弁護士コラム

台風や暴風雨の中で起きた交通事故,過失割合にどう影響する?

[投稿日] 2018年09月06日 [最終更新日] 2018年09月07日


弁護士の新田真之介です。

此度の台風被害を受けた皆さまには心からお見舞い申し上げます。

我々交通事故を扱う弁護士にも,すでにいくつか今回の台風の暴風雨の中で発生した交通事故の相談が寄せられています。


そこで今回は,台風や暴風雨などによって道路が水で濡れており,または降雨で視界が悪いという状態で起きた交通事故において,
過失割合などの判断にどのような影響が出るかについて書きたいと思います。

まず前提として,一般的な民事交通賠償においてスタンダードな基準とされている「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズ38号)に,明確な記載はないということです。

なので,視界不良は程度によって「夜間」を類推するとか,路面がかなり濡れているのに速度を出していたことを,法定速度内でも修正要素としての「著しい過失」としてくみこむかという【個別具体的な判断】になろうと思います。

 

<考慮要素>

1 速度との関係


大雨で道路が濡れている,暴風雨で横風も強いという場合には,一般的には「通常よりも速度を落とすべき」注意義務というのも認定可能だと思われます。
低速で走行していたにもかかわらず不可抗力なほどの強い風であおられたのか,それともタイヤの摩耗や速度違反などもあったことでコントロールを失ってしまったのか,によって変わるでしょう。

 

2 視界との関係


視界についても,当時の降雨状態からどの程度の視界だったのか,それによって前方の注視がどのくらい可能だったのかという判断になりますので,時刻や道路の照明などとも関係してきます。
この要素も下記いずれの裁判例にも言及があります。

 

<裁判例>


① 東京地裁平成21年10月29日判決(自保ジャーナル1818号)

台風に伴う降雨のため路面が湿潤,視界は200メートルとなっており,最高速度は50キロに制限されていた高速道路の第三車線を走行中のトレーラーがジャックナイフ現象(トレーラの連結部分がくの字に折れるようになること)を起こし,第二車線の後方を走行していたトラックと衝突した事故で,ジャックナイフ現象を起こして第二車線にはみ出したトレーラーに80%の過失をとっています。

この裁判例は,トレーラー側の過失要素として,制限速度が低くされていたのに120キロ前後で走行していたことからジャックナイフ現象を惹起したことを挙げ,一方で,第二車線を走行していたトラックも,そういう走行をしているトレーラーが直近斜め前にいるのをわかっていながら同等以上の速度で走行させていたのだから,「一定の安全運転義務違反」,ないし「一定の前方注視義務」があったとして20%の過失相殺を認めています。

 

② 大阪地裁平成13年12月18日判決(自保ジャーナル1464号)

降雨のため最高速度が時速50キロに制限されていた高速道路の第三車線を走行していた普通乗用車が,午前5時40分頃,ハンドル操作を誤ってガードレールに接触する自損事故を起こして第二車線にまたがって停止していたところ,後方から時速100キロで走行してきた2台の車両が衝突し死亡したという事故で,被害者側に30%の過失相殺が認められています。

判決は,「当時の天候を考慮しても,(前車)が前方を注視し,かつ,制限速度で走行していれば,ハンドル操作を誤ってガードレールに衝突する自損事故を起こすことは想定しがたく,」「自損事故後,降雨等の影響で視界が必ずしも良くない高速道路の追い越し車線及び第二車線に跨がるという危険な状態で自車が停止したにもかかわらず,停止表示機材等を設置するなど道路交通法75条の11所定の危険防止措置を講じることなく,数分間,事故車両内に留まって知人に電話をかけていたものであり,」この点も過失があるとし,「被告らの著しい速度超過を考慮してもなお」3割の過失相殺が相当としました。

 

③ 横浜地裁平成11年11月29日判決(自保ジャーナル1341号)

夜間(午後6時40分頃),天候は暴風雨で視界不良の中,歩行者が市街地(交通規制30キロ)の信号機のない横断歩道を横断していたところ,歩行者からみて左から走行してきた原動機付き自転車が衝突したという事案で,歩行者側に5%の過失相殺を認めたというものです。

通常,上であげた別冊判タ38号【20】図ですと,歩行者は基本割合は0%なので(夜間+5と住宅街-5も相殺されるものと思われます)歩行者に「著しい過失」と類似の修正を行ったと評価できます。

判決は,「本件事故の際は夜間で雨が降っており,暗かったのであるから,原告には,本件横断歩道を横断するに際し,普段以上に車両の動静に注意を払うべき義務があったものと認められる」としています。

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新田 真之介 弁護士

取扱分野
交通事故

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