弁護士コラム

自然災害により生じた損害の賠償請求等の可否について(2)

[投稿日] 2018年09月06日 [最終更新日] 2018年09月06日
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小川 智史 弁護士 神田須田町法律事務所

依頼者のために最善を尽くしていきます

前回に引き続き、自然災害により生じた損害の賠償請求等について検討を行います。

 

3.流入した土砂等による損害および撤去について

 本年7月に発生した西日本を中心とする集中豪雨では、土砂崩れにより隣地に土砂が流入し、撤去が必要となる事例が多数発生しました。災害に遭われた皆様には、謹んでお見舞い申し上げます。以下、法的検討を行ないます。

(1)まず、土砂の撤去に関しては、土地の所有権の本質的内容として妨害排除請求権が存するため、隣地等から土砂が流入した土地の所有者は、元々土砂が存在した隣地等土地の所有者に対して撤去を求めることが原則として可能です。

 また、豪雨により土地の地盤が脆弱化し、隣地等の土地崩壊の危険が高まっている場合、土地所有権の本質的内容として妨害予防請求権が存するため、崩壊の危険が高まっている隣地等の所有者に対し、崩壊防止の対策を求めることが原則として可能です。

 

(2)もっとも、土砂の撤去や予防工事を実施する場合、相応の費用を要するため、すぐに使用者に撤去や予防工事を求めるのは容易でない場合も少なくなく、話し合いが進まないケースが少なくないようです。

 また、崩壊の原因が不可抗力による場合には、被害者自身も侵害を認容すべき義務を負うとして、妨害排除請求権等の物権的請求権は発生しないとする戦前の大審院(現在の最高裁に相当)の判例もあるようです。

 ただ、かなり古い判例であり、現代においてそのまま妥当するか疑義がありますし、上記判例を前提としても「不可抗力」の認定は慎重になされるべきと思われます。前回コラムで言及しました、地震による倒壊の場合の工作物の瑕疵の有無の認定基準に関しても、社会状況の変化や災害の予見可能性を踏まえて裁判所が従来の基準にとらわれない判断を行なっているとも解され、現実に判決まで至った場合は、事案に則した判断がなされる可能性があります。

 なお、災害救助法の適用対象となる場合、その他特例法等が適用されるには、行政により土砂等を撤去していただける場合もありますが、詳細に関しては割愛します。

 

(3)上記の他、撤去費用以外の損害賠償請求について、土地そのものの崩壊については「工作物」に当たらないと解され、民法717条は適用されないと解されます。

 もっとも、土地崩壊の危険が高まっており、崩壊の危険が相当程度予想され、かつ土地所有者が対応可能であるにもかかわらず崩壊予防工事等を行なわなかった場合には、一般原則により民法709条に基づく損害賠償が可能となる余地もないとは言えません。

 その他、国や地方公共団体が管理する「道路、河川その他公の営造物」の「設置又は管理に瑕疵があった」場合には、国家賠償法に基づく賠償請求を行なう余地があります(国家賠償法2条1項)。

 

4.その他のケースについて

 上記以外にも、自然災害により生命・身体・財産に被害が生じた場合に様々な法的問題が生じる可能性があり、個々の類型や事案ごとに判断する必要があります。①土地の工作物責任の成否の他、②相手方と契約関係がある場合には契約内容に基づく履行請求や、管理不十分等の債務不履行と認められる場合には債務不履行責任の追及、③第三者との関係では、相手方の管理不十分等により、相手方の過失が認められる場合は不法行為責任を追及できる場合,④その他、特別法により請求権が発生する場合、もあります。

 ④特別法の場合の例として、いわゆる福島第一原発事故により生じた損害の賠償請求に関しては、民法の不法行為責任の特則として、原子力損害の賠償に関する法律3条1項本文により、原子力事業者の無過失責任が定められています。

 

5.紛争の解決方法について

(1)台風、集中豪雨、地震等の自然災害により損害が発生した場合、土地の工作物責任に基づく賠償請求や、所有権に基づく妨害排除請求を実施する場合の費用負担等が問題となり、当事者間で話し合いがまとまらない場合も少なくありません。

 上記1~4では、主として土地の工作物責任の成否等の法的責任の存否を中心に検討を行いましたが、「責任があるかないか」「100%か、0%か」という入口の問題をメインにし、当事者の一方のみが費用を負担するかどうかが問題となると、話し合いがまとまらず、紛争が長期化する可能性が少なくありません。

 そもそも、一刀両断するような法解釈適用が、そもそも私人間の権利関係の調整という民法自体の趣旨に合致するかという問題もありますが、従来の法解釈適用を前提としても、当事者間で一定の譲歩行なって費用の分担を図るのが妥当であるように思われます(私見)。具体的事案においては、それぞれの当事者の方が納得できるか否かにもよりますが。。。

 

(2)もし、当事者間で話し合いがまとまらない場合、法的にはすぐに訴訟に移行することも可能ですが、台風による瓦の吹き飛びや、水害による土砂の崩壊については、隣地所有者との近隣関係が問題となるケースが多く、訴訟で全面的に法的決着を図ろうとすると、将来に渡り禍根を残す結果となる可能性が少なくありません。

 当事者間で話し合いが進まない場合、いきなり訴訟に移行する前に、第三者の専門家を交えた話し合い、例えば弁護士会が実施するADR(裁判外紛争解決手続)や裁判所の民亊調停を利用する方法等が考えられますので、解決方法については慎重にご検討頂く必要があるでしょう。

小川 智史 弁護士

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