面会交流

面会交流の取り決めは具体的に。約束厳守の対策も抜かりなく!
離婚をすれば、夫婦の一方は自分の子どもと離れて暮らすことになります。子どもと頻繁に会って話したいという思いも募るでしょう。
しかし子どもと暮らす親の方は、子どもを取られるかもしれないと疑心暗鬼になりがちです。面会を拒絶されて、大いに悩むこともあるでしょう。
今回はこうした面会交流について知りたい、トラブルの対処方法や予防方法を知りたいという方のために、役立つ知識を解説しています。
面会交流とは
面会交流とは、離婚や別居などが理由で子どもと離れて暮らす親が、子どもと面会を行うことをいいます。直接に会って話をするだけではなく、電話や手紙のやりとりをして交流することも含まれます。
夫婦はさまざまな事情やいきさつが原因で離婚をし、離婚後は全くの他人になります。
しかし子どもとは、実の親子という関係が途切れることはありません。子どもに愛情を注ぐ親ならば、親子の交流を絶やさずに成長を見守りたいと思い、面会を希望するのは当然の感情でしょう。
また何より、面会交流は子どもにとって重要な意味を持ちます。
夫婦の離婚が致し方なかったとしても、子どもが親の離婚や対立を間近で見ていれば、心に不安を抱えたり、離婚に罪悪感をもってしまいがちです。実の親と会えない寂しさも募らせるでしょう。
子どもを安心させ、心身を健全に成長させるためには、面会交流を定期的に行うことがどうしても必要です。
面会交流を子どもの利益のために行うという姿勢は、法律にも明記されています。
かつての民法には、面会交流についての定めがありませんでしたが、2011年の改正で明記されました。
父母が離婚をする際には、親権者や養育費の分担だけでなく、面会交流などの子の監護に必要な事項を決めるときに「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(民法766条1項)と定められています。
ですから、面会交流は親の権利というだけでなく、子どものための権利であるとも言えます。
どれほど離婚の時に対立しても、父母が子どもの利益を何より優先し、面会交流を円満に行うように協力することが大切です。
もちろん、子どもへの虐待があったなどの極端な場合は別として、子どもを監護する親はさしたる理由もなしに拒絶することはできません。
もしも拒絶されて困ったときは、面会交流が子どもの権利でもあると説明し、理解を得るように試みてみましょう。
面会交流のルールは具体的に決めておこう
面会交流は、いつでも無制限に会わせて欲しいなどと、無理な提案をしても、応じてもらえないでしょう。相手に警戒されてトラブルに発展しかねません。
子どもの健康や成長にとって有益になるように、面会交流はこの先何年も続けていく必要があります。円満に続けるためには、父母が話し合い、お互い納得できるようなルールをあらかじめ取り決め、守っていく必要があります。
面会交流の取り決めをするには
では、父母の間でどのようなルールを決めれば良いでしょうか。
面会交流を実施するには、子どもの健全な成長がはかれるような配慮が必要です。年齢や性格、新しい生活環境などを考慮し、子ども本人の希望などを聞きながら、過剰な負担をかけないような方法を選ぶべきでしょう。
具体的には、面会交流の日時や頻度、面会時間の長さ、子どもの引き渡し方法、面会の方法(同席者の有無など)について、あらかじめ決めておきます。
面会の時点では、子どもの意向や健康状態などを考慮しながら実施をしていく必要があります。
また、面会交流にあたっての連絡や相談方法、子どもに直接連絡をしても良いか、という点についても、決めておいた方が良いでしょう。
子どもと二人きりになることについて、相手が非常に警戒する場合は、第三者の立会を条件にする方法もあります。
弁護士やNPO、相談機関の手助けも受けられるので、状況に応じてふさわしい方法を選びましょう。
話し合いがまとまらないときにとるべき方法
面会交流のルールをいくら話し合っても、相手が頑なだったり、条件が合わずに合意できない事態も考えられます。その時は、家庭裁判所に調停を申立てて話し合いを続けることが可能です(子の監護に関する処分(面会交流)調停)。
調停が不成立になれば自動的に審判手続が開始され、子どもの健全な成長に配慮をしながら、裁判官が審判によって面会交流の是非、条件などを判断します。
申し立てるのは、相手方の住所地又は事前に合意をした場所の家庭裁判所です。
なお、離婚前の別居中でも申立は可能です。離婚の話し合いも併せて行う場合は、通常の離婚調停を申し立てて、面会交流の条件などを決めていきます。
決めた内容が守られるためにしておくべきこと面会交流の方法が決まれば、お互い誠実に守らなければなりません。しかし離婚の時の感情的な対立が激しかったときは、将来面会を拒絶される可能性があります。
こうしたとき、相手に取り決めの内容を守らせるにはどうすれば良いでしょうか。
取り決め内容は公正証書に
子どもと同居する親が面会を強く拒絶すれば、子どもは遠慮をして面会したいと口にできないかもしれません。しかし面会を巡って父母が激しく争えば、子どもが心に深い傷を負ってしまいます。将来面会を拒絶されたり、感情的になって非難し合う事態はできるだけ避けたいものです。
そのためには、相手が自主的に約束を履行するように促すことが重要です。
調停離婚や裁判離婚の際に面会交流の取り決めをしていれば、調停調書や判決書などの法的効力のある書類が作成されます。そのプレッシャーによって相手が約束を守るように促すことができます。
しかし協議離婚の場合や、調停の時に面会交流の話し合いを先送りにするなど、裁判所を利用しなかったときは、自ら書類を作成しない限り取り決め内容が証拠に残りません。
後日のトラブルに備えて、単なる口約束にせず、正式な公正証書を作成しておきましょう。
様々な備えをしても、何かと理由をつけて相手が約束を守らない事態も起こります。実際に面会を拒絶されたときには、(1)履行勧告、(2)強制執行、(3)慰謝料請求、(4)親権者の変更、などの解決方法が考えられます。
(1)履行勧告について
履行勧告とは、調停や審判で決まったことを相手が守らないときに、家庭裁判所から口頭や書類によって守るように促してもらう手続です。
調停などを行った家庭裁判所に電話で申し込むこともでき、費用も特にかかりません。ただし、裁判所は相手を指導するだけで、手続に強制力はありません。
まずは相手の出方を見たいときに、履行勧告を行った上で説得をすると良いでしょう。
(2)強制執行について
相手が非常に頑なだったり、履行勧告にも従わないときは、強制執行の申立を行う方法があります。
強制執行とは、裁判所の力によって強制的に請求内容を実現する手続をいいます。
ただ面会交流の場合は、執行官がむりやり子どもを連れて来るような直接的な方法(直接強制)は行われません。通常は間接強制という方法で強制執行をいます。
間接強制とは、一定の金銭の支払いを命じて心理的に圧迫することにより、義務を行うよう促す方法です。
面会交流の間接強制を行うには、家庭裁判所に申立てを行います。実際の裁判では面会を1回拒否すると3万円から5万円の支払を命じる場合が多いようです。何度も拒否をすればその都度金額が膨らむので、非常に強い効果があります。
ただ間接強制は強制力が強いので、一定の場合にしか認められません。
裁判所の判例では、面会交流の日時又は頻度、各回の面会時間の長さ、子の引き渡しの方法等が具体的に決められて、相手の義務内容が特定されている場合に、間接強制を行えると判断しています(最高裁平成25年3月28日決定)。
つまり取り決めの内容が調停調書や審判書などで具体的に記載されていなければなりません。調停のときには、間接強制が可能になるくらい具体的かどうかを確認しておく必要があるでしょう。
(3)慰謝料請求について
子どもが拒否しているなどの特別な理由もなく、相手が一方的に面会を拒否したときは、慰謝料を請求することも可能です。
通常の裁判と同じく、地方裁判所に訴訟を提起します。
(4)親権者の変更
子どもが面会を希望するのに相手が面会を拒絶したなど、子どもの意思を無視されていては、健やかな成長が望めません。他にも親権者としての資質に疑念が生じることがあれば、子どもを取り戻すことを考える必要があります。
具体的には家庭裁判所で次のいずれかの手続を行い、自分が子どもと暮らしたり、相手の親権を制限して、子どもとの関わりを強めることができます。
- 親権者変更調停の申立:親権を自分に変更する手続
- 親権喪失・停止の審判申立:相手の親権を制限する手続
- 子の監護者の指定調停の申立:自分が監護者として子どもと暮らす手続
子どもの置かれた状況をよく考えながら、ふさわしい手続を選ぶ必要があります。
まとめ以上のように、子どもとの面会交流を支障なく行うには、さまざまな方法があります。
しかし法的手段に訴える段階になると、父母は対立が激しくなるあまり、ついつい子どもへの配慮を忘れがちになります。
面会交流は子どもの権利でもあるので、健全な成長にとって必要です。しかし実の父母が感情的な応酬を繰り返していれば、かえって子どもの心を深く傷つけかねません。
法的手段が子どもにとって必要な争いだとしても、面会交流が子どもの成長のために必要であることを忘れずに、冷静な対処に努めるように注意していただきたいと思います。
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