弁護士コラム

交通事故で建物が壊れた場合の損害はどのように算定されますか?

[投稿日] 2018年05月24日 [最終更新日] 2018年06月04日


弁護士の新田真之介です。

今回は,交通事故の損害賠償の本をみてもあまり多く記載がない「建物の損害」についてご説明したいと思います。


自動車の修理費の場合は,修理費と事故当時の時価額のうち,いずれか安い方が損害となり,修理費よりも時価額のほうが安い場合を「経済的全損」ということはすでに別のコラムでご説明しました。

コラム「車両損害の[経済的全損]って何ですか?」

https://legalus.jp/tokyo/23ku/chuoku/lo_11942/lawyer_49313/column/la-3549

では,老朽化した建物の場合にもそのような理論があてはまるかというと,そう簡単にはいきません。

自動車の場合は,高い修理費をかけるよりも中古車を買うほうが合理的だ(現実的には同種の車両をみつけるのが難しい場合が多いのですが)という一応の理屈からそのようにいいやすいのですが,建物の場合は,「当時の時価と同等の建物を他で買って引越せばいいじゃないか」とはなかなか言えないのです(非代替性)。

そこで,建物の残存価値の限度でしか賠償が認められない,と一般論としていうわけにはいきません。

ただし,修理のついでにリフォームもして利得を得るような場合や,修理も可能だけれどせっかくだから建替えをして新築になった,などの場合には,それは事故と相当因果関係があるとはいえませんから,その分を減額して評価しなければならないことになります。

また,上記の考え方からすると,什器やプレハブ,ビニールハウスなど,容易に移設がしやすいものについては,車両と同じような時価額の考え方があてはまるのではないかと思います。


<修理費用からの減額を否定した事例>

■東京地裁平成7年12月19日
トレーラーがレストラン兼住宅を損壊した事案において,「たとえ営業用財産であっても,修理により耐用年数が延長され,あるいは,価値の増加により被害者が不当利得を挙げたような場合であれば格別,相当な範囲の修理を施しただけの場合には,現状回復そのものがなされたにすぎないというべきであるから,これについて,改めて経過年数を考慮し,減価償却をなすのは相当ではない。」と285万円の修理費を認めた。

■神戸地裁平成13年6月22日判決
大型貨物自動車が家屋に衝突した事例において,「本件査定書に基づき修理工事を行った場合に不当利得と黙すべき程度の耐用年数の延長が生じること及びその程度については,これを認めるに足りる証拠はな」いとした。


<修理費用からの減額を認めた事例>

■名古屋地裁平成9年9月26日判決
加害者がブロック塀に衝突損壊し,植木,プレハブを移動しなければ塀の補修が困難なことから損害の相当性を認めたが,プレハブは老朽化していることで建築工事費用の2割を認めた。

■宇都宮地裁真岡支部 平成24年10月31日判決
経過年数約5年の農業用温室の損害額は,「中古車の時価を算定する際に用いられる手法に準じて,新品の取得価格を基準として,取得時からの耐用年数を法定耐用年数と比較して,前者の方が長い場合は取得価格の1割に相当する価格を時価とし,後者の方が長い場合は税法上の減価償却によって残存価格を時価とする手法」により,減価償却後の金額から3分の1程度に減額して225万円の損害を認めた。


■名古屋地裁昭和63年3月16日判決・自動車保険ジャーナル757号
築後26年の店舗建物の修理見積額235万6000円につき,修理を施せば耐用年数が10年延長されることから,この10年分は不当利得になるとされ,右修理費につき10年分19%が不当利得することになることから,202万9860円が賠償額とされた事例。

 

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新田 真之介 弁護士

取扱分野
交通事故

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

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