弁護士コラム

強制執行について(1)

[投稿日] 2018年02月25日 [最終更新日] 2018年02月25日
Resized avatar mini magick20170419 15354 4y9nui

小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

依頼者のために最善を尽くしていきます

 法的な債権回収手段として、訴訟提起による判決等を得たものの、任意に支払いを得られない場合、強制執行を実施する場合があります。

 相手方に目ぼしい資産が見当たらず、強制執行を行なっても費用対効果に合わない場合も少なくありませんが、強制執行を実施する場合の留意点ないし特徴について整理しておきたいと思います。

 

1.差押に必要な債務名義について

(1)債務名義の意義及び主な具体例

 強制執行は、相手方の資産を差し押さえて強制的に換価する手続であるとともに、通常訴訟とは別個の手続として執行を担当する裁判所が別途手続を実施するため、強制執行が認められる債権の存在が一義的に明確である必要があります。

 そのため、強制執行申立開始の要件として、当該債権について強制執行実施が法的に認められた「債務名義」の存在が必要となります(民事執行法22条柱書)。

 債務名義の主な具体例としては、確定判決(同条1号)、仮執行宣言付判決(同条2号)、強制執行認諾文言付の公正証書(同条5号)、確定判決と同一の効力を有するもの、具体的には裁判上の和解調書や調停調書等(同条7号)、等が挙げられます。

 

(2)当事者の住所等に変更がある場合

 債務名義においては、住所の表示等によって当事者を特定しますが、現実の強制執行申立時には債務名義発生時から当事者の住所等が変更している場合があります。この場合、債務名義の記載だけでは当事者の同一性を判断できないため、住民票や戸籍の付票に記載された住所の履歴により、当事者の同一性を明らかにする必要があります。

 また、各当事者についての相続発生や法人の場合における合併等の企業再編により、債務名義発生時点から当事者に変更が生じている場合があります。このように当事者に変更が生じている場合、原則として、債務名義を作成した裁判所に根拠資料を提出した上で、「承継執行文」といって、当事者の変更に関する証明文書の発行を申請する必要があります(同法27条2項)。

 

 

2.不動産の差押(強制競売申立て)について

(1)対象不動産の選定について

 差押対象の選定に当たり、債務者が不動産を所有しており不動産から回収可能性があれば、不動産に対する強制競売申立てを検討することになります。

 債務者の不動産情報については、登記簿を取得した上で抵当権の有無等を把握する必要があります。抵当権の設定の他、固定資産税等の滞納により租税債権者から差押がなされている場合が時々見られるため、注意する必要があります。また、差押の登記がなされていない場合であっても、国税債権については原則として全ての債権に対する優先権があるとされます(国税徴収法8条)。

 一般債権者が不動産の強制競売申立てを行なっても、上記のような優先債権者への配当見込額を控除すると申立債権者への配当見込みがない場合、申立は取消されます(民事執行63条3項)。

 登記簿上の情報について、抵当権の被担保債権額は表示されますが、あくまで登記時の情報であり、申立時点での残債権額は容易には分かりません。抵当権設定時期等の諸事情から残債権額を推測した上で、不動産の時価を踏まえて、実際に強制競売申立てを行なうか否か判断する必要があります。

 

(2)被相続人名義のままになっている場合

 時々散見されるケースとして、債務名義発生時は相手方は無資力であったところ、その後相続により不動産の所有権(共有持分)を取得したものの、不動産登記が被相続人名義のままになっている場合があります。

 この場合、上記1でのべたように、執行を担当する裁判所は当事者の同一性につき一義的かつ明確に判断する必要があり、すぐには差押できません。

 ではどうするかというと、債権者は債務者に代位して不動産の登記名義を編こすることが認められるため(民法423条1項)、強制競売申立ての場合は、申立の前に、まず登記名義を債務者名義に変更する代位登記の手続を行なう必要があります。

 代位登記の場合、債務者に対する債務名義の他、戸籍謄本等の相続関係に関する資料を収集する必要があり、代位登記手続に要する期間も併せると、強制競売申立てが可能になるまで多少時間がかかります(具体的な期間は必要な戸籍謄本等の数にもよります)。

 

(3)回収可能性に関し考慮すべき主な事項

   不動産の強制競売申立てを行なった場合の回収可能性に関し、現実に競売を実施した場合、いわゆる係争物件として通常の市場価格よりも低い価格で落札され、配当金額が低くなる可能性があります。

 そのため、当該不動産を任意売却した方が債権者にとって有利と見込まれる場合には、債務者その他の利害関係人と協議の上、任意売却代金からの支払を前提とした債務者との和解を検討する必要が生じる可能性があります。

 申立前における不動産の売却見込みの調査に関しては、①申立に当たり固定資産税評価証明書を取得して添付する必要がありますが、②近隣の同種物件の売り出し情報からの推測する方法のほか、③申立前に不動産業者に査定依頼する場合には、債務者側に察知されないように注意する必要があります。

 なお、強制競売申立てにあたり、裁判所への予納金や登録免許税等の諸費用もそれなりにかかるため、注意する必要があります(詳細に関しては裁判所のホームページ内の強制競売申立てに関するサイトをご参照ください)。

 

3.上記の他、主な強制執行手段として債権差押や動産差押等が挙げられますが、詳細につきましてはまた別の機会に言及したいと思います。

小川 智史 弁護士

注力分野
交通事故
  • Icon 3分割払いあり
依頼者のために最善を尽くしていきます

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。