弁護士コラム

相続放棄に関する留意点

[投稿日] 2019年06月27日 [最終更新日] 2019年06月27日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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 本日(2019年6月27日)、某テレビ局の朝のワイドショー番組で相続放棄に関する特集を行なっており、当該番組において、1.相続放棄対象者の範囲、2.相続放棄期間(相続開始を知った時から3カ月以内)経過後の相続放棄の可否、3.相続放棄期間内に被相続人の財産状況が明確にわからない場合について言及していましたが、当該番組の放送内容についていくつか気になった点がありましたので、言及しておきます。

 

1.相続放棄の対象者について

 まず、当該番組では相続放棄対象となる相続人について、①配偶者及び子、②親などの直系尊属、③兄弟姉妹であり、それ以外には発生しないとしていましたが、誤りです。

 一般に、被相続人が高齢者のケースが大半ですが、①相続開始時点で子が親より先に死亡したり、廃除により相続権を失った場合でも、子の子(孫)やさらにその子孫(ひ孫等)が存在する場合は、孫やひ孫等の子孫も代襲相続人となるため(民法887条2項、3項)。以下、「配偶者・子等」といいます。)、代襲相続人も相続放棄対象者となります。子孫の配偶者は、被相続人と養子縁組していない限り、相続人にはなりません。

 次に、配偶者・子等、親がいずも相続放棄するか、相続開始時点で存在しない場合は、③原則として兄弟姉妹が相続人となりますが、相続開始時点で兄弟姉妹が先に死亡しているか廃除により相続権を失っている場合は、兄弟姉妹の子(甥姪)も代襲相続人となり(民法889条2項)、相続放棄対象者となります。高齢者の相続の場合は、甥姪が代襲相続人となる場合が少なくないでしょう。ただし、(a)甥姪の配偶者や子孫は更に代襲相続人とならないとともに(民法889条2項では再代襲相続に関する887条3項を準用していません)、(b)兄弟姉妹が存命であり、兄弟姉妹自身が相続放棄した場合には、相続放棄した兄弟姉妹自身の子は代襲相続人にはなりません(民法939条)。

 なお、相続放棄期間は「自己のために相続開始があったことを知った時から3カ月以内」とされ(民法915条1項本文)、①配偶者や子の場合は被相続人の死去をすぐに知る場合が多いと思いますが、②親などの直系尊属、③兄弟姉妹・甥姪は、全順位の相続人が存在する場合には、全て相続放棄して自身が相続人となったことを知った時が起算点となります。

 

2.相続放棄期間経過後の相続放棄の可否について

 当該番組では、相続放棄期間経過後、知らない債権者から請求がなされた場合でも相続放棄が認められない旨の説明を行っていましたが、一切相続放棄できないという趣旨であれば、誤りです。

 相続放棄期間経過後の相続放棄の可否について、最高裁昭和59年4月27日判決は、相続財産調査により相続放棄の可否判断が可能であることが前提条件とした上で、「右各事実を知つ た時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無 の調査を期待することが著しく困難な事情があつて、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知 つた時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常こ れを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。 」としています。

 当該事案では、被相続人と相続人が疎遠で相続財産の把握が困難であった事案であり、あくまで例外ですのでどこまであてはまるのかという問題はありますが、合理的理由により相続放棄しなかったにもかかわらず、相続放棄期間経過後、予期せず債権者から多額の請求がなされた場合、相続放棄は認められる可能性があります。

 

3.相続放棄期間内に被相続人の財産状況が明確にわからない場合

 当該番組では、相続財産がプラスかマイナスか、3カ月以内に調査困難な場合でも、必ず3カ月以内に相続放棄するか否かの判断する必要がある旨の説明がなされていましたが、誤りです。

 相続放棄期間内に相続財産の調査が完了せず、相続放棄するか否かの判断が困難な場合は、家庭裁判所に相続放棄期間の伸長を求めることが可能です(民法915条1項但書)。

 なお、相続放棄を行う場合、相続開始地、具体的には被相続人の最後の住所地の管轄裁判所に申述を行う必要があるため(家事事件手続法201条1項)、被相続人が相続人から見て遠方に居住していた場合は、ご注意頂く必要があります。

小川 智史 弁護士

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