弁護士コラム

交通事故における過失ゼロの主張の成否について

[投稿日] 2018年10月14日 [最終更新日] 2018年10月15日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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交通事故の法律相談において、相手方(保険会社)と過失割合に関する争いがあるが、依頼者の方としては過失ゼロと考えており、過失ゼロで決着させることはできないか、というご相談をよく受けます。そこで、今回は過失ゼロの主張の成否について検討を行いたいと思います。

 

1.交通事故における過失割合については、東京地裁民事交通訴訟研究会において、過去の裁判例等を基に、事故類型ごとに基本的過失割合を示し、修正要素があれば修正すべきとしてまとめた文献が「別冊判例タイムズ」として刊行されており(最新版は全訂第五版・No.38。以下、単に「別冊判例タイムズ」といいます)、保険会社との交渉や一般的な訴訟では別冊判例タイムズの基準を基に過失割合が算定される場合が多いようです。

 ただし、別冊判例タイムズの基準はあくまで基準であって法的拘束力を有するわけではなく、個別具体的な事故態様や具体的な衝突状況に即して算定を行なう必要がある点に留意頂く必要があります。

 

2.一般的に過失ゼロとされる類型としては、①追突事故、②青信号対赤信号の事故、③相手方のセンターラインオーバーの事案等が挙げられます。

 上記類型においては、加害者側保険会社も加害者側の過失100%を争わないケースが多いようです。

 ただ、あくまで一般的な傾向であり、①追突事故の場合でも被追突者の急停止等の事情があれば過失有とされますし(基準としては3割程度)、②赤信号類型では赤信号であった事実自体が争われるケースや、③センターラインオーバー事案でも直進走行者側に過失有とした裁判例もあるため、留意頂く必要があります。

 

3.そして、依頼者ないしご相談者の方において、被害者側は過失ゼロと考えているが、相手方保険会社等が過失有と主張して争いが生じるパターンとして、主に、(1)事故類型自体に争いがある場合、(2)事故類型自体に根本的な争いがあるとまでは言えないが、具体的事情に照らすと事故発生について予見困難ないし結果回避困難と主張される場合、が多いようです。

 

(1)事故類型自体に争いがあるケースとして、例えば、①相手方車両が後方から接近し、被害者車両の脇に衝突したが、追突事故か接触事故か争いがある場合、②相手方車両が別車線を走行していた後、被害者側車両走行車線に変更した結果、被害者車両後方に衝突した場合において、追突事故か車線変更事故か争いがある場合、等が挙げられます。

 この種のケースですと、相手方保険会社等は、①では接触事故、②では車線変更事故として、これらの類型に基づく基本的過失割合を前提に、被害者側にも過失有と主張してくるようです。

 なお、上記①や②のケースにおいて、衝突場所自体が後方であっても、衝突に至る前後の自動車の位置関係等から、相手方保険会社等は、直進車の前方注意義務違反を主張してくる場合があります。

 

(2)の類型としては、例えば、①直進走行中における相手方車両による車線変更事案や、②交差点で直進中、相手方車両が右折して衝突した事案等において、相手方の走行態様等に照らすと、衝突は予見困難・回避困難と主張されるケース(①の場合は車線変更禁止場所や変更合図なし、②の場合は直近右折や変更合図なし)が挙げられます。

 この種のケースにおいても、相手方保険会社等は、まずは基本的過失割合(①の場合は7:3、②で信号機有の場合8:2)を主張してくることが多いようです。

 

4.(1)事故態様自体や具体的な衝突状況に関し争いが生じた場合、まずは事故発生場所の都道府県の自動車安全運転センターから交通事故証明書を取り寄せる必要がありますが、この種のケースですと、交通事故証明書では事故態様につき「追突」ではなく「接触」や「衝突」となっている場合が多いです。そのため、実際の事故態様について被害者側で立証する必要が生じる可能性が高いです。

(2)相手方保険会社等との交渉により基本的過失割合から譲歩がなされ、当事者としても交渉による解決を了承される場合は提訴前の示談による解決の可能性もありますが(ただし、示談の場合には、通常過失ゼロではなく一部譲歩が必要になります)。

 双方が主張する事故態様や具体的な衝突状況等の事実関係に争いがあり、話し合いによる決着が困難な場合、訴訟提起等の法的手続が必要になる可能性が高いです。

(3)訴訟提起する場合、過失ゼロの主張を裏付けるための事実を立証する必要があり、①双方自動車の損傷態様の分析の他、②ドライブレコーダー画像、③防犯カメラ画像、④目撃者、⑤信号状況が争いになる場合には警察からの信号サイクル表の取り寄せ等の方法が考えられます。

 裁判所においては、事実認定に際し客観証拠による裏付けを重視しますが、争いのある事実関係については一般的に事実認定に慎重になるため、必ずしも原告側主張が認められるとは限らない点に留意頂く必要があります。

 

5.(1)上記のように、交通事故発生時の事故態様や衝突状況につき争いが生じた場合、客観証拠がないと水掛け論になってしまう恐れがあり、一般車両においてもドライブレコーダー設置の有無が重要となってきます。ただ、ドライブレコーダーの設置及び管理には相応の費用が発生するため、事故発生確率と比較した費用対効果も踏まえて対応をご検討頂く必要があるでしょう。

(2)なお、近時自動車メーカー等においても自動運転車の実用化に向けた開発が進められている点がよくニュースで取り上げられますが、自動運転車が導入された場合、システムの在り方にもよりますが、過失割合に関する考え方も大きく変化するものと見込まれます。

小川 智史 弁護士

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