弁護士コラム

自然災害により生じた損害の賠償請求等の可否について(1)

[投稿日] 2018年09月05日 [最終更新日] 2018年09月14日
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小川 智史 弁護士 神田須田町法律事務所

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本年9月4日、台風21号が非常に強い勢力で関西地方を直撃し、各地に大きな被害をもたらしました。また、本年7月より、特に西日本地区を中心に集中豪雨が相次ぎ、甚大な被害をもたらしています。災害に遭われた皆様には、謹んでお見舞い申し上げます。

上記踏まえ、今回は、災害により生じた損害、例えば隣家の屋根瓦が吹き飛ばされて財産的損害が生じた場合や、隣地からの流入した土砂の撤去請求の可否等に関する法律関係について整理しておきたいと思います。

 

1.損害賠償請求に関する民法の規定

(1)第三者との法律関係による一般規定としては、故意または過失により他人の権利を侵害した場合の賠償等を定める不法行為責任(民法709条)がありますが、土地の工作物の瑕疵により第三者に損害を生じさせた場合の特別規定として、工作物の所有者ないし占有者に対する土地の工作物責任の規定(民法717条1項)があります。

 土地の工作物責任は、土地の工作物が危険性を有している点に照らし、工作物自体に瑕疵(欠陥)により第三者に損害を生じさせた場合に工作物の所有者または占有者の責任を強化する趣旨とされます。そして、民法717条1項の「瑕疵」とは、工作物が通常有すべき安全性を欠くことをいうとされます。

(2)もっとも、当事者間に契約関係が存する場合には、契約の定めあるいは当該契約類型に関する法律の定めによることとなります。

 例えば、建物賃貸借契約に関し、台風で飛ばされてきた物によって賃借物件の壁が損傷した場合や、地震で建物が一部損壊した場合等は、原則として賃借人に修繕義務があるとされます(民法606条1項)。ただし、賃借物件が使用困難なほど損壊した場合には、賃貸借契約は終了するとされます(民法536条1項)。

 なお、台風で賃貸物件の瓦が飛ばされ、敷地内の賃借人所有自動車が損傷したような場合、通常は賃貸借契約上の修繕対象とは言えず、土地工作物責任の成否の問題になると思われます。ただし、賃貸人と駐車場利用契約が存する場合には、場合によっては駐車場利用契約上の管理責任が問題となる可能性があります。

 

2.土地の工作物の崩壊等により損害が生じた場合

(1)台風の強風により工作物(屋根の瓦等)が第三者に損害を生じさせた場合

ア 水害により被害が生じた場合の工作物責任について、民法717条の特則とされる、河川の設置又は管理の瑕疵に関する国家賠償責任(国家賠償法2条1項)の解釈適用について、「過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無およびその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、河川管理の特質に由来する財政的、技術的、社会的諸制約の下での同種・同規模の河川の管理の一般水準および社会通念に照らして是認しうる安全性を備えているかどうかを基準として判断すべき」とされます(最高裁昭和59年1月26日判決)。

イ 台風の強風による被害の場合、台風の接近自体は予見可能ですので、強風により屋根の瓦等が飛ばされて第三者への被害発生を回避できたか否かが、工作物の管理上の安全性の判断において主として問題となると思われますが、一律に判断できるものではなく、各事案ごとの事情を踏まえて検討する必要があります。

 上記河川に関する国家賠償請求の判例を参考にして検討しますと、①当該地域付近で、過去に屋根の瓦等の工作物が強風により飛ばされたことがあったか、②当該被害場所付近の家屋において、瓦等の工作物が飛ばされたケースがどの程度存するか、③事前にシートをかぶせる等の対応が可能であったか(ただし、シートが強風で飛ばされ、電線に接触して火災が発生する危険等もあるため、一概にはいえません)、④その他、例年上陸しないような非常に強い台風の場合、一般的な民家近隣の同種建物においてどの程度の対策が可能であったか、等の事情を考慮して判断すべきと思われます(私見)。ただし、瑕疵の有無については客観的に判断すべきであり、③、④のような行為義務の違反は考慮要素とすべきでないとする裁判例もあるようです。

ウ もっとも、自然災害事案において単純に瑕疵の有無という基準のみで、100%か0%か、の判断を行なうのは妥当でなく、自然災害による寄与度を算定して、割合的な賠償とした裁判例もあるようです。

 

(2)地震により建物の倒壊が生じた場合

 地震により建物の倒壊が生じた場合、どの程度の耐震性を有していれば通常有すべき安全性を有していると言えるかについて、昭和の裁判例では、震度5まで耐震性を有していれば足りるという趣旨の裁判例もありました。

 ただ、近年では当然に震度5の耐震性で足りるといえるか、いろいろ議論のあるところです。

 阪神淡路大震災による建物倒壊により周囲に死傷者が生じた事案において(震度6以上の地域の事案のようです)、建物が本来有すべき耐震性を欠いていたとして、建物所有者に土地の工作物責任が認められた例があります(神戸地判H11.9.20)。

 また、東日本大震災により生じたマンションの水道管断裂により生じた損害賠償請求において、首都圏において震度6強の地震発生は予見可能であるとともに、予見可能な範囲内の震度による断裂については、通常有すべき安全を欠く瑕疵に当たるとして、所有者に損害賠償責任を認めた例があります(東京地判H25.2.12。ただし、事故発生現場の実際の震度は震度5強の場所とされます)。

*本年9月6日に北海道で発生した地震の被災者の方には、心よりお見舞い申し上げます。まずは、ライフラインの復旧等、通常の日常生活の回復を願っております旨申し添えます。

 

他にも検討する事項がいくつかありますが、コラムが長くなりすぎてしまうため、いったん区切ることとします。

小川 智史 弁護士

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