弁護士コラム

緊急事態宣言による休業と労働者の休業手当について

[投稿日] 2020年04月09日 [最終更新日] 2020年04月12日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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新型コロナウィルス感染拡大により、新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、「特措法」といいます。)に基づき、本年4月7日に政府から緊急事態宣言が出され、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・大阪府・兵庫県・福岡県がまず対象となりました。5月6日まで宣言対象となる予定であり、対象都府県内の事業者に対する都府県知事からの営業自粛要請が準備されています(本年4月9日時点)。

私も、現時点では完全に休業というわけにもいきませんが、出勤日・時間帯を大幅に削減しております(*新規のご相談は、原則受付を中止しております)。

上記緊急事態宣言に関しては、様々な法的問題が生じますが、今回は、事業者が休業した場合における労働者への賃金ないし休業手当支払義務について検討したいと思います。

 

1 休業手当支払義務に関する一般的解釈

(1) 使用者が事業を休業した場合に関し、①労働基準法26条では、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合において、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定めています。もっとも、②双方責めに帰すべき事由によらない休業の場合は、ノーワーク・ノーペイの原則により、賃金の支払いを拒絶できるとされます(民法536条1項)。

(2) 労働基準法26条の解釈に関し、労働者のストライキにより、使用者(航空会社)が休業となった際、労働者が休業手当を請求した事案において、同条は「使用者の負担において労働者の生活を右の限度(*60%、筆者注)で保障しようとする趣旨」としたうえで、同条の「使用者の責めに帰すべき事由」とは、「使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む」とされます(最判昭和62年7月17日)。その上で、当該事案においては、ストライキに参加しなかった労働者を含め、労働基準法26条は適用されず、労働者からの賃金や休業手当の請求は認められないとしています。

 

2 緊急事態宣言による休業に関する厚生労働省の見解

 新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から休業する事業者が少なくないと思われますが、労働基準法26条の適用に関し、本年4月9日時点で公表されている厚生労働省または厚生労働大臣の見解は以下の通りとなります。

(1) まず、緊急事態宣言対象外地域を含む全国的な休業に関し、厚生労働省HP「新型コロナウィルスに関するQ&A(企業の方向け)」(4月6日版)における4の問1では、注意事項として、

<※不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。>

としています。

(2) そして、緊急事態宣言対象地域における休業に関し、4月7日の加藤厚生労働大臣会見では、上記(1)②の点に関し、「事業主が通常の経営者として最大限の注意を尽くしてもなお避けることができない事態、そしてそういった意味においては、例えば自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能かどうか、あるいは労働者に他に就かせることの業務が当該企業あるいは事業主にあるのかどうか、こういったことも含めて、総合的に判断をする必要があるということであります。従って、宣言がなされ、個々の施設の使用自粛がなされたからといって、直ちに一律に休業手当を支払わなくても良いということにはならないということであります。」と述べています(厚生労働省HPより)。

(3) なお、上記は本年4月9日時点の情報であり、上記加藤大臣の会見においても、「今般の非常事態宣言、またその中で施設の使用自粛等がなされていること等を想定して、Q&Aを直ちに作って皆さんにお示しをさせていただきたいという風に考えています。」と述べており(同上)、今後厚生労働省からより具体的な見解が示される可能性があります。

 

3 まとめ

 上記厚生労働省の見解を前提とした場合、まずは使用者側においてできるだけ労働者を業務に従事させることができないか務める必要があり(そのような対応が困難な場合も少なくないかもしれませんが)、免責の可否は個々の事案によることとなります。

*上記厚生労働省Q&Aは4月10日更新され、4の問7において、緊急事態宣言や要請による場合は、上記(1)①外部起因性の要件には該当するとされています。なお、同Q&Aの3では雇用調整助成金(休業手当、賃金等に関する助成)の特例措置に関する記載がなされています。

 労使間で合意ができればよいのですが、見解が相違して訴訟等の法的手続に移行した場合は裁判所の判断となり、法的判断としても微妙であるため、場合によっては最高裁まで紛争が継続する可能性があります。

 そのため、紛争防止という観点からは、労働組合がある場合は労働組合と、ない場合は個々の労働者と十分に協議の上、できる限り合意を得るように努めることが望ましいと思われます。

小川 智史 弁護士

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