弁護士コラム

民法(債権法)改正における経過措置について(1)

[投稿日] 2018年08月29日 [最終更新日] 2018年08月29日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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昨年からお伝えしております通り、昨年5月に民法(債権法)改正法が成立し、2020年4月1日施行予定ですが、改正法施行に当たり、現行法からの経過措置について整理しておきたいと思います。主な経過措置の内容として、今回はまず、債権の時効に関する経過措置について整理しておきます。

 

1.消滅時効に関する経過措置の基本的な考え方について

 債権の消滅時効に関する原則について、現行法では権利を行使しうる時から10年であるのに対し、改正法では権利を行使しうることを知った時から5年又は権利を行使しうる時から10年とされ、職業別の短期消滅時効や商事消滅時効も廃止されます。

 改正法の適用に関し、①施行前に発生した債権については現行法を、施行日以降に発生した債権については改正法の適用が原則とされます(改正法附則10条4項)。

 もっとも、②債権自体は施行後に発生したものでも、債権が生じる原因自体が施行前に発生している場合には、現行法が適用されるとされます(同附則10条1項)。契約に基づき生じる債権については、契約締結時に発生原因が生じているとして、原則として契約締結日が基準になると解されます(具体的な債権の発生原因によっては、例外が生じる場合もあり得ます)。

 

2.時効中断・停止に関する経過措置について

 現行法では、時効期間中に債務の弁済や債権者からの訴訟提起がなされた場合において、時効中断事由として消滅時効期間がリセットされますが、改正法では時効の更新・完成猶予に表現が改められたほか、当事者間で権利について協議を行なうと合意した旨の書面が作成された場合は時効完成猶予事由とされます(改正法151条)。

 改正法の適用との関係では、①改正法日施行前に時効中断・停止事由が生じた場合には現行法が適用され、②改正法施行日後に時効の更新・完成猶予事由が生じた場合には改正法が適用されるとされます(同附則10条2項・3項)。

 もっとも、③改正法日施行前に時効中断・停止事由が生じた場合であっても、改正法日施行後に当事者間で権利について協議を行なう旨の合意書面が作成された場合は、改正法日施行後の完成猶予事由として、改正法が適用されるとされます。

 

3.生命・身体に関する不法行為に基づく損害賠償請求権に関する経過措置について

 不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、損害および加害者を知った時から3年又は不法行為の時から20年の原則は維持されますが、特に生命・身体に関し生じた損害に関する短期消滅時効は、損害および加害者を知った時から5年に改正されます(改正法724条の2)。

 改正法724条の2の適用に関しては、改正法施行時点で消滅時効完成済みの場合は改正法による変化は生じないものの、改正法施行時点で時効未完成の場合は改正法適用により5年に伸長されます(同附則35条2項)。

 典型例として、交通事故により生じた損害のうち人損分については、①2017年4月1日事故が生じた場合、②2017年4月1日以降に症状固定となった場合の後遺障害逸失利益・後遺障害慰謝料等の後遺症に関する損害、③2017年4月1日以降に任意保険会社からの支払等により時効中断が生じていた場合、には2020年4月1日以降、改正法が適用されると見込まれます。

 ただし、④物損に関する消滅時効は現行法と変わらない他、⑤(a)自賠責保険会社への請求権の消滅時効は現時点では3年から変更されていないとともに、(b)自賠責保険金請求権や被害者側任意保険会社への人身障害保険金請求権等、相手方への損害賠償請求権と別個の債権については、相手方(の任意保険会社)とは別途時効中断を行なう必要がある点に注意頂く必要があります。

 

4.消滅時効の点以外にも色々と経過措置がありますが、まとめて記述するとコラムがだいぶ長くなってしまいますので、また次回以降に引き続き掲載したいと思います。

小川 智史 弁護士

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