FX取引を巡る法律問題(④分別管理)
[投稿日] 2021年01月28日 [最終更新日] 2021年01月28日分別管理体制は、FX取引業者が最初に直面した重大な問題でした。
有価証券関連デリバティブ取引については、金融商品取引法43条の2第2項及び金融商品取引業者等に関する内閣府令141条1項により顧客を元本の受益者とする「顧客分別金信託契約」が義務付けられていました。
しかしながら、その他のデリバティブ取引(金融先物取引)は、金融商品取引法43条の3第1項及び金融商品取引業者等に関する内閣府令143条1項により、信託銀行等への金銭の信託以外に、銀行等への預金又は貯金、カバー取引相手方への預託、媒介等相手方への預託が認められていました。
これに起因する被害が平成19年末頃に立て続けに生じました。
関東財務局は、FX取引業者に対し、証拠金等を自己の資産と区分して管理していないなどとして、6か月の業務停止命令の行政処分をしました。しかし、このとき既に同社は20億円以上の預り証拠金を流用した上、自己破産を申し立てていました。
流用の方法は、関連会社名義で取引を行うに際して証拠金の預託を受けず、その取引のために要するカバー取引の証拠金を他の顧客からの預り金を充てたというものです。
なお、この事案については、東京地方裁判所平成22年4月19日判決・判例タイムズ1335号189頁は、証拠金の流用を防止すべき注意義務を怠ったとして、FX取引業者及び関連会社の役員らに対し、被害者の未返還証拠金相当損害金等の損害賠償を命じています。
店頭FX取引については、金融商品取引法により不招請勧誘が禁止されています。
顧客の誘因は一般的な広告によることになります。
インターネット取引で行われることが多く、インターネット上のバナー広告が目立ちます。
バナー広告を収益源とする「アフィリエイト」を副業収入にしようとする者らに広告が委託されることもあるようです。
「勝率100%」という虚偽記載をした「情報商材」を流布し、顧客誘引を行おうとする者の存在が問題となった事例があります。
このような広告が違法であることは明らかであり、これを集客の手段として利用する取引業者は、そのような広告を知りながら放置していた場合など、関与の態様によってはその責任を問われることになります。
東京地方裁判所平成20年10月16日判決・消費者法ニュース78号199頁)は、FX業者が直接に開設したホームページ等においてではなく、顧客誘引の委託先が行った顧客誘引活動についても、関与の態様によっては取引業者の顧客獲得行為の問題となる場合があることを示し、取引による損害の賠償を命じたものです。情報商材頒布業者は、FX取引で「100%の勝率」などということはあり得ないのに、誤った情報を提供して顧客に取引をさせたのだから不法行為責任を負い、FX取引業者は、上記を顧客獲得の手段としていたのだからFXに関する誤った理解をして、口座開設を申し込む者がある可能性を認識していたはずであり、そうでなくとも認識すべきであり、それを前提に適合性審査をするべきであるのにそれをせずに取引を開始させたのであり、この顧客獲得行為自体が違法であると判示し、取引業者における適合性審査のずさんさも指摘して損害賠償請求を認める判断をしました。
アフィリエイトを行おうとする側はより目を引く方法で一般のインターネット閲覧者の注意を集めたいでしょうし、FX取引業者側も、多少強引な経路をたどってきた者であっても口座を開設してもらいたいという動機が生じることはやはり否定しがたいところであるでしょう。
以 上
山田 大護 弁護士
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山田 大護 弁護士 (弁護士法人琴平綜合法律事務所)
【虎ノ門駅徒歩1分】金融・証券の事業会社勤務経験がございます。特に金融法務に関して是非ご相談ください。