不倫・不貞・浮気

不倫や浮気、不貞行為は法律でどんな扱い?弁護士に相談するポイント
不倫や浮気、不貞行為は、法律でどんな扱い?弁護士に相談するポイント
男女の間で最も問題になりやすいのは、パートナー以外と深い関係になってしまう、不倫や浮気です。
今も昔も、こうした悩みは尽きることがありません。
浮気を発見したら、「ただ文句を言うだけでなく、法律にのっとってしっかりと対応したい!」という方も多いでしょう。
また一方で「浮気がパートナーに発覚してしまった!法的な責任は発生するの?」など、浮気をしてしまって、法的にどんな措置を受けるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
不倫や浮気で怖いのは、離婚や慰謝料など、法律とお金の問題が絡んでくることです。
ここでは、不倫をした人とされた人が、それぞれ法律上はどんな扱いになるのか説明をしていきます。
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「パートナーがいるのに、他の異性と親密になること」を浮気や不倫、不貞などと呼びます。
似たような意味のようですが、それぞれどのように異なるのでしょうか?
“不倫"とは、もともとは“人の道に外れた"という意味ですが、今ではもっぱら配偶者でない者と男女の関係になるという意味で使われます。
“浮気"は、一人の異性から他の異性に目移りして親密になることです。似たような意味合いですが、浮気は結婚しているかいないかに関わらず使う言葉で、不倫は結婚している場合に使う言葉といえます。
ただし、浮気に関しては、「気」という言葉が入っているとおり、気持ちの問題という側面も多く、より広い意味合いで使われているように見受けられます。
「キスから浮気」という人もいれば、「二人きりで食事に行ったら浮気」と考える人もいますし、「少しでも気持ちが動いたら」という人もいます。
具体的な定義はないため、どこからが浮気で、どこからが浮気ではないかは人によります。
さて、「不倫」「浮気」について説明しましたが、これらの2つは、法律用語ではありません。
そのため、法的な視点ではあまり関係がない概念だと言えます。
それに対して“不貞行為"は法律用語となり、法的に争うときに重要な言葉となります。
1-1 不貞行為とは
最高裁によると、不貞行為とは、「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいいます(最高裁昭和41年11月15日判決)。
ごくごく簡単に言ってしまうと、
①婚姻関係にある人が
②夫・妻以外と性的関係を持つこと」です。
つまり、原則として婚姻している場合に限りますし、実際に性交渉その他の性的関係に至っている必要があります。
夫婦の一方がこの不貞行為を行った場合、もう一方はこれを理由に離婚を求めることができます(民法770条1項1号)。
1-2 どこからが不貞行為?
最高裁の基準によれば、「配偶者以外と性的関係を結ぶこと」が不貞行為になりますが、“性的関係"とはどういった行為なのでしょうか。
過去の裁判例では「男女間の性交渉又は性交渉に類似する行為」が性的関係と位置付けられています。
「性交渉に類似する行為」は、口腔性交などがこれに類するとされます。
なおキスや体を触る行為だけでは、必ずしも「性交渉に類似する行為」に当たるとは言えず、不貞行為には該当しないとされることが多いようです。
また「男女間の」とありますが、同性間の性行為は不貞行為に当たらないのでしょうか。
これについては法律上、明確な定義がないので不貞行為に当たらないとは限りません。
20代から60代の結婚相手・交際相手がいる人を対象にした「その相手以外にセックスをする方はいますか?」という相模ゴム工業株式会社が行ったアンケート調査があります。
これによると、「いない」が78.7%、「特定の相手が1名いる」が15.8%、「複数の相手がいる」が2.2%、「特定ではないが、結婚相手・交際相手以外ともセックスをしている」が3.4%という結果になっています。
つまり、20代~60代の男女の5分の1以上が、不倫・浮気をしているということになります。
不倫・浮気の問題に巻き込まれる可能性は、決して低くないといえるでしょう。
配偶者やパートナーに不倫・浮気された場合、何も言わずに黙ってはいられないという方が多いのではないでしょうか。
ガツンと一言うだけではなく、法的に何らかの請求をしたいと考える方も少なくないでしょう。
ただ、法的に何らかの請求をする場合は、法律にその根拠がなければなりません。
不倫に対してとれる法的手段と、その根拠をチェックしておきましょう。
3-1 不倫・浮気そのものは法律上定義されていない
先にも述べましたが、不倫や浮気という言葉は、法律上の用語ではありません。
法律上の用語としては、“不貞行為"という用語があり、これは判例上、「配偶者がいるにもかかわらず、自由意思のもと、配偶者以外の異性と性的関係を持つこと」と定義されています。
3-2 不貞行為は離婚事由になる
離婚は、お互いの同意があれば、理由はなくても成立します。
しかし一方だけが離婚をしたいと訴えても、もう一方が離婚に同意しない場合はどうでしょうか。
この場合は、裁判所の判決で離婚を成立させることができます。
ただしその際には法律で決められた“離婚事由"が必要になります。
配偶者以外と性的関係を持つ“不貞行為"は、この離婚事由の一つとして定められています。
民法770条1項
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
(以下略)
つまり、配偶者に不貞行為があれば、その配偶者が拒否をしても離婚することができるのです。
もっとも、“不貞行為"に当たらなくても、離婚事由に該当する可能性がないわけではありません。
法律で定められている離婚事由には“その他婚姻を継続しがたい重大な事由"という項目もあります。
民法770条1項
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
(略)
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
“その他婚姻を継続しがたい重大な事由"とは、夫婦関係を修復することが不可能な状態をいいます。
これまで裁判で「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」と認められたものには、暴行・虐待、重大な侮辱、性的不能、性的異常、不労・浪費、宗教活動などがあります。
配偶者と不倫相手との間に性的関係が認められず「不貞行為」に当たらなくても、不倫によって夫婦関係を修復することが不可能な状態になっている場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるといえるので、法律上の離婚事由になる可能性はあります。
3-3 慰謝料(損害賠償)を請求できる不倫・浮気に対して行える法的な手段としては、「慰謝料の請求」があります。
本人に責められるべき事由があって、他人の権利・利益を侵害した人は、それによって生じた損害を賠償する責任を負います。
これを“不法行為責任"と言い、民法に次の規定があります。
(不法行為による損害賠償)
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
夫婦は、お互いに貞操の義務を負います。
つまり、配偶者に対して、貞操義務を守るように要求することもできると考えられます。
不貞行為によって、「配偶者に貞操義務を守るように要求することができる利益」が侵害されるため、不貞行為の相手は、不貞行為によって生じた損害を賠償する責任を負うと言われています。(諸説あります)
「損害」というと物が壊れる、というようなイメージがありますが、損害を受けるのは、形のあるものだけではありません。
他人の違法な行為によって精神的ダメージを受けることもあります。この場合も、その損害を賠償する責任が生じます。
(財産以外の損害の賠償)
第710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
ポイントは、「財産以外の損害」というところです。
つまり、不貞行為により、精神的な苦痛を受けた場合も損害賠償を請求することができるのです。
この精神的な苦痛に対する損害賠償のことを、一般的に「慰謝料」と呼びます。
不貞行為をされた人は、その行為によって、精神的なダメージを受けています。
そのため、「不倫・浮気をした配偶者」に対して、慰謝料を請求することができます。
また、「配偶者の不貞行為の相手」も、その行為によって婚姻共同生活の平和を乱し、精神的ダメージを与えています。
不倫・浮気をされた人は、「配偶者」だけでなく「不倫相手」の双方に対して、慰謝料を請求することができるのです。
3-3-2 慰謝料請求の注意点相手が不倫・浮気をしていたとしても、実はそれ以前から別の理由で関係が悪化していて、既に何年も別居状態だったというように、婚姻関係が破たんしていた場合があります。
このように、不倫・浮気の前から、男女の関係が実質的に破たんしていた場合は、相手が不倫・浮気を行ったとしても、慰謝料請求が認められない可能性があります。
婚姻(入籍)している夫婦の場合、不倫・浮気をした相手に対して、慰謝料を請求することができるのは当然です。
では婚姻していない場合はどうでしょうか。
婚姻はしていないものの、事実上夫婦として生活している「内縁関係」の場合は、慰謝料の請求ができます。
また正式に婚約をしている婚約者の間柄でも、慰謝料の請求ができる可能性もあります。
しかしただ単に「同棲している」「付き合っている」というだけの場合は、特別な理由がない限り、慰謝料の請求は難しいと言えるでしょう。
3-3-4 相手方に慰謝料を請求する場合の注意点「不倫相手」に対しても慰謝料を請求できると書きましたが、不貞行為があれば必ず相手方に慰謝料が請求できるわけではありません。
民法709条は「故意又は過失」によって他人の権利を侵害した場合に、損害賠償責任を負うとしています。
つまり、不倫になることを「知らなかった」場合や「知れる状況になかった」など、落ち度がなければ「故意又は過失」はないといえるため、損害賠償責任は生じません。
例えば、配偶者が既婚者であることを隠して不貞相手に近づき、不貞相手がそれを信じたとしても無理はないというような状況などです。
- 慰謝料について詳しくはこちら
不倫・浮気をした相手に対して法的手段を執りたい場合に、準備すべきことは何でしょうか。
4-1 証拠を集める
慰謝料請求の交渉で不貞行為があったことを主張したとしても、相手が認めなければ、話は平行線をたどるばかりです。
また、裁判を起こすにしても、「確かに不貞行為があった」と裁判官に認めてもらうだけの根拠がなければなりません。
つまり、慰謝料を請求する場合、不貞行為が存在したことを証明できる「証拠」を押さえておくことが非常に重要です。
不貞行為の証拠の例としては、次のようなものがあります。
- 配偶者と浮気相手が一緒にホテルに入るところを撮影した写真やビデオ
- ホテルの領収書や、クレジットカードの明細
- 性的関係をうかがわせるようなメール、手紙
- 配偶者の言動を書き留めたメモ
- 配偶者や浮気相手の行動に関する第三者の証言
ただし、証言やメモ書きなどは、証拠によって不貞行為があったと推認する力(証拠力とか証明力といいます。)がやや弱い部分があります。
写真やホテルの領収書などのほうが、証拠としての価値が高いといえます。
4-2 どうしたいのか、冷静に考える
不倫・浮気に気づいた当初は頭に血が上っていて、冷静になれないものですが、少し時間をおいてみることも大切です。
感情的になってすぐに言い争ってしまっては関係が悪化するばかりですし、証拠集めの妨げになることさえあります。
また、子どもの問題、住む家やお金の問題など、感情に振り回されて決めてしまっては後悔しそうな問題もあります。
誰かに相談するのもいいでしょうが、離婚するかどうかは、基本的に自分自身が決めることです。
どうしたいのか、どうすべきなのか、自分の気持ちや現在の状況と冷静に向き合ってみることが大事です。
法的手段を取りたい時、または相手が法的手段に訴えてきそうな時、頼りになるのが弁護士です。
不倫や浮気をされた側、してしまった側、それぞれどんな場合に弁護士に依頼すべきなのでしょうか。
依頼した場合のメリットをチェックしておきましょう。
5-1 不倫や浮気をされた側が弁護士に依頼する場合
不倫や浮気をされた側としては、“離婚"、“慰謝料"の請求を考えたいところでしょう。
また、離婚に伴っては、子どもの問題(親権、離婚後の養育、面会交流)や、お金の問題(財産分与、養育費、年金分割)なども生じます。
相手が離婚に応じてくれない場合は、調停や裁判の手続きを考えなくてはなりません。
これらの問題をもれなく解決するためには、まず弁護士に相談し、アドバイスを受けるのがよいでしょう。
また、お金が絡む問題では、より多くの金額を、確実に請求したいと考えるのであれば、弁護士に依頼するべきです。
より確実な方法を指南してくれる可能性があります。
5-2 不倫や浮気をしてしまった側が弁護士に依頼する場合
不倫や浮気をしてしまった側は、離婚や金銭の支払いなど、相手から何かを請求される立場になります。
相手の言い分に納得のいかない点があるかもしれませんが、ひとまず冷静になり、真摯に対応することが必要です。
ただし、当事者同士でやり取りをすると、つい感情的になってしまい話し合いがうまくいかないことがあります。
そんな時は、弁護士に間に入ってもらうのがよいでしょう。また、相手が既に弁護士を立てて何らかの請求をしてきたのなら、こちらも弁護士を立てることを検討するのがよいでしょう。
弁護士に相談すると、まずこれまでの経緯を丁寧に聞き取った上で、アドバイスをしてくれます。
そして、依頼者の意向を踏まえて、今後とるべき方針を示してもらえます。
弁護士は依頼者の代理人として、相手方との交渉に当たったり、調停や訴訟を行ったりします。相手方や裁判所とのやり取りは、基本的に代理人である弁護士がやってくれますので、時間的にも精神的にも負担が軽減できます。※ただし、調停については本人が出頭する必要があります。
また手続きには戸籍謄本などいろいろな書類が必要になることがありますが、弁護士の指示通りに進めるだけでよくなるので、負担はかなり軽減されるはずです。
弁護士側で対応が可能な書類については準備してもらうこともできます。
ところで、司法書士や行政書士も、離婚相談を行っています。司法書士・行政書士も、弁護士と同じく法律の専門家ですが、弁護士との違いは何でしょうか。
6-1 司法書士や行政書士で対応できること、できないこと
相手に何らかの請求をする場合、いきなり調停や裁判というのではなく、まずは交渉からが通常です。そして、交渉の口火を切るために、相手に対して「内容証明郵便」を送ることがあります。内容証明郵便とは、誰が、誰宛に、いつ、どんな内容の手紙を出したのかということを郵便局が公的に証明してくれる郵便です。
離婚や慰謝料の交渉をしたい場合、内容証明郵便には①不倫・浮気の事実、②請求の内容や金額、支払期限、③交渉に応じなければ調停や訴訟に踏み切ること、などを記載します(記載例)。
内容証明郵便を出すことは誰でもできますが、日ごろ文章を書きなれていない人にとっては、難しくて面倒だと感じられるかもしれません。
そんな場合は、司法書士や行政書士に相談すれば、きちんとした内容の文章を作成してもらえます。
ただし、司法書士や行政書士が対応してくれるのは、あくまで書面の作成のみです。内容証明郵便を送って、相手がこちらの要求を受け入れてくれればよいのですが、実際は相手にも何かしら言い分があり、何らかの反論があるのが通常です。反論があれば、それを受けて、交渉を継続しなければなりませんが、司法書士や行政書士は、相手との交渉をすることすることはできません。相手と交渉できるのは、弁護士のみであり、司法書士や行政書士が交渉をすることは弁護士法違反になります。
6-2 相談する前に確認しておきたいポイント
「弁護士に相談するといっても、何から話したらいいのかわからない」という方もいらっしゃるかもしれません。弁護士に相談する前に、基本データとして次のような事項を整理しておくとよいでしょう。また、不倫や浮気の証拠(4-1)を入手しているなら、それも相談時に弁護士に見せられるように用意しておきましょう。
- あなた自身の情報(年齢、職業、収入)
- 配偶者またはパートナーの情報(年齢、職業、収入)
- 結婚(交際)期間
- 子どもの有無、人数、年齢
- 不倫・浮気相手の情報(年齢、職業、収入)
- 不倫・浮気のあった時期、回数、継続期間
次に、あなたの気持ちの問題として、「何をしたいか」を整理しておきましょう。
例えば、離婚したい、慰謝料を請求したい、子どもを引き取りたい、自宅には住み続けたい、等々が考えられます。
まずは相談、とはいっても、気になるのは「費用」ですよね。弁護士に相談、依頼した場合は、次のような費用がかかります。
まず、弁護士に相談する場合、相談料がかかります。30分5000円(税別)が平均的な金額です。ただし、事務所によっては初回の相談料を無料にしているところもあります。
次に、弁護士に相手との交渉や調停・訴訟を依頼するには、着手金がかかります。
これは、事件の結果に関わらず、弁護士が代理人として活動するにあたって発生する費用です。交渉や調停であれば20万円~50万円、訴訟であれば30万円~60万円が平均的な金額です。
また、弁護士が代理人として交渉・訴訟を行った結果、事件が解決した際に発生するのが報酬金です。
着手金と同額、または相手から得られた経済的利益の何%と定められていることが多いです。
他にも、「対応1時間ごとに○円」など、時間で料金が発生するケースもあります。
このように、弁護士によって料金体系が異なるので、問い合わせ時や相談時に、料金をしっかり確認しておきましょう。
この他、調停や訴訟をする際の訴訟費用(裁判所に納付する収入印紙)や、郵便代、戸籍謄本などの手数料などの実費がかかります。
8章 不倫や浮気に悩んだらまずは相談弁護士費用を見て、高いと思う方も、思ったより安いと思う方もいらっしゃることでしょう。
ただ、迷って何もできずにいては、問題はいつまでたっても解決しません。
困っていること、わからないことがあるなら、まずは弁護士に相談だけでもしてみるとよいでしょう。
不倫や浮気に関する問題の経験豊富な弁護士であれば、過去の様々な事例をもとに、最適な解決方法を示してくれるはずです。
Legalusでは、そうした弁護士を探すことができます。
最寄りの地域の弁護士を何人かピックアップして、メールや電話で問い合わせてみるとよいでしょう。
この記事が、あなたの悩みの解決に少しでも役立てば幸いです。
不倫・不貞・浮気を得意としている弁護士
細川 宗孝 弁護士 神奈川県
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