弁護士コラム

強制執行について(2)

[投稿日] 2018年03月01日 [最終更新日] 2018年03月01日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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 本年2月25日付「強制執行について(1)」では、強制執行申立てに関し、債務名義に関する説明及び不動産執行(強制競売申立て)に関する検討を行いましたが、今回は、債権執行に関する検討を行います。主な債権執行対象として、以下のような債権が考えられます。

 

1.売掛金債権の差押について

 まず、債務者が法人あるいは個人事業主等の事業者の場合、債務者の取引先について売掛金債権を有している可能性があり、売掛金債権を差し押さえる方法が考えられます。

 ただ、資力の乏しい債務者は、売掛金債権を別の債権者に譲渡している可能性があります。差押前に債務者が当該差押債権の譲渡につき当該差押債権の債務者(以下、「第三債務者」といいます)に内容証明郵便等の確定日付のある証書で通知していた場合、譲渡に第三者対抗力が認められるため(民法467条2項)、差押は困難です。

 また、例えば第三債務者が購入した商品に欠陥があったり、第三債務者が債務者に対して相殺の主張が可能な場合等、当該差押債権の存否・金額等につき第三債務者から反論を受ける可能性がある点にも注意する必要があります。

 

2.賃料債権の差押について

 債務者が所有する不動産につき賃貸人となっている場合、賃料債権を差押する方法が考えられます。

 この場合においても、当該不動産の修繕費用の請求等、第三債務者から賃料債権に関する反論を受ける可能性があります。

 また、当該不動産に抵当権が設定されている場合、抵当権者の物上代位権(民法372条、304条)といって賃料債権も取得できる権利を有しており、判例上、抵当権設定登記が先になされている場合は一般債権者の差押に優先するとされます。一般債権者に対し不払いが生じている債務者は通常抵当権の対象となっている債務も滞納している可能性が高く、抵当権が設定されている不動産についての賃料債権差押により回収できる可能性は極めて低いでしょう。

 

3.敷金・保証金返還請求権の差押について

 債務者が賃借物件を使用している場合、賃貸人に対する敷金・保証金返還請求権を差し押さえる方法が考えられます。

 ただ、敷金返還請求権は賃借人が賃貸人に当該不動産を明け渡し完了後に具体的な請求権が発生するとともに、未払賃料や原状回復費用等が控除されるとされます。

 事業用建物賃貸借契約では、敷金・保証金返還請求権が高額になる場合が少なくありませんが、一方で原状回復費用も高額な場合が少なくありません。

 敷金・保証金返還請求権の差押については、現実の回収は容易ではありませんが、事業を営む債務者の場合にプレッシャーを与えるという趣旨であれば、意味がないとは言えないかもしれません。

 

4.預金債権の差押について

 上記1~3のような資産が見当たらない場合、預金債権差押を検討する場合が最も多いです。

 ただ、銀行預金については原則として支店を特定する必要があり(ゆうちょ銀行を除く)、申立を行なってみないと実際の残高は分かりません。具体的には、①預金債権差押の申立てを行なった後、②裁判所を通じて金融機関に預金残高に関する回答を求める催告を行ない、③回答を踏まえて実際に差押を行なうことになります。

 資力の乏しい債務者の場合、預金残高も乏しいケースが少なくありません。また、事業者の預金、特に定期預金については金融機関が預金担保貸付を行なっているケースが多く、判例上、差押後でも預金担保貸付に関して相殺可能とされます。なお、2020年4月1日施行予定の改正民法511条1項では、「差押前に取得した債権による相殺」を認める旨明記されています。

 もっとも、債務者が事業者の場合は銀行取引停止になる可能性があるほか、法人債権者の場合は法人税法上の損金処理の関係上預金差押が必要となる場合が少なくないという点では、意味があるでしょう。

 

*上記の他にも、債権執行対象及び各対象について留意事項がありますが、また次の機会に言及したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

小川 智史 弁護士

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