相続手続

相続手続を期限内にきちんと終わらせたい人への手引き
相続が起こったら、いろいろな手続きをする必要があります。まずは死亡届を提出しなければなりませんし、金融機関などに通知して取引を止めてもらう必要もあります。
被相続人に遺産があると、それらを分ける手続きも必要になりますし、借金があったら相続放棄なども問題になります。また、多額の遺産があれば、相続税の納付の必要もあります。
これらの相続手続きを確実に行うためには、手続きの方法を正確に理解しておく必要があります。そこで今回は、相続手続きを期限内にきちんと終わらせるための方法をご説明します。
親などが亡くなって相続が起こったら、まずは何をすべきかが問題になりますので、以下で見てみましょう。
人が死亡したら、死亡届を提出する必要があります。
被相続人が病院などで死亡したり、在宅死した場合でも主治医がいたりする場合などでは、担当医から死亡診断書を受け取ることができます。通常医師から受け取った死亡診断書は死亡届と一体になっているので、その死亡届の部分に必要事項を書き入れて役所に提出すると、死亡届ができます。
死亡届に書き入れる内容は、死亡した人の氏名や性別、生年月日、死亡時刻と死亡した場所(住所や病院の所在地など。死亡診断書に記載があるので参照しましょう。)、死亡した人の住所と本籍地、配偶者の有無、死亡者の世帯主の職業、死亡届の届出人の住所と本籍地、届出人の署名、生年月日、火葬場所(火葬場や墓地の名前)です。
死亡届を役所に提出したら、火葬許可証を受け取ることができるので、それをもって火葬することができるようになります。
被相続人が死亡したら、被相続人名義の金融機関の取引を止める手続きも必要です。放っておくと、預貯金を管理している相続人などが、勝手に預金を引き出してしまったりすることもあるからです。
金融機関の取引を止めるためには、被相続人名義の口座がある銀行や信用金庫、証券会社などの金融機関に連絡を入れて、契約者が死亡したことを伝えて取引を止めてもらう手続きをします。
相続開始によっていったん金融機関での取引が凍結されたら、きちんと遺産分割協議が済んで誰が遺産相続するかが決まるか、相続人全員が共同で手続きをしない限り、預貯金の出金などができなくなります。
相続が起こったら、いろいろな相続手続きが必要になりますが、相続手続きには期限があるものがあるので、注意が必要です。
まずは、相続放棄や限定承認をする場合の期限があります。被相続人が多額の借金を残したケースでは、相続を免れるために相続放棄や限定承認の申述をする必要がありますが、そのためには、相続開始と遺産の状況を知った日から3ヶ月以内に手続きをする必要があります。
次に、準確定申告の期限があります。被相続人が事業を営んでいたケースでは、相続人が被相続人の代わりに確定申告する必要がありますが、この準確定申告は、相続開始後4ヶ月以内にする必要があります。
相続税の申告期限もあります。相続が起こった場合、基礎控除分を超える相続財産があれば、基本的に相続税の納税が必要です。この場合、相続開始後10ヶ月以内に相続税の申告と納税の両方を済ませる必要があります。期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税が課税されるおそれもあるので、注意しましょう。
また、遺留分減殺請求にも期限があります。配偶者や子どもなどの法定相続人には、最低限の遺産の取り分である遺留分が認められますが、これを請求するには遺留分減殺請求をする必要があります。そのためには、相続が開始して遺留分の侵害があることを知ってから1年以内に請求する必要があります。
相続手続の項目一覧と全体の流れ次に、相続が起こった場合の相続手続きの全体の流れを確認しましょう。
まずは、具体的に必要になる相続手続きの項目の一覧を見てみます。
- 死亡届の提出
- 金融機関取引を止める
- 生命保険会社に連絡して、保険金を受け取る
- 遺言書があるかどうかを確認する
- 相続放棄や限定承認の手続きをする
- 準確定申告の手続きをする
- 相続人調査をする
- 相続財産の調査をする
- 遺産分割協議を行う
- 相続税の申告と納税をする
- 名義書換の手続きをする
- 年金や保険の手続きをする
相続が起こったら、だいたい上記のような手続きが必要になります。手続きの流れも上記の順番になることが多いですが、多少は前後することもあります。また、それぞれのケースによって、必要な手続きと不要な手続きがあります。
たとえば、遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言などの種類がありますが、これらの遺言書の種類によっても、相続手続きの方法が異なってきます。
遺産分割協議を行う場合も、相続人らの話し合いで協議が整ったらそのまま遺産分割協議書を作成出来ますが、協議が整わなかったら遺産分割調停などの手続きも必要になります。
以下では、相続手続きの項目について、それぞれの具体的な手続き方法を確認しましょう。
死亡届の提出
これについては、上記の項目で説明したとおりです。医師から死亡診断書を受け取り、それと一体になった死亡届に必要事項を記入して、届出人の署名押印をして市町村役場に提出しましょう。
金融機関取引を止める
これについても、上記の項目で記載したとおりです。被相続人名義の口座がある金融機関のすべてに連絡を入れて、口座取引を停止してもらう必要があります。
生命保険会社に連絡を入れて、保険金を受け取る
被相続人が生命保険に加入していた場合には、保険金を受け取る手続きをする必要があります。そのためには、加入している生命保険会社に連絡を入れましょう。各生命保険会社によって要式の異なる保険金請求書などの書類があるので、必要書類や書き方を聞いて、保険金請求の手続きをしましょう。
生命保険金は、民法上は相続財産ではありませんが、税務上はみなし相続財産として相続税の課税対象になるので、注意が必要です。
遺言書があるかどうかを確認する
相続が起こったら、被相続人が遺言書を残していないかどうかを調査する必要があります。
保管場所がわかっている場合には問題ありませんが、自筆証書遺言の場合には、自宅や金庫などに保管されていることがあるので、よく探しましょう。
自筆証書遺言が見つかったら、家庭裁判所に検認の申立をする必要があります。封入されている自筆証書遺言を発見した場合に、勝手に封を開けると科料などの制裁がありますので、検認を受けるまで開封してはいけません。
公正証書遺言がある場合には、自宅に正本や謄本が保管されていることが多いです。
また、公正証書遺言については、検認手続きは不要です。
相続放棄や限定承認の手続きをする
被相続人が借金を残していたり、他の相続人に相続分を譲りたいので自分は相続人になりたくなかったりするケースでは、相続放棄や限定承認の手続きをとる必要があります。これらの手続きをする場合、家庭裁判所に相続放棄や限定承認の申述をします。
準確定申告の手続きをする
被相続人が、自営業者などで確定申告の必要がある場合には、相続開始後4ヶ月以内に相続人が準確定申告の手続きをする必要があります。
相続人調査をする
遺言書などで相続人が決まらない場合には、相続人調査を行う必要があります。相続人調査のためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本や除籍謄本を取り寄せることによって、被相続人の子どもなどがいないかどうかを調べます。
相続財産の調査をする
相続財産の調査をするためには、被相続人の自宅宛に届いた金融機関や証券会社からの連絡書をチェックしたり、固定資産納付書などによって不動産の有無や内容を確認したりしましょう。
遺産分割協議を行う
相続人と相続財産が確定できたら、遺産分割協議を行って誰がどの遺産を相続するかを話し合って決めます。遺産分割協議が整ったら遺産分割協議書を作成しますが、自分たちで協議が整わない場合には、家庭裁判所に申立をして遺産分割調停や審判を利用する方法で解決する必要があります。
相続税の申告と納税をする
相続開始後10ヶ月以内に、相続税の申告と納税手続きを行います。相続税の申告は、被相続人が死亡時に居住していた住所地の税務署で行います。
名義書換の手続きをする
遺産分割協議がととのったら、その内容に従って金融機関口座や不動産、株式などの名義変更手続きを行いましょう。
年金や保険の手続きをする
被相続人が健康保険や年金に加入していた場合、その内容によって遺族年金や葬祭費などを受け取ることができることができます。この場合、放っておいても勝手に支給されるものではないので自分で役場や年金事務所などに行って、手続きをする必要があります。
今回は、相続が起こった場合の手続きの流れとそれぞれの手続きの項目について詳しく説明しました。相続が起こると、まずは死亡届を提出して金融機関口座を止めるところからはじめて、さまざまな手続きが必要になります。
期限がある手続きもあり、期限を過ぎると手続きができなくなったり、ペナルティがある場合があったりするので注意が必要です。
長い人生では、自分が相続人になることもあるものです。その場合には、今回の記事を参考にして、スムーズに相続手続きを行いましょう。
相続手続を得意としている弁護士
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