弁護士コラム

交通事故で通院した患者のカルテ・画像等の開示請求を受けた医療機関(病院・整骨院等)の方へ

[投稿日] 2018年07月26日 [最終更新日] 2018年07月26日

先日,以下のような報道がなされました。

『カルテ、コピー1枚で5千円も 厚労省「不適切」と注意』
(朝日新聞デジタル2018年7月24日05時01分)

(引用元URL) https://digital.asahi.com/articles/ASL7N6RPRL7NULBJ013.html?rm=533


「診療録(カルテ)のコピーを患者らが請求した際に求められる料金が、病院間で大きく違うことが厚生労働省の調査でわかった。対象となった全国の主要病院の2割近くは、白黒コピー1枚でも5千円以上かかる設定だった。厚労省は20日、自治体に通知を出し、実際の費用を積み上げて料金を決めるよう医療機関に周知するよう求めた

カルテや検査結果などの診療記録は、治療をめぐるトラブルがある場合や、自身の病状や治療を詳しく知りたい場合に請求される。2003年に厚労省が指針を作成。個人情報保護法は、本人が希望すれば病院や診療所は原則開示する義務があるとし、実費を勘案した合理的な範囲で手数料をとれると定めている。」

とあります。

なお,厚生労働省の通知原文は,厚生労働省ウェブサイトから確認可能です。

『診療情報の提供等に関する指針について(周知)』
医政医発 0720 第2号 平成 30 年7月 20 日


(引用元URL)https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T180724G0010.pdf

「今般、診療記録の開示に要する費用についての疑義が多数寄せられているところ、これについては下記のとおり解すべきものであるので、貴職におかれては、貴管下保健所設置市、特別区、医療機関及び関係団体等への周知をお願いする。」
「診療記録の開示に当たっては次の点に留意されたい。
診療記録の開示に要する費用は、実際の費用から積算される必要があるが、個々の申し立てに応じその費用が変わり得るところ、開示に要する費用を一律に定めることは不適切となる場合があること
医師の立ち会いを必須とすることは、患者等が診療記録の開示を受ける機会を不当に制限するおそれがあるため、不適切であること。」

 

今回の調査では特定機能病院や大学病院など,ある程度規模の大きな病院で,診療情報開示の体制をきちんと整えている場合が多いと考えられますが,そうではない中小規模の病院や整骨院などでは,状況はさらに(悪い意味で)差があります。

多くの病院は実費相当額程度で適切に回答いただいているのですが,中には基本料金として1万円を超えるような設定や,すでにあるもののコピーをするだけにもかかわらず新たに書類作成するのと同等の高額請求を行う病院もあり,現在も医療機関側と折衝を行っている事案が複数あります。

 

又,料金の問題だけでなく,法令上要求された以上の必要書類の要求をする病院(例えば裁判所からの照会にもかかわらず本人の同意書と身分証のコピーを要求する病院)もあり,事実上の障壁となっています。

医療機関の診療情報担当の皆様には,診療情報の開示という制度の意義・趣旨をよく理解戴き,ご協力をお願いいたします。

 


【交通事故事案に関して,医療機関(病院や整骨院等)に診療情報(カルテや画像等)の開示請求がなされる場合の整理】

1患者本人からの請求(個人情報保護法28条,厚労省ガイドライン,日本医師会も「診療情報の提供に関する指針」を策定)

法令上の手段を用いるわけではなく,各病院の窓口で本人やその代理人が病院所定の書式に合わせて開示の申請を行うものです。
本人以外が行う場合は同意書を要求されることがありますが,これは個人情報保護法23条などに照らせば妥当なものといえます。

 

2 法令に基づく開示手続

本人以外の者が法令に基づく手続きによって請求を行う場合があります。
この場合,個人情報保護法23条は,本人の同意なく第三者に個人情報を提供してはならないという例外として,1号「法令に基づく場合」等を除いていますので,法律上は法令上の手続の場合には本人の同意書は必要ないはずですが,多くの医療機関側からは形式上,同意書を要求されることが多いです。ただしこれは個人情報保護法を超えた要求であることを認識してください。請求側も同意書が入手できる場合はなるべく病院の要求に応えようとしますが,あまりに病院側の様式を厳格に求める対応をされると事実上の回答拒否にもなりかねませんのでご留意いただければ幸いです。

個人情報保護法23条1号の(本人の同意が必要ないとされる)「法令上の手続き」には,例えば以下のようなものがあります。
①弁護士会照会(弁護士法23条の2),
②証拠保全(民事訴訟法234条),
③文書送付嘱託(同226条),
④文書提出命令(同221条)

 


【コピー代は実費相当額の請求をお願いいたします】

交通事故などの人身損害の適切な認定のためには,事故後はもちろん,既往症の確認も含めたカルテや画像の開示が非常に重要な客観的証拠であり,その証拠収集は当事者の費用負担で行っていることが多いので,どうぞご理解・ご協力をお願いいたします。

もちろん作業のお手間やコピーの実費は発生した分はご請求いただきたいのですが,
高額なコピー代を請求や過剰や提出書類を要求されることは,事実上の開示拒否と同視されかねません。
冒頭の朝日新聞の記事中にもあるように,

「いろんな条件をつけ、自分たちに都合の悪い開示請求をさせないための対応をしているように見えることもある」

との余計な心配を当事者(事故の被害者または加害者)から抱かれないよう,あらためてインフォームドコンセントの意義・趣旨をふまえ,適切なご対応をよろしくお願いいたします。

 

新田・天野法律事務所 〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1-12-6 KSビル6階
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新田 真之介 弁護士

取扱分野
交通事故

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