弁護士コラム

てるみくらぶをめぐる諸問題について(2)

[投稿日] 2018年01月21日 [最終更新日] 2018年02月07日
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小川 智史 弁護士 神田須田町法律事務所

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第1 捜査機関がてるみくらぶの社長宅を捜索した際、現金約700万円を押収していたとの報道が、本年1月16日になされました。

 報道によれば、社長につき破産法違反(資産隠匿による詐欺破産罪)の疑いで捜査がなされる可能性があるとのことですが、上記報道が事実であると仮定した場合において、その他考えられる法的問題について検討を行いたいと思います。

(2月7日追記)

 本年2月7日、てるみくらぶの社長が、現金の隠匿を前提とした破産手続開始申立について破産法違反の疑いで逮捕されたとの報道がありました。今後の捜査の上、同罪について起訴の可否が判断されるものと思われます。

 

1.代表者個人の免責等の破産手続に影響する可能性

(1) てるみくらぶの破産手続に関連し、社長個人も破産手続開始申立がなされ、現在破産手続中とのことですが、報道によれば、社長は上記現金について破産管財人に申告していなかったようです。

 上記報道のみでは断定できませんが、仮定の話として、上記現金について資産隠しした上で破産手続開始申立がなされていた場合には、財産の隠匿あるいは破産管財人に対する説明義務違反等として、免責不許可事由に当たる可能性があります(破産法252条1項1号、8号等)。

(2) 破産者に免責不許可事由が存する場合であっても、裁判所の裁量による免責制度があり(同法252条2項)、一般的には、免責不許可に至るケースは多くはありません。

 しかし、破産手続開始申立に至る経緯が悪質であったり、破産管財人に対する重大な説明義務違反・報告義務違反等が存する場合には、免責不許可となる可能性があります。

 免責不許可となるか否かは最終的には裁判所の判断ですし、詳しい事情も分かりませんので、本件に関して私が断定的な見通しを述べることはできませんが、上記事情が影響する可能性はあるかもしれません。

 

2.代表者個人が免責不許可となった場合の責任追及の可否

(1) 破産手続が終結した場合、法人である会社は法的には消滅しますが、代表者は個人として存続します。

  この場合、代表者個人は法人たる会社と別人格ですので、原則として会社債権者である一般顧客に対して法的責任は負いません。

  しかし、会社の役員等が会社の経営において悪意又は重大な過失があった場合には、会社債権者に対して個人としても法的責任を負うとされます(会社法429条1項)。

(2) 参考となる事案として、武富士の会社更生に伴い、いわゆる過払金に関して代表者個人の責任追及訴訟が起こされており、下級審では責任 を否定した例と肯定した例があるようです。

  てるみくらぶの場合、武富士とは若干事案が異なりますが、一般論として不特定多数の顧客が存する会社倒産の場合において代表者等へ会社法429条1項が適用されるのは、かなり限定的と解されます。

(3) なお、現行法上では会社の登記簿に代表者住所の記載がなされますが、現在法制審議会で検討されている会社法改正案では、会社の登記簿の取得を申請する際、代表者住所の記載については利害関係人に限定する旨の改正が検討されているようです。かかる改正がなされた場合、代表者の住所が分からず、代表者の責任追及が困難となるおそれがあります。

 

3.法人の破産手続に影響を及ぼす可能性

(1) 上記の通り、代表者宅から発見された現金は代表者個人の所有物と推定されるため(民法186条1項、188条)、原則として会社とは別個の財産となります。

(2) もっとも、何らかの根拠により会社財産の流出と認定できる場合には、会社の破産財団(破産手続において破産管財人管理下にある破産者の資産)を形成する可能性がありますが、破産財団の配当については、破産法上優先順位が定められています。

 具体的には、(1)まず、「財団債権」といってもっとも優先順位の高い債権が定められており(破産法148条1項各号)、破産手続費用や破産手続開始決定前1年間に納期限が到来する税金等の公租公課、破産手続開始決定前3カ月以内の従業員給与等が挙げられます。(2)次に、「優先的破産債権」といって(同法98条1項・2項)、破産手続開始決定までに1年以上納期限が経過している税金等の公租公課、破産手続開始決定前3か月超の従業員給与等が挙げられます。(3)一般顧客の支払済代金返還請求権等の一般破産債権の順位は、(1)(2)の後になります。

(3) したがって、一般顧客の支払済代金返還請求権に関する配当の可否は、財団債権や優先的破産債権に対する支払いを行なった後になお、配当可能な財産があるか否かによります。

 

第2 てるみくらぶ類似の問題(「はれのひ」の業務停止)について

1. 今年の成人式における振袖の着用について、成人の日に突如、振袖業者「はれのひ」が突如営業停止した問題が、報道等で大きく取り上げられました。

 新成人の方々においては、一生の一度の晴れ舞台が台無しになり、大変な憤りを感じていらっしゃると思います。

 

2. 「はれのひ」は現時点(本年1月21日)で法的整理は行なっていないようであり、業務停止に至る経緯も不明な部分が多いため、捜査機関による捜査を含め、今後の全容解明に関する動向を注視していく必要があります。

 ただし、てるみくらぶの件と類似点はあるものの、「はれのひ」については具体的な経緯が不明な部分が多いため、上記で述べたてるみくらぶに関する法的問題が当てはまるとは限らず、別の問題として捉える必要があります。

 

3. なお、「はれのひ」からの振袖購入ないしレンタルに関しては前払制のケースが多いようですが、もしクレジットカードによる分割払いがなされている場合には、カード会社に立替金支払中止を要請できる可能性があります。昨年4月1日付当職コラムでも言及しましたが、詳細に関しては、利用されているカード会社とご相談いただく必要があるでしょう。

 

4. (1月26日付追記)

 本年1月26日、「はれのひ」は破産手続開始申立及び裁判所からの破産手続開始決定について発表を行ない、社長が記者会見しました。

 会見によれば、「はれのひ」が顧客から預かっていた着物は返還する予定とのことです。また、以前は割賦払いを行なっていたが、最近はやめていたようです。

 「はれのひ」の問題については、新たなコラムを作成するか否かを含め、また改めて検討を行いたいと思います。

小川 智史 弁護士

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