弁護士コラム

民法(相続法)改正案について

[投稿日] 2018年04月01日 [最終更新日] 2018年04月01日
Resized avatar mini magick20170419 15354 4y9nui

小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

依頼者のために最善を尽くしていきます

 本年1月26日、法制審議会より民法のうち相続法部分の改正案が示されました。まだ国会審議は経ておらず、原案通り成立するか分かりませんが、現在出されている改正案の主な概要についてまとめておきたいと思います。

 

1.配偶者の居住権を保護する制度の新設

 近年高齢化社会が進行し、相続開始時に配偶者の年齢も非常に高齢化している例が多い点を踏まえ、配偶者の居住権を確保するため、「配偶者短期居住権」及び「配偶者居住権」の新設が検討されています。概要は以下の通りです。

 

(1)「配偶者短期居住権」について

①被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に無償で居住していた場合、当該建物につき共同相続人間で遺産分割すべきときは、遺産分割より建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6カ月を経過する日までのいずれか遅い日までの間、配偶者は、分割後の所有者に対し、無償で当該建物を使用できるとされます。

②あくまで当該建物の使用に限られ、賃貸等の収益はできません。また、使用権の譲渡は認められません。

③配偶者が相続放棄した場合や、遺言により居住建物の相続を否定された場合など、一定の場合は除外されます。

④「短期居住権」については、遺産分割の際の具体的な相続分の算定に当たり、控除しないとされます。

⑤「短期居住権」は、第三者には対抗できません。

 

(2)「配偶者(長期)居住権」について

①被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物(第三者との共有の場合を除く)に相続開始時に居住していた場合において、遺産分割による合意や遺言による指定等により「配偶者居住権」を取得したときは、当該建物について無償で使用収益出来るとされます。

②「配偶者居住権」は登記可能であるとともに、登記した場合は、第三者に対抗可能です。

③「配偶者居住権」については、遺産分割の際の具体的な相続分の算定に当たり、その財産的価値が控除されます。

④「配偶者居住権」も、第三者に譲渡することはできません。

→③、④に照らすと、配偶者が老人ホーム等の施設入居の可能性がある場合、「配偶者(長期)居住権」の取得については、慎重に検討する必要があります。

 

2.遺産分割に関する見直し

(1)預貯金を遺産分割対象とする旨の最高裁平成28年12月19日大法廷決定を踏まえ、預貯金の処分に関し、以下の改正が検討されています。

 ①上記大法廷決定補足意見で示されている、家事事件手続法上の仮処分の要件の緩和が予定されています。

 ②被相続人の葬儀費用や債務の弁済等の当面の資金確保を考慮し、遺産に属する預貯金債権のうち、預貯金債権額の1/3×各法定相続分(ただし、法務省令で定める額を上限とする)については、単独での払戻ができるようにする予定です。上限金額は、金融機関ごとの預貯金債権につき判断されることとなる予定です。

 

(2)遺産の全部分割に限らず、一部分割も認める方向で検討されています。

 

3.遺言制度に関する見直し

(1)自筆で作成する遺言(自筆証書遺言)について、財産目録を添付する方式も認める方向で検討されています。この場合、不動産や預貯金債権等の目録の内容はパソコン作成も可能ですが、各目録ごとに署名押印が必要とされます。

 

(2)自筆証書遺言について、原本を法務局で保管する制度の新設が予定されています。この場合、遺言者自身が法務局に出頭する必要があります。また、保管可能な遺言は無封のものに限られ、封があるものは除外されます。

 

(3)遺言執行者の権限が明確化されます。

 

4.遺留分制度に関する見直し

(1)配偶者や子等が有する遺留分減殺請求権について、「遺留分侵害額請求権」と名称が変更され、金銭の請求に限定される予定です。

(2)相手方がすぐに金銭支払資金を有しない場合、裁判所が債務の支払いに関し、相当の期限を付することができるようにする予定です。

 

5.相続人以外の者の貢献に対する考慮

(1) 被相続人に対し無償で療養看護その他の労務提供により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族(子の配偶者等。以下「特別寄与者」といいます)は、相続人に対し、「特別寄与料」の支払を請求できるとする改正が予定されています。

 

(2)特別寄与者は、当事者間に協議が整わないときは、①相続開始および相続人を知った時から6カ月以内、又は②相続開始の時から1年以内に、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できるとする改正が予定されています。

小川 智史 弁護士

注力分野
交通事故
  • Icon 3分割払いあり
依頼者のために最善を尽くしていきます

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。