弁護士コラム

労働者の退職について

[投稿日] 2017年12月16日 [最終更新日] 2017年12月16日
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小川 智史 弁護士 神田須田町法律事務所

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 労働者の退職に関するご相談を頂くケースが少なくありません。そこで、今回は労働者が勤務先の会社を退職する場合の主な法的注意点について整理しておきたいと思います。

 

1.法律上の退職予告期間について

(1) 一般的な正社員としての雇用契約においては、定年の場合を除き、契約期間の定めがない例が大半ではないかと思います。

 契約期間の定めのない雇用契約については、退職日の2週間前に予告することによって、原則として退職が可能です(民法627条1項)。

 もっとも、期間によって報酬を定めた場合、退職の申入れは次期以後にすることができるとされ(民法627条2項前段)、退職申入れは当期の前半にしなければならないとされます(同項後段)。また、6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には、3か月前までに退職申入れを行なわなければならないとされます(同条)。

 民法627条2項の適用に関し、いわゆる月給制について、遅刻・欠勤等によって給与額が変動しない場合(以下、「完全月給制」といいます)には、期間によって報酬を定めた場合にあたるとされます。

 完全月給制の場合において、一例として、給与支給の基準日が月末締めとなっており、12月に退職申入れを行なう場合、民法上は、12月15日までに退職申入れを行なえば12月末日で退職の効果が発生しますが、12月16日以降に退職申入れを行なった場合には退職の効果発生は1月末日という帰結になります。

 

(2) これに対し、契約期間の定めのある雇用契約の場合、労働者の自己都合による退職は原則として認められませんが、やむを得ない事由がある場合は、直ちに退職することができるとされます(民法628条前段)。ただし、その事由が当事者の一方によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負うとされます(同条後段)。

 なお、①雇用(労働)契約の期間を定める場合であっても、労働基準法上、原則として3年以内とされています(同法14条1項柱書)。

  また、②1年を超える雇用(労働)契約期間を定めた場合において、原則として、契約期間の初日から1年を経過した日以降は、民法628条の規定にかかわらず、いつでも退職できるとされます(労働基準法137条)。

 ただし、上記①②については、専門的知識等を有する労働者または満60歳以上の労働者との労働契約について、適用されません。

 

2.退職予告期間を定める就業規則等について

(1) 上記退職予告期間に関し、特に期間の定めのない雇用契約について、「3か月前予告」「1か月予告」等、民法所定の期間よりも長い予告期間を定める就業規則の効力が問題となります。

 退職予告間に関する就業規則の効力に関する最高裁判例は見当たりませんが、多数説は、民法の規定が優先し、民法所定の期間よりも長い退職予告期間を定める就業規則には法的効力は認められないと解しています。また、明示はしていないものの、同様の前提に立つとみられる下級審裁判例がいくつか存在します。

 その背景としては、労働者の退職に関しては、職業選択の自由(憲法22条1項)の本質的内容を形成する点にあると思われます。

 もっとも、「1か月前予告」を定める就業規則について、民法627条2項の期間制報酬に該当する場合において、民放627条2項の適用より労働者側に有利になる場合には、当該就業規則を有効と解する余地はあると思われます。

 

(2) なお、労働者と使用者との合意により、上記の民法所定の期間より短い期間により退職日を定めることは妨げられません。ただし、合意退職とする場合、実質的な退職勧奨ととらえられることのないよう、注意する必要があります。

 

3.有給休暇の消化について

 一般的な労働者については、6か月以上の期間、8割以上出勤した場合には原則として有給休暇の請求権が発生しますが、実際にはなかなか有給休暇を取得(行使)できないという例は少なくないでしょう。

 もし、退職予告段階で未消化の有給休暇が残っていれば、有給消化の上で退職とすることは可能であり、そのような対応を行なう例は少なくないでしょう。

 なお、使用者には具体的な有給使用に関し、時季変更権がありますが、退職日まで日数が少ない場合、変更の余地が乏しく、時季変更権行使は認められない可能性が高いでしょう。

 

4.その他の問題点について

(1)退職予告を行なった場合でも、退職日まで会社との雇用契約は存続しますので、有給の使用や病気等の正当な理由がない限り、出勤して業務を行なう必要があります。また、法律論以前に、社会人として、正当な理由がない限り、退職までにきちんと業務の引継等を行なうのが望ましいでしょう。

 正当な理由なく出勤せず、使用者に損害が発生した場合、理論上は使用者に対する損害賠償責任が発生する可能性があります。ただ、(欠勤分の給与減額を超えて)使用者からの損害賠償責任が認められるケースは実際には稀です。

 

(2)また、期間の定めのある雇用契約について、理論上は民法628条後段に基づく損害賠償責任が発生する可能性がありますが、同条前段所定のやむを得ない事由が認められる場合においてもなお、使用者からの損害賠償請求が認められるケースは実際には稀です。

 

小川 智史 弁護士

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不動産・建築 企業法務 相続 裁判・法的手続
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