弁護士コラム

復職後の減給と保険料控除

[投稿日] 2018年02月28日 [最終更新日] 2018年11月09日

適応障害で6か月間休職し、その期間中は会社が雇用保険、健康保険、厚生年金の保険料を立て替えていたが、復職したら、もとの営業職から事務職に異動させられ、給与も下げられて手取りが23万円となったのに、会社より、保険料の立て替え分20万円を全額給与から差し引くと言われた場合、法的に有効なのでしょうか。

 第1に、人事権の行使としての異動は、権利の濫用にわたる場合でない限り、会社の裁量に委ねられています。復職後の体調がまだ思わしくなく、営業職としての業務を遂行するまでに回復していないのであれば、異動には業務上の必要性があるということになります。これに対し、異動に伴い給与減額がなされるのであれば、その金額によっては不利益の程度が著しいので、異動自体が権利濫用として無効となることがあります。異動が無効となるのであれば、それに基づく減給も無効となります。
仮に異動が有効であるとしても、異動と給与減額が連動していないのであれば、労働者の同意がない限り当然に減給をすることは許されません。

 第2に、雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料については、事業主が全額納付する義務を負い、そのうち半額を被保険者である労働者が負担することが、法律で定められています。休職中でも保険関係は継続していますので、労働者は、賃金が支払われていなくても、自己負担分の保険料を事業主に支払う義務を負います。
一方、使用者は賃金を全額支払うのが原則です。源泉徴収や社会保険料控除など法律や労使協定によって認められたものを除き、賃金の全額払いが刑罰をもって強制されています。
ただし、労働者が自由な意思に基づいて使用者との合意をすることにより相殺をすることは認められています。
控除額20万円は手取り給与額に照らして多額にわたり労働者の生活の安定を脅かすものですので、全額を1回で相殺することに同意する必要はありません。生活に支障のない範囲の金額を毎月相殺するとの合意をするよう、会社と協議しましょう。

会社が協議に応じず、労働者が同意していないのに一方的に保険料立替分を控除するのは違法となります。その場合は労働基準監督署に指導を求めるとよいです。

つまこい法律事務所 〒101-0021 東京都千代田区外神田6-16-9 ICOPビル7階 [現在営業中] 平日9:00-18:30
Resized avatar avatar lawyerprofile 25501 1480468117

佐久間 大輔 弁護士

取扱分野
労働 不動産・建築 企業法務

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

Go To Top Html