弁護士コラム

Q「間接損害だから請求は難しい」と言われたけど,そもそも「間接損害」ってどういうこと?

[投稿日] 2017年11月22日 [最終更新日] 2017年11月22日

Q 事故によって生じたさまざまな損害について,加害者に賠償してもらいたいと思っています。例えば,私個人の損害だけでなく,私が仕事ができないことによって会社にも経済的な損害が発生しています。しかし,保険会社や弁護士に具体的な損害について相談したら,「これは間接損害だから加害者に請求するのは難しいですね」と言われました。

そもそも「間接損害」とは何ですか?

 

A 交通事故の直接の被害者以外の第三者が,直接の被害者の受傷に伴い被った損害について賠償請求をすることができるか,というのが,『間接損害(間接被害者)』の問題です。

 

典型的には,会社の代表者が直接の被害者だが,その被害者のケガによる休業などによって会社の売上げが減少した場合などの企業損害のケースと,被害者の近親者が損害を追ったというケースについての裁判例が多く存在しています。ここでは企業損害のケースを取り上げて説明します。

 

1 個人企業に近い場合の代表者が被害者である場合

まず,有名なリーディングケースともいわれるのが最高裁昭和43年11月15日判決(民集22巻12号2614頁)です。

事例は以下のようなものです。

<事例>

個人として薬店を経営していたAが,納税上の問題から有限会社Xを設立した。社員はAとその妻2名だけであり,妻は名目上の社員にすぎなかった。

Aは,Yの運転する二輪車と衝突する事故により両目を負傷し,X社の営業能力が低下したため,X社は逸失利益の賠償を求めてYに対する訴訟を提起した。

これに対して,一審は,X社の請求は棄却し,二審はX社の請求も認容したため,Yが最高裁に上告しました。

さて,最高裁はどう判断したのでしょうか? 

<最高裁の判示>

X会社は法人とは名ばかりの,俗にいう個人会社であり,その実権は従前同様A個人に集中して,同人にはX会社の機関としての代替性がなく,経済的にAとX社とは一体をなす関係にあるものと認められるのであって,かかる原審認定の事実関係のもとにおいては,原審が,YのAに対する加害行為と同人の受傷によるX社の利益の逸失との間に相当因果関係の存することを認め,形式上間接の被害者たるX社の本訴請求を認容しうべきとした判断は,正当である。

やや長いのですが,ポイントとしては,

① 代表者への実権の集中

② 代表者の非代替性

③ 代表者と会社との経済的一体性

の3点にまとめられるかと思います。

企業損害の賠償が認められた裁判例の多くは,会社の代表者が受傷した事案となっています。

 

 

2 代表者以外の従業員がケガをした場合はどうなのか?

たしかに,従業員の中にも,会社の中核的な業務を担っている人や,会社にとって代替性がないといえる人もいることと思います。

しかし,あくまで裁判例の傾向としては,従業員が受傷した場合に企業損害の賠償を認めることには極めて消極的となっています。

具体的には,以下のような裁判例があります。

ベテラン従業員が負傷した会社が,その従業員の休業期間中の営業損害を請求したが,否定された事例(東京高判昭和54年4月17日交民12巻2号344頁)

中国料理店の,台湾出身の料理人が死亡し閉店となった事案で,会社の損害について否定された事例(名古屋地判平成16年7月9日交民37巻来4号917頁)

貴金属の通信販売を行う会社の代表者の妻(専門知識や語学力が会社の事業に重要であったと主張)が事故に遭った事例で,会社の損害を否定された事例(東京地判平成23年3月29日自保ジャーナル1850号81頁)

活魚運搬業者であるX社に採用されていたAが事故に遭い,休職中に別の活魚卸売業者に委託した実費を請求した事例で,AはX社と経済的一体関係にある者とはいえないとして請求を否定した事例(東京高判平成24年12月20日自保ジャーナル1892号46頁)

なお,最後の東京高判平成24年12月20日は,経済的一体性の判断以前に,あくまで「雇用契約上の義務の履行を受けられなかったという債権侵害による損害である」と理解して,その場合は「故意又はこれに準じる場合」でない限り請求は認められないと判断しており,これは従業員の負傷以外の事例(例えば事故により会社の設備が故障するなどして事業の遂行に支障が生じた場合など)にも参考になるものと思われます。

 

 

3 では,代表者以外は全く認められないか?

では、代表者以外は一切認められないかというと,そこはあくまで個々の事案の特殊な事情を総合して「相当因果関係があるか」という判断ということになります。例えば,

あるロックバンドのメンバーの1人が受傷して公演を中止したという事例で,ロックバンドのコンサート興業の企画,制作を主たる業務としている会社と,受傷したメンバーとの経済的一体性は認めがたいとして営業損害については否定されたが,事故から一定期間の会場費等の出費について事故と相当因果関係があるとして請求を認めた事例(東京地裁平成4年9月11日交民25巻5号1123頁)

のような裁判例があります。

ですので,きちんと個々の事案の事情を証拠により立証することができれば,一定の範囲で請求が認められる可能性もあるといえます。

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

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