認知

未婚でママになる人には必須の知識!その後を左右する認知の効力
子どもができたのに相手の男性が責任をとってくれない場合、あるいは、あえて事実婚を選択した場合など、未婚でママになるケースはいくつか考えられます。
結婚はしないけれど、相手の男性が子どもの父親であることに変わりはないのだから、子どもに対する責任は果たしてほしい。そんなときに、考えなければならないのが「認知」の問題です。
法律上「親子」になるために必要
認知とは、結婚していない父親が生まれた子を自分の子であると認める意思の表明です(民法779条)。
法律上の夫婦の場合、妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定されます(民法772条、嫡出推定)。
これに対し、未婚の女性が妊娠した場合、当然に相手の男性の子と推定されるわけではありません。男性との父子関係を発生させるには、認知が必要なのです。
なお、父子関係とは異なり、「母子関係は原則として母の認知を待たず、分娩の事実により当然発生する」(最判昭37.4.27)とされています。
民法779条には、母も子を認知することができると規定されていますが、母の認知が必要な場合は、母が周囲に気付かれることなく出産し、棄児(捨て子)にした場合のように、分娩の事実が明らかでない限定的な場合に限られるといわれています。
認知をするには、父または母が未成年者または成年被後見人であっても、その法定代理人の同意を要しません(民法780条)。
また、認知される子の同意は原則として不要ですが、成年の子は、その承諾がなければ認知することができません(民法782条)。これは、扶養目的など身勝手な動機での認知を防ぐためだといわれています。
父は、胎内にある子でも、母の承諾を得て認知することができます(民法783条1項)。また、子が死亡した場合、その直系卑属があるときに限り、認知をすることができます(同2項)。
認知の効果
認知をすると、子が生まれたときから認知した父との間に法律上の親子関係があったものとして扱われます(民法784条)。
ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできません(同条ただし書)。
法律上の親子関係が生じることにより、様々な権利義務が発生します。
例えば、父が死亡した場合、子は相続人となり(民法887条)、逆に子が死亡した場合は、父が子の相続人となり得ます(民法889条)。不法行為による死亡の場合は、近親者の慰謝料請求権が認められます(民法711条)。
また、父は子を扶養する義務を負います(民法877条)ので、父に養育費の請求をすることができます。具体的な金額や支払時期については、父母で話し合い、その内容は書面に記載しておくとよいでしょう。
父が養育費の支払いを怠るようなことがあれば、裁判を起こすこともできます。
ただし、未成年の子に対する父の親権は、当然には生じません。特に届出をした場合でない限り、子の親権者は母になります(民法819条4項)。
認知の手続きと戸籍について認知の届出
認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってすることができます(民法781条1項)。
届出をしてはじめて、認知の効力が生じます。いくら父母間で「子どもを実子と認めます」という合意ができていたとしても、それは認知の効力をもちません。
届出先は、認知される子または認知する父の本籍地あるいは届出人の所在地の市区町村役場です。ただし、胎児を認知する場合の届出先は、胎児の母の本籍地です。
また、認知は遺言によってすることもできます(同2項)。
この場合、遺言書に(1)子の母親を明記し、(2)認知する子の住所・氏名・生年月日・本籍・戸籍の筆頭者を記載し、(3)遺言執行者を指定します。認知届は、遺言執行者が提出します。
戸籍の記載
認知をしても、子は父の戸籍に入るわけではなく、また、父の氏を名乗るわけではありません。子は、母の戸籍に入り、母の氏を名乗ります。
母がその父また母の戸籍に入っている場合は、分籍して母が筆頭者の戸籍が新たに作られ、その戸籍に母と子が入ります。
認知されない間は、子の「父」の欄は空欄になっています。
認知をした、あるいはされたということは、父と子の「身分事項欄」に記載されます。身分事項欄とは、戸籍に書かれている人の身分関係(出生、養子縁組、婚姻、離婚、死亡など)の移り変わりを記録する欄です。
例えば、甲野太郎(父)が乙野二郎(子)を認知した場合、甲野(父)の身分事項欄には、「【認知日】平成○年○月○日【認知した子の氏名】乙野二郎【認知した子の戸籍】乙野さんの母親の本籍地と氏名」と記載されます。
一方、乙野(子)の身分事項欄には、「【認知日】平成○年○月○日【認知者の氏名】甲野太郎【認知者の戸籍】甲野さんの本籍地と氏名」と記載されます。
男性が生まれた子どもを認知してくれないときは、子からの請求により裁判によってなされる強制認知(民法787条)、家庭裁判所の調停で認知の合意が成立し審判によってなされる審判認知(家事事件手続法277条)のいずれかの方法をとることができます。
審判認知
審判認知を起こすには、相手方(男性)の住所地を管轄する家庭裁判所に、認知調停申立書(申立書の書式は、家庭裁判所のサイトからダウンロードすることができます。)を提出します。
申立人は子、相手方は父です。子が未成年の場合は、母が法定代理人親権者として申立てます。
添付書類は、子の戸籍謄本、相手方の戸籍謄本です。申立費用として収入印紙1,200円と、通信用の郵便切手(裁判所ごとに異なるため、事前に問い合わせをしましょう)が必要です。
この調停において、当事者間で子どもが父の子であるという合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます。
審判認知は、当事者間の合意が要件です。父がどうしても認知に同意しない場合や、父が既に死亡していて同意を得ることができない場合などは、次の強制認知による他ありません。
強制認知
子、その直系卑属またはこれらの法定代理人は、父を被告として認知の訴えを提起することができます。訴訟という手段により、父の同意がなくても、強制的に親子関係を確定させることができるのです。
父が死亡している場合は、その死亡の日から三年以内に認知の訴えを提起しなければなりません。この場合は、検察官が被告となります。
認知の訴えにおいては、生物学上の父子関係の存在を証明しなければなりません。
証明の方法としては、DNA鑑定を行うことが一般的ですが、相手の協力が得られない場合は、母の陳述書や第三者の証言などによって証明を試みることになります。
なお、訴えを提起して認知が認められた場合でも、市町村役場への届出は必要です。認知を認める判決が確定したときは、訴えを提起した人は、その確定の日から十日以内に、判決の謄本を添付して届出をしなければなりません(戸籍法63条1項)。訴えを提起した者が届出をしないときは、相手方が届出をすることができます(戸籍法63条2項)。
認知を取り消す場合認知をした父または母は、その認知を取り消すことはできません(民法785条)。これは、認知により発生した親子関係を取り消すと、子の立場が不安定になるため、子の利益に配慮した規定だと考えられています。
しかし、生物学上の親子関係がないのに、いったん認知されればそれを絶対に覆すことはできないというのも不合理です。そこで、子やその他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができると定められています(民法786条)。
この「利害関係人」には、認知をした父も含まれ、父が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合でも、訴えにより認知の無効確認を請求することができるというのが最近の判例です(最判平26.1.14)。
まとめ子育ては夫婦二人でも大変ですから、未婚のママの大変さは容易に想像できます。
生まれてきた子どもを不幸にしないためには、父親である男性にも養育費を負担してもらうべきですが、そもそも法律上の親子関係がなければ、何を言っても始まりません。
まずは認知から、ということをしっかりと理解しておきましょう。
認知を得意としている弁護士
土屋 健志 弁護士 神奈川県
川崎つばさ法律事務所奥野 伸二郎 弁護士 東京都
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