「詐欺や闇金業社から依頼者の権利を体を張って守り、正論で戦う」石鍋弁護士へのインタビュー
石鍋 毅 (いしなべ たけし) 弁護士の第1回インタビューです。
石鍋 毅 (いしなべ たけし) 弁護士の第1回インタビューです。
──弁護士として大事にしていることは何ですか。
依頼者の権利を体を張って守るということです。
訴訟などで依頼者の主張を通すのはもちろんですが、不当な金利をとる業者に借金のかたとして持っていかれた依頼者の自動車を、私が業者のところに行って取り返したこともあります。
──そういう姿勢はどのようにして培われたのですか。
弁護士になって最初に入ったのが渉外事務所で、海外案件を多く手掛けました。
そこでは時差があっても打ち合わせ時間は依頼者の都合に合わせるよう教えられました。
その後、個人の案件を中心に扱う事務所を経て独立したのですが、依頼者が来やすいよう土日、祝日も幅広く相談を受けました。
──得意なのはどの分野ですか
クレジット詐欺や、不当に高金利をとるいわゆる闇金業者などの案件は多く手掛けました。
独立したのは平成10(1998)年ごろで、当時はこの分野を重点的にやる弁護士は少なかった。
──交渉で難しいのはどのような点でしたか
闇金業者などは、事務所の住所すらわからないこともありました。
それから契約内容も明確でなく、それを明かさないでただ返済を要求してくる業者などもいました。
それを一件ずつ確認し、「内容が不明確なら返済はしない」などと言いながら交渉しました。
──怖い思いをされたことはなかったのですか
確かに怖いと思われる人から電話が来たこともありました。
でも先ほどの車の話などのときもそうですが、自分の危険を感じる余裕は無かったですね。
そういう相手は威圧的にくるわけですから、まずは正論で戦うこと。
それから威圧に負けないために、たとえば車を取り返すときには、こちらはベンツで乗り付けるなど毅然とした姿勢を示しました。
──いまは貸金業の状況がずいぶん変わりましたね
貸金業法が改正され、金利のグレーゾーンが無くなったことで多重債務問題はずいぶん減りました。
まだ過払い金の返還請求を多く手掛けている事務所もありますが、その仕事は減っていくでしょう。
今は労働問題、たとえば過剰な残業、不当解雇、きちんと退職金を払わない企業に請求するとか、そういう相談を多く受けています。
──貸金業法の改正にも関わった?
東京弁護士会のメンバーとして取り組みました。
この問題で、官房長官時代の安部晋三さんと話したこともあります。
──東京弁護士会では副会長も務めた。
ええ。
でも、その時ちょっと辛いことがありました。
──東京弁護士会副会長時代の辛かったこととはどのようなことですか
副会長になったとき、知り合いに頼まれてある会社の顧問を引き受けました。
その会社が未公開株の販売をしていました。
──未公開株はそんなに出回らないはずですが。
一般的に取引されることはないですが、何らかの縁で未公開株を手にした人が譲渡することがあります。
私はそれを販売するにあたって法的に問題がないよう会社にアドバイスしたのですが、未公開株の発行会社から、私が顧問を務めている会社が未公開株を入手するにあたって手続き的に問題があるので、無償で返すよう求めてきました。
──どのように対応されたのですか。
顧問を務める会社には、未公開株を元値で買い戻すよう話をし、無償では返せないと発行会社と交渉しました。
その過程で一部マスコミに弁護士会副会長が問題のある取引に関与、というかたちで報じられ批判を受けました。
自分では、消費者である株の購入者、依頼人である会社のどちらに対しても誠実に対応したつもりでしたが、その過程では顧問になった会社が私の副会長という肩書を利用して客集めをしていたことも知り、辛かったです。
──今後やりたいことはどのようなことですか
弁護士に対するニーズは時代によって変わってくると思います。
死ぬまで勉強だと思っています。
今後、というよりすでに始めたのが関東甲信越などいくつかのエリアで税理士としての活動ができるようにしました。
依頼者からのご要望があればさらに範囲を広げます。
相続について相談を受けて、すぐに相続税の手続きに入れるワンストップサービスです。
──最近話題の人工知能(AI)とかチャットGPTについてはどうお考えですか。
私は生の人間でなければ法律相談は受けられないと思っています。
弁護士は一人ひとりが違った経験を持ち、それによって同じ案件でも違った回答をするものです。
依頼者が求めていることが何か、によっても答えが違ってきます。
法律相談に来るということは、辛いことがあるということです。
私は、辛い思いで相談に来た方に幸せになって帰ってもらいたいという気持ちで、相談に乗っています。