弁護士コラム

狩野英孝氏の淫行報道について

[投稿日] 2017年01月21日 [最終更新日] 2017年01月24日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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 タレントの狩野英孝氏(以下、「狩野氏」といいます)が18歳未満の少女と宿泊し、淫行の実施により東京都青少年保護育成条例違反の可能性があるのではないか、が問題となり、本日(1月21日)狩野氏が記者会見を行ないました。そこで、当該問題について法的な検討を行なってみたいと思います。

 

1.青少年健全育成条例による未成年者との淫行規制

(1) 未成年者との性行為に関しては、刑法上、13歳未満の女子を姦淫した場合には、仮に同意があったとしても、強姦罪が成立するとされます(刑法177条後段)。

(2) もっとも、刑法上の罰則だけでなく、各都道府県において、青少年保護育成のための条例により、18歳未満の者とみだらに性行為を行なうことを禁止しています。近年まで、唯一長野県が、県としてそうした条例がなかったのですが、昨年同様の条例を制定し、全ての都道府県において上記の条例が存在することとなったようです。

(3) 本件では、東京都内の狩野氏の自宅に17歳が宿泊したとされるところ、東京都青少年の健全な育成に関する条例(以下、「東京都青少年健全育成条例」といいます」。)18条の6で「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行なってはならない。」と定めており、同24条の3において、2年以下の懲役または100万円以下の罰金を定めているため、同条例に違反しないか、が問題となります。

 

2.青少年健全育成条例の憲法上の問題点について

(1) そもそも、上記のような条例については、未成年者であっても当事者間で合意の上で性行為を行なっているにもかかわらず、刑事罰をもって処罰することは憲法違反でないかと争われた事案があり、最高裁の判例が存在します(昭和60年10月23日最高裁大法廷判決。以下、「昭和60年最高裁判例」といいます)。

 

(2) 昭和60年最高裁判例の事案では、犯行実行時の福岡県青少年保護育成条例において、「何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつな行為をしてはならない。」と定めていたところ、これに違反して起訴された被告人が、①当該規定は、真剣交際に基づく場合を含む一切の性行為を禁止するものであり、幸福追求権を定めた憲法13条等に違反する、②「淫行」の意味が不明確であり、犯罪の構成要件の明確性を要求する憲法31条に違反する(憲法31条の明文上は規定されていませんが、犯罪の構成要件の明確性を要求する趣旨と解されています)などとして、当該規定の違憲無効を主張しました。

 

(3) これに対し、最高裁は、当該条例の趣旨について、「一般に青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によって精神的な痛手を受け易く、またその痛手からの回復が困難となりがちである等の事情にかんがみ、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとした」点にあるとしました。

 その上で、「淫行」とは、「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいう」として限定解釈した上で、憲法11条、13条、19条、21条には違反しないと判断しています。

 上記昭和60年最高裁判例を受けた上で、現在の各自治体の条例では、東京都青少年健全育成条例のように、「みだらな」という要件が付加された規定になっているのものと思われます。

 

(4) なお、昭和60年最高裁判例の事案では、③当該被告人は、相手方である青少年と真剣交際に基づいて性行為を行なっており、その意味においても「淫行」にあたらないとの主張もなされたようです。

 しかし、上記主張に関しては、当事者間で相当期間にわたって一応付き合いとみられる関係があったものの、当事者間の年齢、性交渉に至る経緯、その他両者間の付き合いの態様等の諸事情に照らすと、相手方の少女を自己の性欲を満足させる対象としか扱っていないとして、被告人の主張を退けています。

 

3.本件における狩野氏の青少年健全育成条例違反の可能性について

 それでは、本件における狩野氏についての東京都青少年健全育成条例違反の可能性について検討します。

 

(1) まず、条例違反が成立する要件についてですが、刑法上、過失犯処罰規定がない限り、犯罪を構成する具体的事実について故意が必要とされており(憲法38条1項)、本件では、「相手方が18歳未満であったこと」の認識が必要となります。

 本日の狩野氏の記者会見によれば、昨年7~8月頃から交際を開始したものの、当初は成人であるとの認識であり、10月頃に相手方に問いただして初めて18歳未満と認識したとのことです。そして、18歳未満と分かった後は交際をやめ、相手方が狩野氏の自宅に来ることはなくなったとのことです。

 そうすると、現時点では、狩野氏において、相手が18歳未満であると認識していなかった、という主張のようです。

 

(2) 仮に立件する場合には、相手方である青少年の事情聴取やその他の客観証拠により、狩野氏が「相手が18歳未満であると認識していたこと」を立証する必要があります。

 狩野氏の上記会見内容との関係では、相手方がアイドル活動をしていたとされる点や、昨年11月に相手方の青少年と撮影されたとされる写真もあるようですが、当職が事実関係を認定できるわけではないので、詳細に関する言及は差し控えたいと思います。

 

(3) 上記の他、狩野氏は記者会見において、相手と真剣交際する意思があったのかという趣旨の質問に対し、狩野氏の34歳という年齢も踏まえ、ちょっと考えられないと回答しているようです。一方で、彼女としてお付き合いしていたのかという質問に対し、恋愛感情はあった旨回答しているようです。また、条例違反の可能性については、そこを問われる場合には素直に受けると回答しているようです。

 上記回答に照らすと、「相手方と真剣に交際する意思があったから淫行に当たらない」という主張は行なわない趣旨のようですが、仮にそうした主張を行なった場合でも、上記回答からは真剣交際の意思は認めがたいのではないかと思います。

 東京都健全育成条例の解釈に関し、「みだらな」の意義は上記昭和60年最高裁判例で掲げられているものと同様と思われますが、要するに、結婚を前提とした交際に限定されると言っても過言ではないでしょう。

 「真剣に交際する意思」については厳格に解されており、上記昭和60年最高裁判例の事案においても相当の交際期間があっても「真剣に交際する意思」は否定されている点を踏まえると、本件に限らず一般論としても、そうした弁解はなかなか通らないと思われます。

 

4.本件における週刊誌(フライデー)報道内容について

(1) 昨年12月10日付成宮氏に関するコラムでも名誉棄損やプライバシーとの関係につき検討しましたが、狩野氏の件に関するフライデーの報道に関しては、名誉棄損との関係では、①外形的・客観的には東京都青少年健全育成条例違反の可能性があり、犯罪に関する事項であるため公共の利害に関する事項であるとともに、②写真週刊誌の公益目的存在に疑義はあるものの、犯罪の有無に関する報道で公益目的を否定するのは困難であり、③写真等で裏付けられていれば、交際という事実には相当の理由があると思われ、名誉棄損には当たらない可能性が高いでしょう。

 

(2) プライバシー権との関係では、①公道上での撮影は当然にプライバシー権の保護対象とは言えず、直ちにプライバシー権侵害とは言えないでしょう。これに対し、②狩野氏の自宅内の写真の掲載に関しては、プライバシー権侵害に当たる可能性がありますが、上記の③り狩野氏が謝罪会見を行なう共に、無期限謹慎するとされる点に照らすと、狩野氏においてプライバシー権侵害は主張しない趣旨と思われます。

 

(3) その他、狩野氏の写真等の掲載に関しては、①人格権の一種である肖像権、あるいは②芸能人の商業的価値に関するパブリシティ権の対象になると思われますが、おそらくは事前に狩野氏及び所属事務所に連絡し、掲載自体には承諾を取っているのではないかと思います。

 

小川 智史 弁護士

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