弁護士コラム

「自賠責に被害者から請求をしたほうが良い場合がある」って本当ですか?

[投稿日] 2017年12月11日 [最終更新日] 2017年12月14日

Q 交通事故(人身事故)の被害を受けました。相手方から,「こちらで対応するより,ご自身で自賠責のほうへ被害者請求されたほうが良いかもしれませんよ。」と言われました。それって加害者側が対応するのがめんどくさいから(被害者に自分でやる手間や労力をを負わせようと)言ってるだけではないんですか?被害者が自賠責に直接請求するメリットってあるんですか?

 


A 自賠責保険の特徴として,訴訟外でなされる被害者請求においては,訴訟におけるのと比較して被害者にとって有利に制度設計がされています。

 それは,①因果関係の認定,②過失相殺の割合の場面です。

 

1 因果関係の認定について

 因果関係とは,ざっくりといえば,その人身損害(傷病や後遺障害,または死亡結果)が,その事故によって生じたといえるかどうか,というくらいのイメージで理解してください。

 例えばその事故の前から持病や障害を持っていたとか,別の事故が他にも関係しているとかの場合に,「それってその事故だけのせいじゃないよね」という点が訴訟において問題になることがあります。

 民事訴訟の原則である「立証責任」の考え方からすると,損害賠償を請求する側である被害者(原告)側が,因果関係があることを立証しなければならなくなり,因果関係の判断がむずかしい場合には,請求が棄却されたり,請求が大幅に(5割を超えて)減額されることもあります(民法722条2項類推適用)。

 しかし,訴訟外の自賠責では,それよりも被害者に有利に支払いがなされることが比較的多いといえます。
 つまり,明らかに因果関係がないと認定された場合は別として,積算された損害額又は保険金額のいずれか小さい方から5割の限度で支払いがされる運用になっています。

 これは,自賠法の目的である「被害者の保護」(自賠法1条)から導かれるものです。

 そこでまずは,因果関係の判断が難しい場合には,被害者請求を選択するのがベターかもしれない,くらいに理解しておいてください。

 


2 過失相殺の割合について

 訴訟においては,その事故の発生について被害者にも過失が認められる場合には,請求した損害額から,その割合分が減額されます(民法722条2項,自賠法4条)。これを「過失相殺」とよびます。
 被害者請求の場合でも一応過失相殺というものはありますが,その減額割合が過失割合そのままではなく,被害者に有利に傾斜がつく運用になっています。

 例えば後遺障害又は死亡については,具体的には以下のようになっています。

<後遺障害又は死亡に係るもの>
7割未満       減額なし
7割以上8割未満   2割減額
8割以上9割未満   3割減額
9割以上10割未満  5割減額

 つまり,加害者に全く過失が認められない場合は別として,大幅に被害者の過失割合のほうが大きくなりそうな場合でも,5割程度までしか減額されないから,被害者請求を選択するほうがベター,くらいに理解しておいてください。

 


3 「そういう運用」ってどういうこと?

 上のどちらも「そういう運用になっている」と書きましたが,もしかすると「てことは明確な根拠規定はないの?」と疑問に思われたかもしれません。
 明文の根拠としては「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払い基準」(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)という,とてもなが~い名前の告示に書かれています。

 

4 まとめ

 冒頭の「問い」のような質問はしばしば受けることがあります。今回のような「被害者請求を選択したようが有利」な場合にあてはまる可能性はないか,冷静に見極めていただければと思います。

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新田 真之介 弁護士

取扱分野
交通事故

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