弁護士コラム

不動産のサブリース契約における注意点

[投稿日] 2019年05月27日 [最終更新日] 2019年05月27日
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小川 智史 弁護士 神田須田町法律事務所

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今回は、不動産をサブリース契約形式で賃貸する場合における注意点について検討を行いたいと思います。

 

1.はじめに

 そもそも、「サブリース契約」についてご説明しますと、(1)通常の賃貸借契約では賃貸人が現実の利用者に直接賃貸し、不動産業者は仲介や管理委託を行うにとどまるのに対し、(2)「サブリース契約」では、主に不動産業者が直接の賃借人となった上で、更に現実の利用者に転貸する方式で「賃貸人→サブリース転貸人→転借人」と二重の賃貸借関係が発生する形式となります。

 通常の賃貸借契約の場合は賃貸人自身が空室リスクを負うとともに、不動産業者に仲介・管理委託した場合は別途手数料が発生しますが、サブリース契約のメリットとしては、①現実の転借人がいない場合でも、原則としてサブリース契約に基づく賃料請求が可能である、②直接にはサブリースを行う転貸人との契約であり、転借人との契約は別途転貸人が行う、といった点が挙げられます。

 しかし、デメリットとして、③「空室保証」「30年賃料保証」などとうたっていても、必ず契約時の賃料が保証されるとは限らない、④サブリース契約の解約・更新拒絶は容易でない、という点が挙げられます。

 

2.サブリース契約と借地借家法の関係

 上記1で挙げた③④のデメリットが発生する理由は、以下の通り、借地借家法による制約を受けることによります。

(1)賃料増減請求権に関する最高裁判例

 借地借家法上、従前の賃料額が経済事情の変動等により不相当になった場合は賃料の増減変更請求権が認められていますが(11条1項、32条1項)、いわゆるサブリース契約においても借地借家法の規定が適用されるか否かについて、最高裁平成15年10月21日判決では適用を肯定しています。

 そもそも、借地借家法は、前身の旧借地法自体の当初は、賃借人が安易に退去・明渡を求められることのないよう、主として弱い立場の賃借人を保護するべき制定されたという経緯があります。そのため、「賃貸人:個人、サブリース賃借人:業者」という構図が大半であるサブリース契約への適用に対する異論もありましたが、上記最高裁判決は、建物サブリース契約も賃貸借契約であることに変わりはないとして、借地借家法の適用を肯定しました。

 もっとも、上記最高裁からの差戻し後の東京高裁平成16年12月22日判決では、契約時の賃料保証や予想収支等を理由に、実際の賃料減額については一部に限定しています。仮に賃貸人がサブリース賃借人から減額請求を受けた場合でも、当然に応じる必要があるわけではありませんが、契約時の「賃料保証」は絶対とは言えない点にご留意頂く必要があります。

 

(2)サブリース更新拒絶・解約に関する裁判例等

ア 上記の通りサブリース契約にも借地借家法が適用されることにより、普通借地・借家契約の場合、更新拒絶や解約を行うためには、自己使用の必要性等の正当事由が必要とされます(借地につき6条、借家につき26~28条)。また、解約・更新拒絶につき借地借家法に違反する特約で賃借人に不利なものは無効とされており(借地につき6条、借家につき30条)、契約書上中途解約可能と定められていても、借地借家法により解約・更新拒絶は制限されます(もっとも、契約時に、業者たるサブリース賃借人が個人賃貸人に対し「中途解約可能」と説明して契約書を作成した場合、個人的には正当事由の要素の一つとして考慮すべきではないかと思いますが)。

イ サブリース解約・更新拒絶に関する裁判例として、①更新拒絶に正当事由が必要であるとした上で、立退料の提示等を考慮しても正当事由を認めなかった例として東京地裁平成24年1月20日判決が、②賃貸人に建物売却の必要性があり、一定の立退料の支払いを条件に正当事由を認めた例として東京地裁平成27年8月5日判決があります。

ウ なお、建物賃貸借契約に関しては、期間満了後の更新がないことを前提とする定期借家契約(借地借家法38条)を行う余地はありますが、賃貸人からの中途解約ができるわけではないとともに、サブリース業者側が難色を示す可能性があります。

 

3.不動産の所有権移転と賃貸人の地位の関係

(1) 対象不動産の売却等により所有権が第三者に移転した場合、賃借人が借地借家法の対抗要件を備えている場合(建物の場合は引渡し)当然に賃貸人たる地位は新所有者に移転するとされます(現行法では判例上の解釈ですが、2020年4月1日以降は、改正民法605条の2第1項により明記)。この場合、原則として「新所有者→サブリース転貸人→転借人」との間で賃貸借関係が係属することとなります。

(2) もっとも、賃貸人の地位を旧所有者に留保する特約について、①現行法上は原則として効力を認められませんが(最高裁平成11年3月25日判決)、②2020年4月1日以降は、新所有者と旧所有者との間で賃貸借契約を締結すれば、原則として効力が認められます(改正民法605条の2第2項)。

(3) サブリース賃貸を行なっている不動産につき売却等の処分を行う場合、上記の点も影響する可能性がありますので、ご留意頂く必要があります。

 

4.以上踏まえ、不動産の賃貸を行う場合、直接賃貸借契約(+業者への仲介・管理等委託)とサブリース契約のいずれが望ましいか、メリットとデメリットを比較の上、慎重に検討頂く必要があります。

 

小川 智史 弁護士

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