弁護士コラム

自然災害により生じた損害の賠償請求等の可否について(4)

[投稿日] 2018年09月15日 [最終更新日] 2018年09月15日
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小川 智史 弁護士 神田須田町法律事務所

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前回に引き続き、今度は地震により被害が生じた場合の工作物責任の成否について、関連判例を再検討及び整理します

 

1.まず、昭和の時代は震度5までの耐震性を有していれば瑕疵なしという趣旨の裁判例もありました(仙台地判昭和56年5月8日・1107-30)。

 ただ、近年、下記の通り震度6以上での倒壊等でも瑕疵有とすると解しうる裁判例が出されており、具体的内容は以下の通りとなります。

 

2.神戸地裁平成11年9月20日判決(判例時報1716-105)

(1) 阪神・淡路大震災による建物の倒壊により死者が発生し、被害者の相続人が建物所有者らに工作物責任に基づき賠償請求を行なった事案において、「補強コンクリートブロック造の設計及び施工は最新の注意を払って行わなければならないところ、本件建物は設計上も壁厚や壁量が不十分であり、それを補うために軽量鉄骨で補強するとの考え方で設計されたとしてもその妥当性に疑問があり、さらに、実際の施工においても、コンクリートブロック壁に配布された鉄骨の量が十分でない上、その鉄骨が柱や梁の鉄骨に溶接等されていないため壁と柱とが十分緊結されていない等の補強コンクリートブロック造構造の肝要な点に軽微とは言えない不備があり、結局、本件建物は、建築当時を基準に考えても、建物が通常有すべき安全性を有していなかった」とし、建物の設置の瑕疵を肯定しています。

(2) また、震度7の地域に存在した建物ようですが(なお、9月5日付コラムでは震度6の地域と記載しましたが、訂正します)、「本件建物は、結局は倒壊する運命にあったとしても、仮に建築当時の基準により通常有すべき安全性を備えていたとすれば、壁の倒れる順序・方向、建物倒壊までの時間等の点で本件の実際の倒壊状況と同様であったとまで推認することはできず、実際の施工の不備の点を考慮すると、むしろ大いに異なるものとなっていたと考えるのが自然」とした上で、「本件地震による不可抗力による者とは言えず、本件建物自体の設置の瑕疵と想定外の揺れの本件地震とが、競合してその原因となっている」と認定しています。

(3) もっとも、自身への損害発生への寄与度を考慮し、所有者の責任を損害額の5割としています。

 

3.東京地裁平成25年2月12日判決(ウェストロー・ジャパン)

(1) 東日本大震災で、マンション階上住戸内における電気温水器の配管断裂に伴う漏水により、コンピュータの破損等が生じた会社が、マンションの管理会社及び区分所有者を提訴した事案において、同判決は、「当時、首都圏で震度6強の地震が発生しうることは想定されていた」とした上で、「当時、想定されていた範囲内の震度の地震により断裂し、これにより本件事故が発生したということができ、本件配管については、通常備えるべき安全性を欠いた保存上の瑕疵があったと認められる」としています。ただし、建物所在地である東京都千代田区の実際の震度は震度5強とされます。

(2) その上で、①マンションの管理会社については「本件配管について外観から老朽化や断裂による水漏れが危惧されるような状況であったことが認められない」等の点を理由に占有者に当たらないとしたものの、②マンション区分所有者については工作物責任を負うとともに、自身との競合による寄与度に応じた減額の主張を排斥し、100%賠償責任を肯定しています。ただ、実際の賠償額は42万4000円及び地震発生後の遅延損害金とされています。

 

4.地震により生じた損害に関する紛争の対応策につきましても、前回のコラム(3)台風に関する判例の記述内容と同様の検討が必要と思われますので、紛争中または紛争が生じる可能性がある当事者の方におかれましては、ご参考として頂けましたら幸いです。

小川 智史 弁護士

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