弁護士コラム

【最新判例解説】被害者請求と労災から自賠責への第三者行為求償の競合(最高裁平成30年9月27日判決)

[投稿日] 2018年09月27日 [最終更新日] 2018年09月27日

弁護士の新田真之介です。

本日,労災から自賠責への第三者行為求償と,被害者から自賠責への直接請求(16条請求)が競合した場合についての最高裁の判決が出ました。

労災交通事故への補償増額 自賠責保険で最高裁(産経ニュース2018.9.27 19:19)

http://www.sankei.com/affairs/news/180927/afr1809270039-n1.html

 

記事中にある,

『保険会社は従来の運用よりも、補償額を増やさなければならないとの初判断を示した。』

という報道のされ方はややミスリーディングではないかとおもいます。

そもそもここで被告となっているのは自賠責保険会社なので,一般的にイメージされる加害者側の任意保険会社とは異なります。

 

拙い図で恐縮ですが,図示して説明します。

 

被害者は自賠責保険会社(自賠社)に直接請求(16条請求や,被害者請求といいます)することができるのですが,

本件のように業務災害である交通事故の場合には,労災からも給付がある場合があり,労災保険法上,国(労災)が加害者に対して第三者行為求償をすることができるため,被害者と国が両方とも自賠社に請求するというシチュエーションが生じるわけです。

 

しかも,自賠責の保険金額は後遺障害等級によって上限が決まっているので,

その上限の決まったパイを被害者と労災がどちらが取れるのか?

について,

 

被害者請求の金額と労災の第三者行為求償の金額を比例配分(按分)するのか?

いやいや,それは国(労災)よりも被害者優先だよ。

というのが今日でた判決です。

 

せっかくなので判決文から引用しておきます。

 

なお,全文は

裁判所ホームページ

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/011/088011_hanrei.pdf

から読むことができます。


【結論】

被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害(以下「未塡補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され,被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である。

 

つまり,自賠責からの支出額の合計は結局変わりませんが,その自賠責からの払われ方が,国(労災)よりも被害者に優先的に支払われるということになります。


【理由】おおきく2つあげています。


(1) 自賠法16条1項は,同法3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときに,被害者は少なくとも自賠責保険金額の限度では確実に損害の塡補を受けられることにしてその保護を図るものであるから(同法1条参照),被害者において,その未塡補損害の額が自賠責保険金額を超えるにもかかわらず,自賠責保険金額全額について支払を受けられないという結果が生ずることは,同法16条1項の趣旨に沿わないものというべきである。

→要するに,自賠法の趣旨は,被害者救済のベースラインを定めたものだから,というかんじでしょうか。

 


(2) 労災保険法12条の4第1項は,第三者の行為によって生じた事故について労災保険給付が行われた場合には,その給付の価額の限度で,受給権者が第三者に対して有する損害賠償請求権は国に移転するものとしている。同項が設けられたのは,労災保険給付によって受給権者の損害の一部が塡補される結果となった場合に,受給権者において塡補された損害の賠償を重ねて第三者に請求することを許すべきではないし,他方,損害賠償責任を負う第三者も,塡補された損害について賠償義務を免れる理由はないことによるものと解される。労働者の負傷等に対して迅速かつ公正な保護をするため必要な保険給付を行うなどの同法の目的に照らせば,政府が行った労災保険給付の価額を国に移転した損害賠償請求権によって賄うことが,同項の主たる目的であるとは解されない。したがって,同項により国に移転した直接請求権が行使されることによって,被害者の未塡補損害についての直接請求権の行使が妨げられる結果が生ずることは,同項の趣旨にも沿わないものというべきである。

→労災保険法の趣旨も被害者(労働者)の保護なのだから,国が求償したことで被害者がもらえなくなるのはおかしいでしょ,ということですね。

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新田 真之介 弁護士

取扱分野
交通事故

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