弁護士コラム

詐害行為取消権について②(詐害行為の類型、民法改正との関係等)

[投稿日] 2017年10月18日 [最終更新日] 2017年10月18日
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小川 智史 神田須田町法律事務所

依頼者のために最善を尽くしていきます

  前回は、詐害行為取消権についての一般的な要件、被保全債権との関係等について検討を行いましたが、今回は、具体的にいかなる処分行為が詐害行為に該当するのか、主なものについて検討を行います。

 

1.贈与

→財産の減少行為として、典型的な詐害行為に当たるとされます。

 なお、贈与税の特例を用いた配偶者への不動産の贈与がしばしば問題となりますが、税法上の課税の有無と、民法の詐害行為性は別個の問題と解されます。

 

2.債務の負担行為

→対価性のない債務負担行為の場合、財産の減少行為として、詐害行為に当たるとされます。

 

3.弁済・代物弁済

→債務の弁済については、原則として詐害行為に当たらないとされますが、債務者が他の債権者と共謀して他の債権者を害するような弁済を行なった場合には、詐害行為に当たるとされます。他の債権者から迫られてやむを得ず弁済したようなケースでは詐害行為に当たらないとされる傾向があるようですが、具体的事案によります。

 債務の支払いを金銭ではなく、不動産等により代物弁済した場合、相当価格を超過していれば、超過部分について詐害行為に当たると思われます。 相当価格での代物弁済については、債務者が特定の債権者と通謀し、その債権者に優先的満足を与える意図で行なった場合は、詐害行為に当たるとされます。ただ、代物弁済については、相当価格か否かの判断が容易でない場合も少なくない点に注意する必要があります。

 

4.離婚に伴う財産分与・慰謝料

→離婚に伴う財産分与や不貞行為による慰謝料については、原則として他の債権者に対する詐害行為に当たりませんが、不相当に過大な場合は、過大な部分につき詐害行為となる可能性があります(最高裁平成12年3月9日判決。以下、「平成12年最判」といいます)。平成12年最判の事案では、離婚に伴う財産分与・慰謝料額が不相当に過大であるとして、過大な部分が詐害行為に当たると認定しています。

 もっとも、離婚に伴う財産分与・(不貞行為による)慰謝料の相当性については、婚姻期間及びその間の配偶者における財産形成の貢献度合いや、長期間にわたり調停・訴訟を行なった場合の婚姻費用や精神的負担等の様々な要素が絡むため、単純計算で判断できない側面があります。

 また、上記平成12年最判の後に、財産分与・慰謝料の詐害行為性を否定した例も見られます(ただし、他の財産によっても債務の弁済が可能と見込まれる事情が存するケースのようです)。

 いずれにせよ、一方配偶者が多額の負債を抱える場合は、他の債権者からの詐害行為取消権行使の可能性に留意する必要があります。

 

5.遺産分割協議

→債務者Aが近親の親族Bの遺産につき、他の相続人Cらとの間において、本来得られるべき法定相続分を取得しない遺産分割協議を行なった場合、遺産分割協議も財産権を目的とする法律行為として、詐害行為に当たるとされます(判例の事案では、本来得られるべき不動産の持分を取得しなかった点が問題とされています)。

 

6.相続放棄

→債務者Aが、近親の親族Bの法定相続人であり、Bにはプラスの遺産があるものの、Aが相続放棄した場合において、「財産権を目的としない法律行為」(民法424条2項)として、相続放棄は詐害行為に当たらないとされます」。

 遺産分割との違いは、遺産分割の場合は一旦相続人として相続財産(の共有持分)を取得した上でその帰属を確定させる行為であるのに対し、相続放棄の場合はそもそも相続人となるか否かの問題であるとともに(法的には「身分行為」といいます)、積極的に財産を減少させるというよりは消極的に財産の増加を妨げるにすぎず、財産権を目的とする法律行為に当たらないとされる点にあります。

 なお、債務者Aが死亡した場合に法定相続人Bが相続放棄するか否かは、そもそも債務の承継を含めて相続人となるか否かの問題であり、詐害行為性以前の問題とされます。

 

7.民法改正との関係について

 以上述べた点につきましては、現行法における従前の判例・解釈に基づく帰結となります。

 これに対し、本年5月26日成立・6月2日公布の民法改正法案(以下、「改正民法」といいます)では、従前の判例理論も踏まえた上で再検討を行なった結果、多くの事項が明文化されています。

(1) まず、詐害行為取消対象について、①従前の「法律行為」の規定を単に「行為」と改めた上で(改正民法424条1項・2項)、②相当の対価を得てした財産の処分行為の特則(同424条の2)、③特定の債権者に対する担保の供与等の特則(同424条の3)、④過大な代物弁済等の特則(同424条の4)の類型を明文化するとともに、⑤転得者に対し詐害行為取消請求できる場合についても明文化しています(同424条の5)。

(2) また、詐害行為取消権の行使の方法等につき、①財産の返還または価格の償還の請求(同424条の6)、②訴訟の当事者に関する事項(同424条の7)、③詐害行為取消の範囲(同424条の8)、④債権者への支払または引渡し(424条の9)について定めています。

(3) そして、詐害行為取消権行使の効果につき、①詐害行為取消を認める判決の効力が及ぶ者の範囲(同425条)、②債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利(同425条の2)、③受益者の債権の回復(同425条の3)、④詐害行為取消請求を受けた転得者の権利(同425条の4)、について定めています。

(4) さらに、詐害行使取消請求訴訟の提訴期間について、詐害行為を知った時から2年又は行為の時から10年と定めており(同426条)、後者については現行法からの実質改正となっています。

 

 

 

 

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

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