弁護士コラム

コロナウィルス感染拡大と危険負担・契約解除等について①

[投稿日] 2020年02月21日 [最終更新日] 2020年03月02日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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現在(本コラム作成日である2020年2月21日時点)において、いわゆる新型コロナウィルスについて日本国内でも感染が広がりつつあり、今後の感染拡大が懸念されます。今後新型コロナウィルスの感染拡大状況によっては、事実上屋外での移動や公共施設の利用が困難になったり、物品の運送等に重大な支障が生じ、当初予定された契約の履行が困難となる可能性もないとはいえません。

上記自体が実際に生じるか否かはともかく、仮に生じた場合の法的問題点、特に契約上の危険負担や解除について、法的な整理を行いたいと思います(なお、あくまで仮定の問題として検討を行うものであって、不安を煽ることを意図するものではありませんし、かかる事態が発生しないことが望ましいのは言うまでもありません)。

 

1.現行民法における法適用

 仮に、新型コロナウィルス流行により、交通機関利用や公共施設の利用、物流等に重大な支障が生じ、物の引き渡し等の契約の履行が遅延または困難となった場合、①債務者に帰責性はなく、直ちには債務不履行責任は発生しないとされます(現行民法415条)。ただし、②金銭債務については、不可抗力をもって債務不履行責任を免れることはできないとされます(現行民法418条3項)。

 そして、③当事者双方の責めに帰することができない事由により履行不能となった場合には、一方当事者の反対給付請求権も消滅するため(現行民法536条1項)、例えば当初予定されていたイベントが安全の観点から中止になった場合、イベント参加予定者の代金支払債務も消滅するのが原則です。ただし、④特定物に関する物権(所有権等)の設定及び移転を目的とする場合(例:不動産の売買契約)、その物が債務者の責めに帰することができない事由により滅失又は損傷した場合、反対債務(売買契約における代金債務等)は消滅しないとされます(現行民法534条1項。当該規定の合理性には批判が強く、特約で排除されている場合が多いです)。

  また、⑤契約の履行が遅滞した場合でも、債務者による債務不履行の存在が契約解除の要件とされているとともに(現行民法541条)、⑥契約の履行が不能な場合も、債務者による債務不履行が契約解除の前提とされます(現行民法543条。ただし、上記③の適用場面)。

 

2.改正民法施行(本年4月1日)以降の契約について

 上記①の点に関し、改正民法415条では、「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び社会通念に照らして」と、帰責事由の判断基準が明文化されました。②の点については変更はありません。なお、債務不履行の要件・効果に関しいろいろ改正はありますが、本テーマからは外れるため、割愛します。

 次に、上記③の点に関し、改正民法536条1項では、反対債務(例:売買契約における代金債務)が当然消滅するのではなく、「反対給付の履行を拒むことができる。」としており、履行を拒絶できるものの、債務の消滅には後述する契約解除の意思表示が必要となります。併せて、④現行民法534条1項は合理性を欠くとして削除され、特定物売買についても改正後は民法536条1項が適用されます。

 また、契約解除に関し、債務不履行に対する制裁という現行法の趣旨から、改正法では契約の拘束力からの解放という趣旨に改めたため、⑤履行遅滞解除に関し、債務者の帰責事由は不要となり、相当期間を定めた催告をしても履行がなされない場合は解除可能となります(改正民法541条本文)。ただし、「その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は解除権は発生しないとされ(同条但書)、現行の判例法理が明文化されています。

 そして、⑥改正民法では無催告解除ができる場合も明文化しており、本テーマに関しては、ア(a)「債務の全部の履行が不能であるとき」(改正民法542条1項1号)、(b)「債務の一部の履行が不能である場合(中略)において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき」(同項3号)、(c)「契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき」(同項4号)、(e)「前各号に掲げる場合の他、債務者がその履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」(同項5号)には、契約の全部を、イ「債務の一部の履行が不能であるとき」(同条2項1号)は契約の一部を、催告なくして直ちに解除できると定めています。

 ただし、⑦債務の不履行が、債権者の責めに帰するべき事由によるときは、催告解除・無催告解除いずれも、債権者が権利として行使することはできず(改正民法543条)、現行法の解釈の明文化とされます。当事者双方の合意により解除することは妨げられません。

 なお、仮に解除を主張する側からみて無催告解除事由が存すると解される場合でも、無催告解除要件該当性が問題となる可能性がありますので、念のため催告を行なうとともに、できれば相手方と協議の上での合意解除とした方が、紛争回避という観点からは無難でしょう。

 

3.民法改正に伴う経過措置について

 改正民法の適用については経過措置が定められており、①債務不履行の成否に関し、「施行前に債務が生じた場合(施行日以後に債務が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされた時を含む)」における債務不履行の責任等については、なお従前の例によるとされます(附則17条1項)。したがって、本年3月31日までに締結された契約に関しては、特約がない限り、現行法が適用されます。

 また、③④施行日前に締結された契約に関する危険負担については、特約のない限り、現行法が適用されます(附則30条1項)。

 そして、⑤⑥施行日前に締結された契約の解除についても、特約のない限り、現行法が適用されます(附則32条1項)。

 

小川 智史 弁護士

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