弁護士コラム

強制執行について(4)

[投稿日] 2018年03月15日 [最終更新日] 2018年03月15日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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 本年2月25日付「強制執行について(1)」、3月1日付「強制執行について(2)」、3月7日付「強制執行について(3)」に引き続き、今回は動産執行等について検討を行いたいと思います。

 

第1 動産執行について

1.自動車の差押について

 動産の差押対象として、債務者が所有する自動車を差し押さえる方法が考えられますが、主に以下の点に注意する必要があります。

 

(1) 債務者所有自動車にローンが組まれている場合 

 自動車の差押に関しまず注意すべき点としては、まず、債務者がローンを組んで自動車を購入している場合、通常はローン会社に所有権が留保され、ローン会社を所有者として登録がなされています。この場合、自動車の差押は困難ですので、自動車ローンの有無についてまず確認する必要があります。

 

(2) 債務者所有自動車の時価について

 また、債務者が使用中の自動車については、換価可能といえるだけの時価を有するか、についても注意する必要があります。中古自動車の時価については車種や年式ごとに細かく基準が存在しますが、普通車の場合は減価償却期間が6年とされるため、6年以上経過している普通車は、特段の事情のない限り時価ゼロとして差押は困難です。

 

(3) 債務者所有自動車に対する保全処分の必要性

 さらに、自動車はその性質上、管理場所を容易に移動できてしまいます。そのため、もし債務者がローンのない高級自動車を所有しており、自動車に対する執行を予定する場合は、執行以前に債務名義の取得(訴訟提起等)の段階で、自動車に対する占有移転禁止の仮処分(民事保全法23条1項)を実施しておく必要があります。

 

 

2.債務者の自宅ないし店舗内動産の差押について

 不動産執行や債権執行の見込みが立たない場合、債務者自宅等に存する動産執行の実施も法的には可能ですが、以下の点に留意する必要があります。

(1)個人債務者の自宅内の動産差押について

 しかし、債務者の日用品、例えばテレビや家電製品等、一般家庭内に存在する家具等はほとんどが差押禁止動産に該当します(民事執行法153条各号)。また、現金についても66万円までは2か月分の必要生計費として差押禁止動産に該当するため、差押できません。

 個人債務者の自宅内の動産執行に関しては、裁判所の執行官の日当等の諸費用も要するため、通常は赤字になってしまうことがほとんどです。

 現実に個人債務者に動産執行がなされた例としては、旧証券取引法違反に問われた某有名元IT企業経営者に対する株主からの損害賠償請求において、自宅内の高級品が差し押さえられたケースがあるようです。

 

(2)法人店舗等内の動産執行について

 債務者が法人等の事業者において、法人店舗等に動産執行を実施した場合、①店舗内に存在する法人所有の現金については、差押禁止動産に該当しないとして差押できる場合があります。

 その他の例としては、②法人所有の複合機等、換価価値があるものについては差押できる場合があります。換価価値が明らかでない動産については、一旦差押した後、別途せり売りの手続を実施することになります。

 

第2 債権者から債務者に対する破産手続開始申立を行なう場合

 関連問題として、無資力の債務者について法的整理を行なう場合、債務者からの自己破産手続開始申立の他、法的には債権者から申立を行なうことも可能です(破産法18条1項)。

 ただ、債権者破産手続開始申立の際は、債権の存在及び破産手続開始原因となる事実、具体的には債務者が「支払不能」といって、期限が到来している債務につき一般的かつ継続的に支払できない状態にあることを明らかにする必要があります(同法18条2項、15条、2条11項)。なお、法人債務者については、原則として「支払不能または債務超過」により破産手続開始原因に当たるとされます(同法16条1項)。

 債権者破産手続開始申立に際しては、上記の「支払不能」等の事実を明らかにするため、債務者に対する預金債権執行や動産執行の実施が必要になる可能性があります。

小川 智史 弁護士

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