ストーカー・リベンジポルノ

ストーカー・リベンジポルノは、法律でどんな扱い?弁護士に相談するポイント
社会問題にもなった、ストーカー行為やリベンジポルノ。
もともとは好意だったものが何かのきっかけで加害行為に代わってしまうため、表面化しないまま、深刻な事態に発展しがちな男女トラブルの一つです。
このページを見ている方は、おそらくストーカーやリベンジポルノに悩んでいる方でしょう。
なかなか人に相談しにくい問題でもあるため、不安な中で過ごしているのではないでしょうか。
ストーカー・リベンジポルノの被害にあった時、まずは誰に相談すべきでしょうか。また、弁護士に相談すべきポイントは何でしょうか。
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
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ストーカー(stalker)とは、英語で「忍び寄る、こっそり追跡する」という意味の動詞「stalk」からきている言葉で、「つきまとう人、しつこく嫌がらせをする人」といった意味で使われます。
1-1 ストーキングはこうした行為
ストーカーについては、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」で定められています。
「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、“つきまとい等"を反復してすることをいうと定めています(ストーカー規制法2条3項)。
“つきまとい等"は、「特定の者や親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者」に対して、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、「次の8つのいずれかの行為」をすることです。
- 付きまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつき
加害者が被害者の後を付け回したり、自宅や勤務先・学校の近辺で待ち伏せしたり、それらの場所に押しかけたり、周辺をうろついたりする行為です。 - 監視していると告げる
「今日はこんな服を着ていたね」というメールを送るなど、加害者が被害者の行動を監視していると知らせる、または知り得るような状況を作る行為です。 - 面会・交際などの要求
被害者が拒否しているのに、しつこくデートに誘ったり、復縁を迫ったりする行為です。 - 著しく粗野または乱暴な言動
被害者に向かって大声で「バカヤロー」と叫んだり、被害者の自宅前で車のクラクションを鳴らしたりする行為です。 - 無言電話・連続した電話・メール・SNSなどのメッセージ
無言電話をかけたり、拒否しても電話やメールなど、何らかの方法で接触をしたりする行為です。 - 汚物などの送付
汚物や動物の死体など、被害者に不快感や嫌悪感を与えるものを自宅や職場に送り付けたり、被害者の車に汚物を付着させたりする行為です。 - 名誉を傷つける行為
被害者を中傷する、名誉を傷つけるような内容を告げる、文書などを届ける、インターネットに中傷記事を投稿するといった行為です。 - 性的羞恥心を害する事項を知らせる行為
わいせつな写真を自宅に送り付ける、インターネット掲示板に掲載する、電話や手紙で卑猥な言葉を告げるなど、被害者を性的に恥ずかしい気持ちにさせるような文書や電子媒体を送付する行為です。
行為の理由が、恋愛などの好意の感情が元であることが、ストーキング行為のポイントです。単純な怨恨などの場合は、法律上の“ストーカー"とは認定されません。
また、上記8つのうち1~5については、単に反復するだけではなく、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」とされています。
1-2 ストーカー事件の事例
では、ストーカー被害がエスカレートすると、どんな事件になってしまうのでしょうか。
有名な事件を2つ紹介します。
いずれも殺人事件にまで発展しており、ストーカーが単純な男女の問題ではないことがよくわかります。
◆桶川ストーカー殺人事件
女子大学生が元交際相手の男を中心とする犯行グループから嫌がらせ行為を受け続けた末、平成11年10月26日に埼玉県桶川市のJR東日本高崎線桶川駅前で殺害された事件です。この事件をきっかけに、ストーカー規制法が制定されました。
◆長崎ストーカー事件
当時23歳の女性に、ストーカー行為を繰り返していた元交際相手の男が、女性が当時身を寄せていた長崎県内の女性の実家に侵入し、女性の母親と祖母を殺害した事件です。
1-3 増加する相談件数
警視庁のウェブサイトで公開されている「ストーカー事案の概況」によると、平成27年の相談件数が1957件だったのに対し、平成28年のストーカー相談件数は2586件。
32.1%(629件)も増加しており、決して他人事ではないことがわかります。
1-4 どんな行為が多い?
警視庁の「ストーカー行為の概況」によると、平成28年に寄せられた相談でもっとも多かったストーカー行為の態様は「面会・交際の要求」(1728件)です。
次いで「つきまとい等」(1635件)、「無言・連続電話等」(791件)、「粗野乱暴な言動」(713件)の順になっています。
年により変動はありますが、「面会・交際の要求」「つきまとい等」「無言・連続電話等」は常に上位を占めています。
1-5 検挙されている件数
警視庁の「ストーカー行為の概況」によると、平成28年中におけるストーカー規制法による警告は455件、禁止命令は14件、禁止命令違反は2件でした。
ストーカー行為の検挙数は149件で、ストーカー起因の脅迫罪等による検挙は215件でした。
1-6 被害者は女性が多い
警視庁の「ストーカー行為の概況」によると、平成28年の相談者の性別内訳は、女性が2172人、男性が414人で、女性の被害者が圧倒的に多いという結果になっています。
1-7 加害者の傾向
警視庁の「ストーカー行為の概況」によると、ストーカー行為者の年齢は、2586人のうち、年齢不明の者を除いて、30歳代が650人、20歳代が588人となっています。
また、相談者と行為者の関係は、「元交際相手」が1254人と最も多く、「知人関係等」が329人、「職場関係」が273人、配偶者(元を含む)が100人となっており、全体の約76%が相談者と面識のある者によるストーカー行為です。
逆に言うと、約24%は面識がないということでもあるということは認識しておくべき点でしょう。
第2章 ストーカー行為の法律上の扱いでは、ストーカー行為は、法律上ではどのように扱われ、どんな罰則があるのでしょうか?
具体的にみてみましょう。
2-1 ストーキング行為に対抗するために制定された“ストーカー規制法"
先に述べたように、ストーキング行為を規制するための通称「ストーカー規制法」という法律があります。
正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」と言い、ストーキングだと考えられる行為に対して、禁止命令や罰を与えることができます。
現在は「非親告罪」となっており、被害者の告訴なしで起訴が可能になりました。
ストーカー規制法で禁止される行為つきまとい等(「1-1 ストーキングはこうした行為」参照)をして、被害者に身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる行為が禁止されています(ストーカー規制法3条)。
また、ストーカー行為をするおそれがある人だと知りつつ、被害者の氏名、住所その他ストーカー行為に必要な被害者の情報を提供する行為も禁止されています(同法7条)。
ストーカー禁止法での具体的な処罰- 警告
被害者からの求めがあり、今後もストーキング行為を繰り返す可能性があると認められた場合、警察から“警告"を出すことができます(ストーカー規制法4条)。 - 禁止命令
加害者が上記の“警告"に従わず、今後も行為を繰り返す可能性があると認められた場合、公安委員会から加害者への“禁止命令"を出すことができます(ストーカー規制法5条)。 - 禁止命令違反
禁止命令等に違反してストーカー行為をした者、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることによりストーカー行為をした者は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます(ストーカー規制法19条)。 - ストーカー行為罪
ストーカー規制法で規定されているストーカー行為をした者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(同法18条)。
2-2 刑法・特別法違反
ストーカー行為がもとで発生する犯罪行為は、ストーカー規制法対象のものだけではありません。
その他のさまざまな犯罪が発生する可能性があります。
もちろん、それらの犯罪行為に対しての処罰も生じます。
例えば、次のような犯罪行為です。
ストーカーが被害者に「交際してくれないと殴るぞ」と言うなど、要求を受け入れなければ、被害者の身体や財産に危害を加えることを告げた場合、脅迫罪(刑法222条)が成立し、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処せられます。
ストーカーが被害者に暴行を加えた場合、暴行罪(刑法208条)が成立し、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処せられます。暴行の結果、被害者がケガを負った場合は、傷害罪(刑法204条)が成立し、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処せられます。
ストーキングらしき行為を受けて困った場合に、自分でできる予防と対策を知っておきましょう。
ただ、自分の力だけでは加害者に対抗できない場合もあります。そういう場合は、取り返しのつかないことになる前に、第三者の協力を得るようにしましょう。
3-1 被害に遭う前の予防策
- しっかりと意思を示す
ストーカーは、しつこく交際や復縁を迫ります。自分が嫌だと思うことは曖昧なまま受け入れるべきではありません。
嫌なものは嫌とはっきりと意思表示しましょう。 - 個人情報の管理には気を付ける
住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報の管理は慎重にしましょう。
ストーカーは、出したごみや、インターネット上のちょっとした情報から情報を得ている可能性があります。 例えば、スマートフォンのGPS設定をオフにする、SNSやブログの更新を控える、郵便物を捨てる際はシュレッダーにかけるなどの対策が考えられます。 - 一人暮らしの女性は特に注意
自分が部屋にいることが外から見えないように注意しましょう。すりガラスでもカーテンをつける、カーテンは厚手のものを利用する、在宅中はカーテンをきちんと閉めるなどの対策が考えられます。
また、外出時には防犯ブザーを携帯しましょう。 - (元)パートナーをストーカーにしないために、別れ方には気をつける
ストーカーが問題となったケースでは、被害者と加害者の関係が交際相手又は配偶者が加害者であるケースが多いものです。
では、相手がストーカーになってしまわないためにはどうすればよいでしょうか。
ストーカーの特徴として、犯罪精神医学の専門家である福島章氏は、著書の中で『ストーカーは被愛妄想をもっており、証拠・根拠がないのに相手が自分を好きであると信じ、逆に相手が自分を嫌っている証拠があっても相手が自分を好きであると信じる、信じて疑わない』と述べています(福島章「ストーカーの心理学」)。
また、ストーカーに共通するものとしては、「拒絶に対する過度に敏感な反応」、「相手の感情に想像力を働かせない」、「甘え、思い込み、欲求不満を攻撃に替えて解消する」ところであると指摘しています。
ストーカーの心理に照らして考えると、もし相手がストーカーになりそうな性格であると思われる場合は、次のことが必要でしょう。
- 別れを決意したのであればずるずると引きずらないこと
- 話をする際には「冷静に、きちんと」「好きではないこと」を伝え、思い込みの余地をなくす
お付き合いしているケースでは、交際相手を刺激したくないため自然消滅を狙いたい、と思われる方もいると思います。
しかし自然消滅の場合、相手の思い込みがますますひどくなってしまう可能性もあると思われるので、あまりおすすめは出来ません。
かといって、いきなり着信拒否、メール受信拒否といった行動に出るのは控えましょう。
過度に相手を刺激することになりかねません。
3-2 被害を受けていると感じたら
- 警察に相談する
警察は、相手に対して警告や検挙等の対応をとることができます。また、警察に行けば、被害者が自分でストーカーの被害を防止しようとすることを支援するため、さまざまなアドバイスをしてもらえます。
警察署によっては、防犯ブザーの無料貸し出しなど、直接的な協力をしてくれることもあります。 - 安全な場所に避難をする
身の危険を感じるのであれば、実家や友人宅などに一時身を寄せるのもよいでしょう。
また、警察や都道府県、NPO法人ではストーカーの被害者に一時避難場所(シェルター)を提供しているところもあります。まずはそれらの機関に避難場所を利用したい旨を伝え、相談してみましょう。 - 周りに相談をしておく
自分一人で問題を抱え込まず、家族や信頼できる友人、職場の上司・同僚などに相談しましょう。
万が一何かあったときのために、情報は共有しておくべきです。 - 証拠を残しておく
ストーカー被害を受けた時は、手紙やメール、写真、中傷ビラ、相手から送り付けられてきた物などは、保管・保存しておきましょう。また、いつ、どこで、どんなストーカー行為を受けたか、記録を残しておくのもよいでしょう。
警察署では、被害者の申し出に応じて、ストーカーに対して、警察署長から「ストーカー行為をやめなさい」という警告を書面または口頭で行います。
警視庁のウェブサイトでは、この警告により、約90%がストーカー行為をやめていると報告されています。
警察への相談というと、勇気がいるかもしれませんが、被害者の意思を明確に伝えることができます。
警察署長の警告でもストーカー行為をやめない者に対しては、各都道府県の公安委員会から、書面でストーカー行為を行わないよう禁止命令が発せられます。
告訴警告や禁止命令は、ストーカーを処罰するものではありません。警告等では足りない場合、ストーカー行為罪(2章参照)でストーカーを処罰するために、告訴をすることもできます。告訴とは、被害者やその法定代理人などが、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して訴追を求めることです。
弁護士からの通告ストーカーは被害者の元交際相手や元配偶者などである場合が多いのですが、過去に深い関係にあった相手に対して、刑事処分を求めることにとまどいを感じる被害者は少なくありません。
できれば警察には行かずに解決したいという場合は、弁護士に頼んで、内容証明郵便でストーカー行為をやめるよう通告するのも一つの方法です。
ストーカー被害を解決するために、弁護士に依頼をすることも珍しくありません。
弁護士に依頼することで、どのような成果が期待できるのでしょうか? 詳しくみてみましょう。
5-1 弁護士が対応できること
内容証明郵便による通知ストーカーに対して、ストーカー行為をやめるよう内容証明郵便で通告してもらえます。
正式な文書となるので、相手方に自分の意思を明確に伝えることができます。また、警察が警告や禁止命令を発するにあたっても、内容証明郵便による通知を行っていたにもかかわらず行為が中止されないという事実を重視することがあります。そのため、警察による措置への移行がされやすくなるという効果もあります。
相手の不法行為により精神的ダメージを受けた場合、加害者に対して、そのダメージを回復するために慰謝料を請求できます。
また、加害者から暴行を受けて病院で治療を受けたり、物を壊されたりした場合、治療費や修理代を損害として加害者に請求することができます。
加害者に対する損害賠償請求を弁護士に依頼すれば、交渉や訴訟の対応を代理人として行ってもらうことができます。
自分で行うこともできますが、被害者と加害者という性質上、代理人が間に入ることでスムーズに進めることができますし、過去の判例などを参考に、より適切な金額の請求が可能になります。
刑事告訴加害者に対して制裁を受けさせたい場合は、ストーカーを刑事告訴する際の手続きを弁護士に依頼することもできます。
また、告訴に先立って警察に相談する際に、弁護士に同行してもらうこともできます。
5-2 相談する際のポイント
弁護士に相談する際には、これまでの経緯が分かるように次のような事項について整理しておくとよいでしょう。
- 被害者の氏名、年齢、職業、勤務先
- 加害者の氏名、年齢、職業、勤務先
- 相手との関係、知り合った経緯、交際(結婚)期間
- いつごろから、どのような問題行為が見られるようになったか
- ケガをしたり、物を壊されたりしたことがあるか
- これまでに警察等に相談したことはあるか
- ストーカーからのメールや手紙、中傷ビラなどの証拠品
また、加害者に対してどうしたいか、自分の気持ちを整理しておくことも大切です。
例えば、「相手がストーカー行為をやめてくれればそれでいい」のか、「刑事罰を受けさせたい」のか、「慰謝料を請求したいのか」などが考えられます。
上記のようなストーカー行為に付随して起こりがちなのが“リベンジポルノ"です。
もちろん、ストーカー行為はなくとも“リベンジポルノ"の被害は起こり得ます。
これは、一体、どういった行為を意味するのでしょうか。
また、どのような対抗手段をとることができるのでしょうか。
6-1 リベンジポルノとは
リベンジポルノとは、別れた交際相手や配偶者に対する仕返し(revenge:リベンジ、復讐)の目的で、撮影された人の同意なく、インターネットの掲示板等に性的な画像等を公表する行為をいいます。
画像がひとたびインターネットで公表されてしまうと、その拡散を止めることは難しく、削除も困難となるため、本人が公開を望まない性的画像が半永久的にインターネット上に存在し続けることになります。
6-2 リベンジポルノ事件の事例
実際におきたリベンジポルノの事例をご紹介します。
誰でも簡単に画像を公開できる現在では、決して他人事ではない事件だといえるでしょう。
◆三鷹ストーカー殺人事件
トラック運転手の男が、元交際相手の女子高生にストーカー行為を繰り返したのち、平成25年10月8日に東京都三鷹市の女子高生の自宅に侵入し、帰宅した女子高生を刺殺した事件です。加害者の男は、交際中に撮影した女子高生の性的な画像や動画を、アダルト動画サイトに投稿し、そのアダルト動画サイトのURLをSNSやインターネット掲示板に掲載していました。
この事件をきっかけに、リベンジポルノが社会問題として認識されるようになり、平成26年に私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)が制定されました。
◆Twitterに画像を投稿した男がリベンジポルノ防止法違反で摘発された事件
元交際相手の専門学校生の女性が、別れた後に返事をしなくなったことにうらみを募らせた男が、交際中に撮影した女性の裸の写真10枚をTwitterに投稿したとして、リベンジポルノ防止法違反で検挙された事件です。インターネットを用いたリベンジポルノで検挙された初の事件です。
6-3 2016年の相談件数は1,000件超
平成28年に全国の警察に寄せられたリベンジポルノの被害相談は、1063件に上ります。平成27年の1143件に続き、2年連続で1000件を超えています。
なかなか他人に相談しにくい案件でもあるため、潜在的な事案は、さらに多いことが予想できます。
6-4 どんな行為が多い?
では、どんな相談内容なのでしょうか。
平成28年の統計では、「画像を公表すると脅された」が451件、「画像を所持されている、撮影された」が297件、「画像を送り付けられた」が229件、「画像を公表された」が196件となっています。
公表にまで至らなくても、リベンジポルノの心配があるケースは多いものです。
このように、早めに警察に相談することで、具体的な被害を未然に防げるかもしれません。
6-5 検挙されている件数
平成28年の警察への相談1063件のうち、私事性的画像被害防止法違反で48件、脅迫罪で69件、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で35件、強要罪で35件など、合計238件が検挙されています。
6-6 被害者は女性が多い
やはり、被害者の92.1%は女性です。
しかし男性の被害者もゼロではありません。悩まずに相談するようにしましょう。
年代別では20代が最多の41.6%、次いで19歳以下が22.2%です。
6-7 加害者の傾向
加害者の性別は、89.3%が男性です。
年代別では、20歳代が24.1%、30歳代が23.4%、40歳代が17.6%。
若いほうが多い傾向にあるものの、広い世代が加害者になり得ます。
また、被害者と加害者との関係は、交際相手(元交際相手を含む)が約7割。
次いで知人友人(ネットのみの関係を含む)が多くなっています。
リベンジポルノは、平成26年に制定されたリベンジポルノ防止法によって、刑事罰の対象とされます。
また、リベンジポルノが行われる過程で脅迫罪や強要罪など刑法上の犯罪が成立する場合や、児童ポルノ禁止法などの特別法上の犯罪が成立する場合もあります。
7-1 リベンジポルノ防止法違反
通称「リベンジポルノ防止法」は、正式名称を「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」と言います。
この法律では、“私事性的画像記録"または“私事性的画像記録物"を、第三者が撮影対象者を特定できる方法で、不特定もしくは多数の者に提供し、または公然と陳列した者を、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すことができます(公表罪、同法第3条1項、2項)。
公表させる目的で、“私事性的画像記録"または“私事性的画像記録物"を提供した者は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(提供罪、同法第3条3項)。
なお“私事性的画像記録"とは、次の1~3の電子情報(電子データ)のことです。
- 性交または性交類似行為にかかる人の姿態(異性間・同性間の性交、手淫・口淫行為など)
- 他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの(性器、肛門または乳首を触る行為など)
- 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されるものであり、かつ性欲を興奮させ又は刺激するもの(全裸または半裸の状態で、扇情的なポーズをとらせているものなど)
また“私事性的画像記録物"とは、上記1~3を撮影した画像を記録した有体物(写真、CD−ROM、USBメモリなど)のことです。
7-2 刑法・特別法違反
リベンジポルノから派生して、さまざまな犯罪行為が生じることがあります。
いくつか例を挙げます。
「別れるなら裸の画像をばらまく」などと相手を脅した場合、他人の名誉に危害を加える旨を告げて相手を脅したとして、脅迫罪が成立し、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
強要罪(刑法223条)「裸の画像をばらまかれたくなければ言うことを聞け」などと相手を脅して要求をのませようとした場合、他人の名誉に危害を加える旨を告げて相手に義務のないことを行わせようとしたとして、強要罪が成立し、3年以下の懲役に処せられます。
名誉棄損罪(刑法230条)性的な画像をインターネットで公開するなどして相手の名誉を傷つけた場合、名誉棄損罪が成立し、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。
わいせつ物公然陳列罪(刑法175条)性的な画像をインターネットに公開するなどして、公衆の目に触れるようにした場合、わいせつ物公然陳列罪が成立し、2年以下の懲役または250万円以下の罰金に処せられます。
児童ポルノ公然陳列罪(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条6項)性的な画像の被写体が18歳未満の場合、児童ポルノ公然陳列罪が成立し、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれが併科されます。
第8章 リベンジポルノの被害に遭ったら8-1 まずは警察に相談
リベンジポルノの被害に遭ってしまった場合、すぐに警察に相談するべきです。その際、加害者からの着信履歴、メール、SNSのメッセージなどは必ず保存し、証拠として警察に提出できるようにしておきましょう。
一度画像が公開されてしまうと、被害の拡大を止めることは難しくなります。できれば、画像が公開されるかもしれないという不安を感じた段階で、警察に相談するのがよいでしょう。
8-2 画像がインターネットに公開されていたら削除要請を
リベンジポルノ防止法に基づき、サイト管理者、サイト運営会社あるいはサーバ管理会社に削除を依頼できます。
削除依頼を受け取ったサイト管理者等は、その画像が削除依頼者の権利を侵害するものと判断した場合にはすぐに画像を削除できます。判断が難しい場合などには、投稿者に対して削除や非表示等の措置をすることに同意するかどうかについて2日間の期限を定めて意見照会を行い、返信がなければ削除をするという手続をとることができます(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通称:リベンジポルノ防止法)4条)。
8-3 場合によっては慰謝料の請求も可能
リベンジポルノによって、プライバシー侵害や名誉棄損、その他精神的ダメージを受けた場合、そのダメージを回復するために加害者に対して慰謝料を請求することができます(民法709条、710条)。
第9章 リベンジポルノの被害に遭ったら弁護士に相談をリベンジポルノにおいても、弁護士に相談するケースがあります。
どのようなメリットがあるのか、見てみましょう。
9-1 弁護士が対応できること
- 内容証明郵便による通知
まだ実際に画像が公開される前であれば、弁護士に依頼して画像の公開をやめるよう内容証明郵便で通知することが考えられます。 - 加害者に対する慰謝料請求(民法709条、710条)
リベンジポルノによりプライバシー侵害や名誉棄損、その他精神的ダメージを受けた場合、被害者は加害者に対して、そのダメージを回復するために慰謝料を請求することができます。弁護士に依頼すれば、加害者との交渉や訴訟の対応をすべて代わりに行ってくれます。 - 画像等の削除依頼
画像の削除方法については、インターネット関連の問題に詳しい弁護士に相談するのも一つの方法です。
また、画像の投稿だけではなく、掲示板に誹謗中傷の書き込みをされた場合は、プロバイダ責任制限法に基づく削除依頼をすることができます。少しでも被害を食い止めるために、どんなことができるのか、弁護士から適切にアドバイスをしてもらえます。 - 刑事告訴
加害者を刑事告訴する際の手続きを弁護士に依頼することもできます。また、告訴に先立って警察に相談する際に、弁護士に同行してもらうこともできます。
9-2 相談する際のポイント
弁護士に相談する際には、加害者からの着信やメール、SNSのメッセージ、インターネット上に公開された画像など証拠になりそうなものを準備し、これまでの経緯が分かるように次のような事項について整理しておくとよいでしょう。
- 加害者との交際の経緯(交際を始めたのはいつか、別れ話はいつ、どちらが、どういう理由で切り出したか、など)
- 画像の公開について、加害者からどのようなことを、いつ言われたか
- 実際に画像が公開されたのはいつか
- これまで警察に相談したことはあるか
また、加害者に対して「刑事処罰を求めたい」「画像の削除依頼をしたい」「慰謝料請求をしたい」など、自分がどうしたいか、気持ちを整理しておくことも重要です。
第10章 ストーカーやリベンジポルノの相談に乗ってくれる弁護士の探し方弁護士にも、得意分野というものがあります。
そのため、ストーカーやリベンジポルノを取り扱っている弁護士から、アクセスのしやすい地域にある法律事務所を絞り込んで探すとよいでしょう。
インターネットに対する対応が主になりそうな場合は、ネットトラブルを取り扱っている弁護士に相談するのもよいでしょう。
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