弁護士コラム

「はれのひ」の破産手続開始について

[投稿日] 2018年01月28日 [最終更新日] 2018年02月02日
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小川 智史 弁護士 神田須田町法律事務所

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 本年1月8日の成人の日に突如営業停止した「はれのひ」について、1月26日に社長らによる記者会見がなされ、横浜地裁への破産手続開始申立及び破産手続開始決定等について発表がなされました。同社の破産手続開始に伴い生じる主な法的問題点について、現在までに報道等により判明している情報を基に、整理しておきたいと思います。

 

1.顧客の代金返還請求権について

(1) 1月26日の記者会見によれば、顧客からの預り品である着物薬約1、200着については、破産管財人において順次返還する予定であるとのことです。

(2) もっとも、今さら着物の返還を受けても手遅れであり、代金の返還を求めたいという顧客の方は少なくないのではないかと思います。 

 本年1月21日付「てるみくらぶをめぐる諸問題について(2)」でも言及しました通り、破産法上の配当順位について簡単に整理すると(実際はもっと複雑ですが)、①破産手続費用・未払い税金等の一部・未払い給与の一部等の「財団債権」が最優先され、②未払い税金の一部や未払い給与の一部等の「優先的破産債権」が次順位となり、③一般顧客の支払済代金返還請求権は、一般破産債権としてその後の順位になります。

 また、仮に所有不動産が存する場合でも、法人取引では金融機関の抵当権が設定されている場合が多く、抵当権等の担保権については「別除権」といって破産手続外で行使可能とされます。

 1月26日の記者会見によれば、破産手続開始申立時点で同社の負債総額は約6億3500万円と見込まれるものの、一般顧客への代金返還債務は計上できていないものも多く、最終的には10億円を超える可能性があるとのことです。

 さらに、同社の税金滞納が約5,500万円、従業員給与の未払いが約1,800万円存するとのことです。

 そのため、財団債権及び優先的破産債権だけでも相当額に上る見込みですので、一般破産債権者に配当できるだけの資産があるか否か、今後の破産手続の推移によります。 

 

2.代表者個人に対する責任追及の可否について

(1) 1月26日の記者会見では代表者が個人としても破産手続開始申立を行なっているか否かは不明でしたが、仮に代表者についても破産手続開始決定がなされている場合、通常は会社と一括して手続きが進行します。代表者の資産は破産手続費用の他、原則として個人の資産として個人に対する債権者(金融機関に会社債務の連帯保証している場合の金融機関等)への配当等に充てられます。ただし、会社財産の流出と認められる場合には、破産管財人の否認権行使等により、会社財産として回収できる可能性がないとは言えません。

 

(2) これに対し、代表者個人が破産手続開始申立を行なっていない場合には、理論上は会社法429条1項に基づく損害賠償請求の可否が問題となります。

 ただ、1月21日付「てるみくらぶをめぐる諸問題について(2)」でも言及しました通り、不特定多数の顧客と取引する会社の代表者に対する会社法429条1項の適用は非常に限定的とされます。また、武富士の場合は、過払金についてそもそも貸付利息自体が利息制限法に違反しており、旧貸金業法43条等により例外的な適法性が認められる可能性があるか否かといった前提でしたが、武富士の場合も裁判所は肯定例と否定例に分かれています。

 「はれのひ」に関して1月26日の記者会見ないし関連報道によれば、平成28年頃から経営が悪化し、昨年12月には他社との合併交渉や金融機関からの融資の話がとん挫したとのことです。遅くとも成人の日の前日にはしかるべき対応をとるべきであったのではないかと意見もありますが、本件において代表者に会社法429条1項の適用が認められるか否かは、(民事訴訟が提起された場合には)最終的に裁判所の判断になります。

 

(3) もっとも、1月26日の記者会見での代表者の回答による限りでは、代表者個人についても資産は現預金数十万円程度とのことです。代表者の資産状況について私からそれ以上の言及は差し控えますが、仮に代表者個人に賠償請求を行なう場合には、他の資産の有無等、現実の回収可能性についても検討する必要があります。

 

(4) なお、1月21日付「てるみくらぶをめぐる諸問題について(2)」でも言及しました通り、会社の登記簿謄本取得に際し、代表者住所が記載された謄本発行を制限する趣旨の会社法改正が現在法制審で検討されていますが、代表者の住所がわからなくなると、訴訟提起等の責任追及が困難となる恐れが高いです。代表者のプライバシー保護等に一定の配慮をする必要はあるものの、当該改正案については、反対の世論を形成していく必要があるものと思われます。

 

(2月2日追記)

(5) 「はれのひ社長 破産申立検討へ」との報道がなされていましたので、2月1日時点ではまだ代表者個人は破産手続開始申立を行なっていないようですが、近日中に代表者個人についても申立ての実施、及び破産手続開始決定が予想されます。

 ただし、一連の経緯に照らし、代表者個人について免責が許可されるか否かについては、破産手続において免責不許可事由の有無及び免責不許可事由が存する場合の裁量免責の可否について検討がなされた上で、判断されることになると思われます。

 

3.代表者の刑事責任の可能性について

 1月26日の記者会見では、報道陣から「はれのひ」代表者に対し、詐欺ではないかという趣旨の質問がなされ、代表者としては詐欺との認識はないとの回答がなされていました。

 本件に関しては、顧客の方から警察への被害届が提出されているようであり、代表者個人の刑事責任については捜査機関による今後の捜査に委ねられることとなります。

 刑事責任の成否については慎重に検討する必要があり、私からは「はれのひ」代表者の刑事責任について詳しい言及は差し控えます。

 ただ、てるみくらぶの場合には、粉飾決算を前提とした金融機関からの融資について金融機関に対する詐欺罪として起訴されているようですが、本年1月28日時点では、一般顧客に対する詐欺罪の成否に関しては、捜査がなされているとの報道等は見当たらないようです。

小川 智史 弁護士

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