交際

他人事じゃない。男女の交際にまつわる様々なトラブルとは
恋人ができたり、別れたりといったことは、多くの人が経験する人生のイベントです。いい思い出であればよいのですが、残念ながらそうでないケースもあります。特に、婚約やお金の問題がからむと、単なる恋愛問題では済まない場合もあります。
また、「男女交際」といっても、デートをするだけ、同棲している、結婚の約束をしているなど、その関係は様々で、解決方法に違いが生じることもあります。
デート費用や同棲の生活費用
デートの際の飲食代、レジャー代や交通費、同棲している場合の生活費の負担を巡り、トラブルになるケースがあります。
これらの費用を誰が負担するかは、基本的には当事者同士の話し合いによって決めるものです。法律上、負担方法に関する取り決めがあるわけではありません。
取り決め通りに相手が費用を負担してくれない場合は、相手に請求することができます。ただ、取り決めといっても口頭でなされる場合がほとんどで、文書(合意書や念書)に残している人は少ないでしょうから、取り決めの内容を証明する手段が乏しく、請求には困難が伴うでしょう。
しかし、実際にデート費用や同棲費用を巡ってトラブルになるのは、特に取り決めをせずにどちらか一方が支払っていた(多くは男性ではないでしょうか)場合に、別れ話のもつれから「今まで支払った分を返せ」というケースが多いと思われます。
このような場合、既に支払った分は相手への贈与(民法549条)すなわちプレゼントと考えられるので、返還を請求することは難しいと思われます。
どうしても返してもらいたい場合は、相手との話し合いをするしかないでしょう。
内縁の生活費用
内縁とは、婚姻意思をもって夫婦共同生活を行い、社会的には夫婦と認められているにもかかわらず、法の定める婚姻の届出の手続きをしていないために、法律的には正式の夫婦と認められない事実上の夫婦関係をいいます。
生活実態としては法律上の夫婦と何ら変わりがないことから、内縁の夫婦には法律上の婚姻関係と同様の権利・義務があると考えられています。生活費の負担という面では、婚姻費用分担義務(民法760条)、日常家事債務の連帯責任(民法761条)があると考えられています。
内縁の生活費用を巡ってトラブルになった場合は、これらの民法の規定を根拠にして、相手に対して費用負担を求めることができます。
結婚にまつわるトラブル婚約したか、していないか?
お付き合いを続けていよいよ結婚...というとき、プロポーズそして婚約という過程をたどるのではないでしょうか。
婚約とは、「婚姻の予約」という契約です。ただし、売買契約や賃貸借契約と異なり、婚約をしたときに契約書を作成する人はほとんどいません。では、どのような場合に、婚約成立といえるのでしょうか。
婚約には特に決まった形式はありませんので、当事者が合意すればそれで成立します。ただし、「合意」は目に見えないものですから、婚約が成立したかどうかが問題になった場合、結納をした・婚約指輪を贈った・親族や友人に婚約者として紹介した・結婚式場の予約をしたなどの事実が存在することを証明して、合意の成立を明らかにする必要があります。
また、婚約は契約ですから、相手から一方的に婚約を破棄された場合、相手に損害賠償や慰謝料を請求することができます(後述の別れにまつわるトラブルをご参照ください)。
勝手に婚姻届を出されてしまった場合
法律上、婚姻が成立するには当事者間に婚姻をする意思があることと、婚姻届という所定の届出があることが必要です(民法739条1項)。
婚姻の意思がないにも関わらず、届出がなされている場合、その婚姻は最初から無効になります(民法742条1号)。
無効ではあっても、一旦届出が受理されれば戸籍には婚姻の記載がされてしまいます。そして、戸籍の訂正は市町村役場だけですることはできず、裁判所の手続が必要となります。
婚姻する意思がない場合、家庭裁判所に婚姻無効の調停を申し立てて当事者の合意に相当する審判を得るか(家事事件手続法277条)、婚姻無効の判決を得た後に(人事訴訟法2条1号)、確定した審判の審判書または確定した判決の判決書を付けて、市町村役場に届け出る必要があります。
逆に、婚姻する意思がある場合は、本来無効な婚姻届を追認することで、婚姻を有効なものとすることができます(最判昭47.7.25)。
なお、勝手に婚姻届を出されないように、本籍地の市町村長に対し不受理申出をしておくこともできます(戸籍法27条の2第3項)。
別れた恋人に対して慰謝料請求ができるか?
慰謝料とは、相手の違法な行為により被った精神的損害に対する賠償です(民法709条、710条)。では、恋人と別れた場合に、慰謝料を請求することができるでしょうか。
確かに、別れにより精神的に傷つくことはあるでしょう。しかし、一般的にいって、それが違法とまでいえるかは疑問です。
相手が暴力を振るったり婚約を一方的に破棄したりしたというケースは別にして、恋人と別れただけの場合は、慰謝料請求は認められないでしょう。
内縁関係を解消した場合
内縁関係は生活実態としては法律上の夫婦と変わりがないことから、法律上の婚姻関係と同様の法的保護が認められています。
そして、内縁関係を解消する場合も、法律上の婚姻の解消すなわち離婚と同様の扱いがなされています。
具体的には、内縁関係により生じた財産は財産分与により清算されます。また、内縁関係にあった男女の間に子どもがいる場合、その子どもが認知されていれば養育費の請求をすることができます。
また、正当な理由がないのに内縁を解消された場合は、相手に対して慰謝料を請求することができます。
婚約を破棄された場合
婚約とは、「婚姻の予約」という契約です。契約ですから、相手から一方的に婚約を破棄された場合、相手に損害賠償や慰謝料を請求することができます。
ただし、損害賠償や慰謝料の請求は、相手の婚約破棄が違法すなわち正当な理由がない場合でなければ、損害賠償や慰謝料を請求することができません。
例えば、自身の不貞行為を理由に相手から婚約を破棄されたとしても、相手には婚約を破棄する正当な理由があるといえるので、損害賠償や慰謝料の請求はできません。
相手方に対して損害賠償請求できるものには、結納金の返還、結婚式・披露宴の費用やキャンセル料、婚約指輪の返還、新居の準備費用や家具の購入費用などがあります。
もっとも、婚約破棄に至った事情や当事者の過失の有無やその程度によって、実際に請求できる金額や内容は異なります。
慰謝料についても、金額はいくらと決まっているわけではなく、個々のケースにより判断されます。具体的には、当事者の年齢、性別、社会的地位、資産、破棄理由、破棄に至る経緯や時期、性的交渉の有無、妊娠の有無、中絶の有無等一切の事情を考慮して決められます。
その他のトラブルストーカー行為を受けている場合
別れた相手から電話やメールが頻繁にくる、自宅や勤務先にまでつきまとうなどのストーカー行為に悩まされるという話はしばしば耳にします。
まずは警察に相談し、相手に注意を促すことが考えられます。
警察に相談する際は、電話の着信頻度や時間、メールの内容など被害の内容を具体的に伝えることが必要です。
警察署は、ストーカー行為をする者に対して、警告をすることができます。それでも行為をやめない者に対しては、公安委員会が禁止命令を発することができ、この命令に違反した場合は一年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
暴力(DV)を受けている場合
恋人や配偶者、あるいはかつてそういった関係にあった相手から、暴力を振るわれている場合、まずは相手の加害行為から自分の身を守ることを考えましょう。まずは最寄りの警察署に相談をするのがよいでしょう。
平成13年にDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)が制定されました。配偶者には、離婚した元配偶者や内縁の配偶者、内縁解消した元配偶者も含まれます。
配偶者からの暴力により生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、被害者は裁判所に申し立てて「保護命令」を出してもらうことができます。
男女が別れる場合、双方に原因があるのなら「お互い様」で円満に事が進むでしょうが、なかなかそういうわけにも行きません。
ただ、自分の言い分ばかりぶつけて、相手の話に耳も貸さない、というのでは埒が明きません。
なかなか難しいことではありますが、感情的にならずに、冷静に話し合いに臨む姿勢が大切です。
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未成年と性的内容の会話をするのは犯罪?(未成年から持ち掛けてきた場合)