弁護士コラム

赤字の事業所得者については休業損害は認められますか?

[投稿日] 2018年03月17日 [最終更新日] 2018年03月17日

事故前から赤字だった事業所得者については休業損害は認められるのでしょうか?

 

1 基本的な考え方

 

確かに事業所得が赤字の場合は基礎収入額がマイナスになってしまい、休業損害を算定することができないようにも思えます。

 

しかし事故以前よりも赤字が増大している場合には、事故によって受けた障害による休業と赤字の増大との間に因果関係が認められるといえる場合もあります。

 

わかりやすく言えば、赤字と言うのは借金が増えること(または貯金が切り崩される事)と同じように考えられますから事故がなければ借金をしなくてよかった(または貯金が残ったままだったはずだ)と言うふうに考えられるからです。

 

ただし、事故後に赤字が増大しているからといって、ただちにその全てが事故のせいだとは限りません。例えば、すでに事故前から赤字傾向にあったのに、たまたま事故があってそのまま事故後の時期も赤字が拡大しているというような場合には、拡大した存在の全てを事故のせいにする事はできないからです。

 

そこで、もともと事業の経済効率収益性が悪いような場合や、社会経済状況の変動や同業者との競合など、その事業に経営上の問題がある場合には、売上の減少と事故との関係が薄いと認定されることになります。

 

2 裁判例

 

赤字の事業所得者に関する裁判例には、例えば次のようなものがあります。

 

⑴ 事故前の確定申告所得額と事故後の休業期間の確定申告所得額とを比較して、その所得減少が事故による就労制限と相当因果関係が認められる範囲で割合的に認定したもの(横浜地裁平成26年12月26日判決・自保ジャーナル1943号124頁)

 

⑵ 所得減少額に、休業期間中の固定経費のうちの相当範囲を加算したもの(大阪地裁平成24年1月27日判決)

 

⑶ 確定申告書の内容に信用性が認められないなど、収入の立証が十分でなく、賃金センサスの一部を割合的に認定して基礎収入を算定したもの(神戸地方裁判所平成26年12月19日判決)

 

3 立証の方法

 

 現実問題として、訴訟の中で事業所得者の収入を立証していくことは簡単ではありません。もしも弁護士に相談する際には、事故前後の帳簿類や経費、確定申告関係資料など十分に揃えた上で相談に行くことをおすすめします。

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新田 真之介 弁護士

取扱分野
交通事故

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