弁護士コラム

バイト病欠で罰金は適法?

[投稿日] 2017年02月03日 [最終更新日] 2017年02月05日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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1.バイト病欠による罰金が問題となった事案

 セブンイレブンでアルバイトをしていた女子高生が、風邪のため2日間(計10時間)欠勤したところ、実際に勤務した時間分の給与(25時間分計2万3375円)から、「休む代わりに働かなかった人を探さなかったペナルティー」として、更に10時間分の給与に相当する9350円を差し引かれたようです。

 セブン&アイ・ホールディングスは、「労働基準法違反にあたる」として加盟店に返金を指示したそうですが、同社の広報センターは、報道機関の取材に対し「加盟店の法令違反に関する認識不足で申し訳ない」と述べる一方、「労働者に対して減給の制裁を定める場合、減給は1回の額が平均賃金の半額を超え、総額が賃金総額の10分の1を超えてはならない」と定めた労働意準法91条(制裁規定の制限)に違反すると判断した、と話したそうです。

 上記報道を前提とする限り、同社広報センターは、罰金の額が多すぎたことを問題にしているようですが、この問題は法的にどのようにとらえるべきでしょうか。

 

2.労働者病欠の場合おける使用者がすべき対応について

(1) まず、労働者の給与は労務の対価である以上、時給制の仕事において病気により欠勤した場合、ノーワーク・ノーペイの原則により、欠勤した分の給与の不支給は可能です(民法536条1項)。ただし、月給制の仕事の場合には、雇用契約や就業規則によってどのように定められているかによります。

 

(2) 次に、本件では、「休む代わりに働かなかった人を探さなかったペナルティー」として上記10時間分の給与相当額を制裁として科したとのことです。

  しかし、判例上、使用者には労働者の安全に配慮する義務があるとされます。

  そして、アルバイトが実際に病気を患っている場合、無理に勤務させると、①その人自身の病気が悪化する恐れがあるとともに、②他の労働者にも病気がうつってしまうおそれがあります。さらに③コンビニのレジでは中華まんやおでん等、包装されていない食品を取り扱っていることから、商品販売時の衛生面の管理という意味からも、病気のアルバイトを無理やり出勤させるのは不適切ではないかと思います。

  したがって、「代わりを探せないなら無理にでも出勤すべきである」という趣旨で上記ペナルティーを科したのであれば、使用者側の安全配慮義務違反にあたる可能性が高いでしょう。

 

(3) そもそも、従業員が病気で欠勤する可能性は常に存するのであり、そうした可能性を踏まえて使用者側は人員を確保する必要があるというべきでしょう。

  仮に、経営上の予算の関係で余剰人員が確保できないのであれば、使用者、本件では加盟店のオーナー自身が、欠員の分に相当する労務を実施する必要があるというべきでしょう。

 

3.懲戒処分としての減給処分の可否

(1) 上記報道によれば、セブン&アイ・ホールディングスは、主として、労働基準法91条により罰金の額が高額になった点を問題としているようです。

 

(2) しかし、労働基準法91条は、「減給の制裁を定める場合」と定めており、懲戒処分としての減給処分に関する規定です。

  そして、使用者が労働者に対し懲戒処分を行うためには、相応の懲戒事由が存するとともに、相当な範囲内でないと懲戒処分は無効となります(労働契約法15条)。

  そして、病気による場合は、その症状や程度にもよりますが、上記2(2)で述べた通り、出勤が適切とは言えず、欠勤の正当事由に当たるというべきであって、原則として懲戒事由に該当しないというべきでしょう。ただし、仮病を用いたり、明らかに軽微な症状にもかかわらず不当に欠勤を繰り返している場合には、懲戒事由に当たるとする余地はあるでしょう。

  そうした特段の事情のない限り、そもそも懲戒処分としての減給自体が違法・無効と思われます。

 

(3)  なお、病気の有無について事実関係が争われた場合、病院に通院した場合にはその領収書や処方せんが証拠になると思われますが、少々の風邪ではいちいち通院しないという方も少なくないでしょう。そうした場合、問題が生じたときに備えた立証手段としては、欠勤時の体温を測定した写真を撮影しておくなどの方法が考えられます。

  普通の会社ではそこまで求めない例が多いのではないかと思いますが、風邪を理由とする欠勤が安易に繰り返されるなど、仮に病気の有無自体に疑義が存する場合、使用者が労働者に根拠資料の提出を求めた上で、再三の提出要請にもかかわらず何らの根拠資料も提出しない事態が生じれば、不当欠勤による懲戒処分が可能となる余地はあるでしょう。

  その他、1回の欠勤であっても、屋外で運動するなど、明確に仮病と認められる事情が存する場合には、懲戒処分が可能となる余地があるでしょう。

  ただこの場合でも、上記の通り懲戒処分の相当性が必要であり、相当性を逸脱した処分は無効となります(労働契約法15条)。

 

4.まとめ

  以上より、今回報道された事例に関しては、当該女子高生が実際に風邪を引いていたという前提であれば、懲戒処分としての減給額が労働基準法91条の規制を超過したか否かの問題ではありません。

 上記事例について、詳細な経緯は分かりかねますが、少なくとも報道の限りでは、そもそも懲戒事由が存するのか、少なくとも不当な欠勤と認められるだけの証拠が存する形跡はうかがわれないようです。にもかかわらず、懲戒処分としての減給処分(ペナルティー)を行なっている点が問題です。問題の本質がすり替えられないように注意する必要があるものと思われます。

小川 智史 弁護士

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