弁護士コラム

飲食店の無断キャンセルについて

[投稿日] 2017年12月20日 [最終更新日] 2017年12月20日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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 近時、インターネット予約等により大人数で飲食店を予約したものの、結局キャンセルの連絡もないまま、時間になっても来店せずに無断キャンセルされ、飲食店側に少なくない損害が発生する問題が、ツイッターやその他の報道等で取り上げられています。

 上記の問題について、以下の通り法的検討を行いたいと思います。

 

1.犯罪の成否について

(1)偽計業務妨害罪の成否について

 もし、始めから利用する意思がないのにもかかわらずあえて予約を行なった場合、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

 ただ、一般的には利用開始時間前であればキャンセルを受け付ける店舗が多いと思われるところ、最初から利用する意思がないと明確に認定できるか否か、という問題があります。申込者側の直前の対応等を含めて一体の行為としてとらえる余地はありますが、具体的な事案によります。

 

(2)詐欺罪の成否について

 仮に詐欺罪の成否を問題とするとすれば、何をだまし取ったのかが明らかにする必要がありますが、理論構成するとすれば、飲食店をだまして「予約した時間に当該店舗で飲食できるという利益」を手に入れたという風に考えられることが可能か否かが問題となります。

 しかし、「予約した時間に当該店舗で飲食できるという利益」という考え方は財産的な価値が曖昧であるとともに、やはり飲食店を騙す意思の有無が問題となるため、詐欺罪の成立を肯定するのは困難と思われます。

 

(3)理論上は上記のような問題がありますが、犯罪の嫌疑につき相応の理由があれば捜査自体は可能ですので、悪質な場合には警察等による捜査がなされる可能性がないとはいえません。

 

2.損害賠償請求について

(1)一般的には、予約により飲食店の利用契約が成立したと考えられるため、何等事前連絡なく無断キャンセルした場合、債務不履行や不法行為  に基づく損害賠償責任が発生すると思われます。

   損害額については、元々予約していた料金の合計額が目安となりますが、飲食店に追加の損害が生じているか、あるいは食材を第三者が購入する等により損害が減少しているか等の具体的な事情にもよります。

 

(2)もし、予約者側が事前にキャンセルしたとの認識であった場合、事前キャンセルの有無の認定が問題となりますが、法的にはキャンセルの事実については予約者側で立証する必要があります。実際にどこまで問題となるかはさておき、インターネット予約の場合には、メール送信等の明確な記録に残る形でキャンセルを行なった方が望ましいでしょう。

 

3.飲食店側の対抗策について

(1)無断キャンセルがなされた場合の対抗策

  予約者による無断キャンセルがなされた場合、法的には予約者を特定して損害賠償請求を行なうことは可能です。ただ、予約者が任意に支払わない場合、金額的に法的手続の実施は費用対効果に合わないケースが少なくないと思われます。

 取り急ぎの対応策として、無断キャンセル者を記録し、今後利用に応じないと言った対策は既に実施されているお店も少なくないと思われます。

 また、上記1で述べた法的問題はありますが、悪質な場合には警察に被害届を提出して受理して頂くよう、お願いする方法も考えられます。

 

(2)無断キャンセル予防策について

 予防策としては、①予約者の電話番号やメールアドレスだけでなく、予約者の住所も届出を求める、②飲食代金の全部もしくは一部についてクレジットカード利用や振込等の方法により前払を求める、③直前の確認を強化すると言った方法が考えられます。

 ただ、予約手続きがあまり煩雑になると、かえって予約が敬遠される恐れがありますので、なかなか難しいところです。また、クレジットカード利用を推進した場合、カード会社に対する手数料負担の問題もあります。

 どのような対策をとるかは飲食店の経営判断になりますが、試行錯誤の上でベストな選択を行なう必要が生じるのではないかと思います。

 

4.まとめ

 以上述べた通り、一旦予約した場合基本的には利用契約は成立しており、無断キャンセルした場合飲食店側にも相応の損害が発生しますので、利用しない場合は事前に明確な記録の残る形でキャンセルするべきでしょう。

 

 

小川 智史 弁護士

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