故等において後遺障害逸失利益が問題となる場合、一括支払による中間利息控除がなされるところ、改正後は控除率が低くなるため、逸失利益が問題となる場合には賠償額の増額が見込まれます。また、自動車保険の保険料にも影響する可能性があります。

 

4.事業のための個人保証の制限

 事業のために負担した貸金等債務を保証債務とする保証契約、又は主たる債務に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約については、契約の締結前1カ月以内に、公正証書で保証債務履行意思を表示する必要があります。公正証書作成の際、公証人から保証契約の詳細について口授がなされた上で意思確認がなされます。ただし、法人の取締役等一定の地位にある者は除外されます。

 また、主たる債務者は、保証人が個人の場合には、財産及び収支の状況等の債務の履行に関する情報を提供する必要があります。

 

5.契約に関する一般規定

(1)まず、現行民法の解釈上、契約自由の原則が大前提とされていますが、改正法では明文化されました。

(2)また、現行民法では、相手方の債務不履行がある場合には、相当期間を定めて履行の催告を行なった上で原則として解除することができるとされますが、改正後は、軽微な債務不履行の場合には解除できない旨定められます。

(3)そして、現行民法では、契約約款に関する明文規定がありませんでしたが、改正後は明文化され、①定型約款を契約内容とする旨合意するか、②定型約款の準備者(大企業と消費者取引の場合における企業側等)が定型約款を契約内容とする旨予め相手方に表示していた場合は、個々の約款の内容が契約内容となります。ただし、定型約款の内容が相手方の利益を一方的に害する場合には、契約内容とならない可能性があります。

 また、定型約款の変更について、合理的な内容であれば、定型約款準備者は個別の相手方との合意なく変更できるとされます。ただし、定型約款を変更する旨並びにその内容及び時期をインターネット等で周知する必要があります。

 

6.瑕疵担保責任について

(1)現行民法では、契約の目的物に瑕疵(欠陥)があった場合には解除・損害賠償ができるとされており(民法570条・566条1項)、現在の通説では、特定物の取引(不動産売買等、具体的に定められた特定の物に関する取引)において法が特に定めた無過失責任であり、損害賠償の範囲も債務不履行責任に比べて限定されると解されています。

(2)しかし、改正後は、「瑕疵担保責任」という特別の責任ではなく、「契約内容に適合しない場合の責任」として債務不履行の一類型として扱われることとなり、解除の要件や損害賠償の範囲も変わると見込まれます。改正後の現・瑕疵担保責任の位置づけはややこしいのですが、詳細は割愛します。

(3)なお、現行民法では売買の目的物に瑕疵があった場合の修補請求等について明文の規定はありませんが、改正後は売主の追完義務として、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求できるとされます。

 

7.賃貸借契約について

(1)地震等の賃借人の責めに帰さない事由により賃借物の一部が滅失した場合、現行民法では賃借人から賃料減額を請求「できる」と定められていますが(民法611条1項)、改正後は当然減額となります。

(2)現行法上、敷金については明文規定がありませんが、改正後は明文化され、未払い債務を控除した後の全額の返還が原則とされます。

(3)また、賃借物の原状回復義務について、通常損耗や経年劣化による損耗は除くものと明記されます。

(4)上記(2)(3)について、改正民法規定と異なる特約を定めることは可能ですが、特約の内容が合理性・相当性を欠く場合、改正後の原則を踏まえて信義則上特約の適用が制限される可能性があります。

 

8.改正法の施行時期について

 改正民法は間もなく公布される見込みですが、公布後3年以内に政令で定める日までに施行されるとされます。したがって、遅くとも2020年の6月頃までには施行される見通しです。

 

9.まとめ

 上記以外にも従来の判例の明文かとされる部分など改正部分は多岐にわたりますが、割愛します。

 従来の規定から大幅改正される部分も少なくなく、今後の日常生活に及ぼす影響は大きいでしょう。改正法の解釈をめぐって新たな議論や判例等も構築されると見込まれるため、今後改正法の運用状況を注視していく必要があります。

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

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