弁護士コラム

成宮寛貴氏に関する週刊誌報道について

[投稿日] 2016年12月10日 [最終更新日] 2016年12月10日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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1. 先日、成宮寛貴氏(以下、「成宮」氏といいます)のスキャンダルに関する週刊誌報道がなされ、成宮氏が電撃引退を発表しました。

 私も、「相棒」等、成宮氏出演ドラマはよく拝見しており、「相棒」の成宮氏出演最終回と似たような事態が発生したことには大変衝撃を受けております。ただし、「無罪推定の原則」がある以上、現時点で被疑者ですらない成宮氏の薬物使用疑惑については慎重な検討を行う必要があります。

 なお、私は問題となったフライデーの現物はまだ見ておらず、テレビやヤフーのニュース等で報道されている限りで知りうる情報を前提に検討しますので、もしかしたら事実関係が異なる可能性がある点に注意する必要があります。今回は上記報道を前提に法的問題を検討することとし、また機会があるときにでもフライデーの現物はみておきたいと思います。

 

2.まず、報道の限りでは、成宮氏の友人を名乗る人物が、成宮の自宅内に招かれた際、成宮氏との会話を(秘密で?)録音するとともに、成宮氏の飲食状況に関する写真を撮影した上で、これらの資料をフライデーに提供し、掲載したとされます。

 この場合、主として、①成宮氏のプライバシー権(憲法13条)、②成宮氏の人格権の一種としての肖像権(憲法13条)、③成宮氏の社会的評価に関する人格権(憲法13条)が侵害され、民法上不法行為に基づく損害賠償責任が発生しないか(民法709条)が問題になるかと思います。

 

3.(1)①プライバシー権ないし②肖像権の侵害に関しては、政治家の場合は、一般論として24時間国民から行動を注目されてもやむを得ないとして、住居侵入罪(刑法130条前段)等の犯罪行為によるものでない限り、週刊誌への写真記事掲載に関しては、プライバシー権・肖像権侵害に当たらないと解されています。

 これに対し、芸能人の場合は、必ずしも24時間社会から行動を注目される必要はなく、自宅等のプライベート空間に関する写真記事掲載は、原則としてプライバシー権・肖像権侵害に当たると解されています。

 そのため、一般に写真週刊誌が写真記事を掲載する場合、事前に芸能人の所属事務所に記事掲載を連絡し、了承を取るとされています。本件における記事掲載に関し成宮氏の所属事務所が同意したか否かは定かではありませんが、所属事務所を通じて成宮氏が同意したのであれば、プライバシー権・肖像権侵害の違法性は生じないということになります。

 もっとも、仮に無断掲載の場合であっても、芸能人の場合は、写真週刊誌で話題になることにより知名度を上げ、「話題にならなくなったら終わり」という側面もあるので、いちいち法的手続に出ない可能性もあります。本人や所属事務所が法的手続に出なければ、事実上違法性の問題は生じない結果となります。

 

(2)次に、いわゆる名誉棄損に関する人格権侵害に関してですが、表現・言論の自由(憲法21条1項)との関係から、刑法上名誉棄損罪の成立に関する特例があり、①対象が公共の利害に関する事実であり、②目的が専ら公益を図ることがあったと認める場合には、真実であることの証明があったときには、これを罰しないとしています(刑法230条の2第1項)。

 ①の要件については、公訴提起前の人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす、とされます(同条2項)。したがって、違法薬物使用に関する事実は①の要件には該当します。また、②の要件について、週刊誌が本当に公益目的か否かは疑義がありますが、犯罪行為の掲載に関しては、②の要件も満たす可能性が高いでしょう。なお、政治家等の公務員については、①②の要件は一般的に満たしていることを前提に、不要とされています(同条3項)。

 また、③の要件については、表現・言論の自由との関係から、判例上、仮に真実であることの証明がなかった場合でも、真実と信じた相当の理由がある場合には、名誉棄損罪の除外事由に当たるとされています。

 そして、名誉棄損に関する民法の不法行為責任の成否に関しても、判例上、刑法230条の2と同様の基準で判断するとされています。

 したがって、③の要件に関し、フライデーが成宮氏の友人を名乗る人物から入手したとされる自宅写真及び録音音声につき、成宮氏のものであり、かつ薬物使用の疑いが認められると判断した合理的根拠がある場合には、名誉棄損罪も成立せず、民法の不法行為責任も発生しないということになります。

 成宮氏は、現時点(平成28年12月10日現在)では違法薬物の使用に関しては否定しており、上記③の要件を満たすか否かが、不法行為責任等の成否に関する最大のポイントとなります。ただ、成宮氏は「プライバシーの暴露により芸能人を続けたくない」点を引退理由としており、現実にフライデーに対し法的手続を行なう可能性は不透明というか、低いのではないかと思いますが。。。

 

4.その他の問題点について

(1)仮に成宮氏について、捜査機関が刑事事件として捜査を行なう場合、フライデーに掲載された録音内容が秘密録音であったならば、その証拠能力が問題となります。

 本件は私人による録音ですが、自宅という最もプライバシー性の高い場所であり、これを容認すれば一般に私人を通じたプライバシー侵害が多発し(実際は捜査機関が委託した場合であっても、その立証は困難なことが予想されます)、重大な違法性があるとして証拠能力が否定される可能性があります。

 ただし、現実に刑事裁判で違法収集証拠の証拠能力が否定されるのは例外的であり、下級審はともかく、最高裁で証拠能力が否定された例は、担当警察官が逮捕時に違法行為を行ない、その後も証拠偽造や偽証等を行なったような相当悪質な事案に限られます。

 

(2)その他、成宮氏の友人とされる人物について、仮に秘密撮影や秘密録音を行なうことが分かっていれば、成宮氏は自宅へ招き入れていなかった可能性があり、正当な理由なき立ち入りとして住居侵入罪(刑法130条前段)が成立する可能性が問題となります。

 理論上はそのような可能性もないとは言えませんが、仮に成立したとしても微罪であり、捜査機関が同罪のみで友人とされる人物を立件する可能性は低いのではないかと思います。

 

 

 

小川 智史 弁護士

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