LGBTQの方への支援 法律の観点ではどうサポートするべきか?吉田弁護士へのインタビュー
吉田 奉裕 (よしだ ともひろ) 弁護士の第1回インタビューです。
吉田 奉裕 (よしだ ともひろ) 弁護士の第1回インタビューです。
──性的マイノリティとされるLGBTQの方の支援に力を入れていられるそうですが。
当事者によって属性の違いはありますが、区別なく法的に援助していきたいと思っています。置かれている立場に違いはあっても、全体的に世間の理解はまだ得られているとはいえません。
例えば昔からゲイ(G)のことを「ホモ」とか「おかま」とか差別的に言ったりしていて、今も変わりません。
トランスの方でいえば、自分では女性と思っていても、名前が「太郎」だと周りには男性だと認知される。
そのことがまず、ストレスなのです。同性のカップルの場合、日本では法律上、ふうふと認められていないので、相続人になれない。
保険の受取人にもなれないことがあります。法的にふうふでいられないって、とても悲しいことだと思うんです。
──そうした方たちにどんな援助が可能ですか。
法律的援助と社会的援助の二つあります。
法律的援助としては、同性婚の実現はまだですが、契約上の援助はできます。当事者間のパートナー契約というもので、夫婦間での婚前契約のようなものです。
二人を養子関係にして同じ戸籍上に載せ、親子関係を結べば、相続はできるようになります。
しかし、それは次善の策であり、妥協できる人もいますが、納得できない人が多いのも事実です。
それで同性婚を認めるよう訴訟を行っています。
いまのところ、一審、二審で認められなくても、将来は最高裁で認められる時がくると思っています。
そこで社会的に地ならしをしていくことが、私の役目の一つと考えています。
まだまだ差別的な意識が強い日本ですが、市町村レベルではパートナーシップ制度を導入する自治体が増えてきています。
埼玉県では63自治体のうち、40自治体がこの制度を導入しています。
県知事も比較的理解を示しています。
部屋を貸す側の大家さんもただの同居人としてではなく、ふうふのようなパートナーとして見てくれるようになり、それを契機によそから引っ越してくるカップルもいます。
自治体としても、人権と多様性を尊重しているとアピールできるメリットがあります。
私が取り組んでいる例で言いますと、戸籍上は男性ですが、トランスジェンダーの外国籍の女性がおります。
日本人男性と内縁関係があり、在留資格がないので、現在国に在留特別許可の申し立てをしているところです。
この許可が下りた例は国内ではまだありませんが、パートナーシップ制度が全国的な広がりになっていけば、社会的な意義や共感が積み重なり、いずれは認められるようになる、そんなきっかけになっていく事を期待しています。
LGBTQの方で特に心配していることがあります。
それは詐欺に遭いやすいということです。
比較的限られた世界なので出会いの機会が少なく、マッチングアプリなどでロマンス詐欺に引っかかる。
100万円単位で騙し取られるといったケースですね。
──LGBTQの方の支援を目指すのに、何かきっかけはあったのでしょうか。
2回ありました。
一つは学生時代の友人に当事者がいたということです。
あるテーマパークで、同性の人とデートしているのに出くわし、「あっ」と気づいた形になりました。
後で、この友人と連絡を取り合ったら、説明してくれて。
私はこの友人に非常に寂しい思いをさせていたんだな、と反省したものです。
もう一つは男性の公衆トイレに、女性らしい格好をした人が入ってきて、「間違えていますよ」と言いそうになった事がありました。
トランスジェンダーの方だったと思うのですが、「言わなくてよかった」と後で、ホッとしたものです。
もし言ってしまっていたら、当事者に申し訳ないですからね。
LGBTQの方の相談件数はまだ、4,5件というところですが、紹介されたものばかりです。
これは、相談をすることがカミングアウトに繋がることから、どこに相談して良いか分からないことが原因だと考えています。
そこで、これからは私からどんどん発信していかなければならないと思います。困っている方はたくさんにいらっしゃると思いますから。
──社会的援助としてはどのような活動をされていますか。
関東弁護士連合会の一員として、2021年度に「性別違和・性別不合があっても安心して暮らせる社会をつくる」という報告書を提出しました。
弁護士会の中での受け入れ態勢がまだまだ整っていないという指摘です。
一市民としては、「レインボーさいたまの会」という任意団体のメンバーを中心とする実行委員会で、昨年11月にLGBTの方等のための成人式を行いました。
第6回目の開催でしたが、埼玉県内外から少なくても約100人は参加しました。
成人代表者2人のあいさつもありました。
皆さん、「自分らしい成人式をして成人になりたい」と。
年齢を問わない式でしたので20歳を過ぎた方もたくさんいて、20歳の時、親の頼みから一般の成人式に振袖を着て出たが、「嫌で仕方なかった」という話で。
今回はスーツを着て清々しい姿でした。人生の大切な区切りなので、自分らしい成人式をしたかったのだと思います。
今後はLGBTQのパレードを開催できたら、とも考えています。
──得意な分野はありますか。
仕事上では外国人の相談が結構あります。
在留資格の取得に困っている事が多いですね。
どんな国の方でもちゃんと対応します。
通訳の手配も可能ですし、英語なら多少できますから。
──弁護士を目指した理由は。
母の離婚です。
母に何か落ち度でもあったのかと、法的に救済されないものかと、考えさせられました。
離婚したと知ったのは数年後の20歳の時でした。
法学部の学生だったので、法的に力になれれば、と思って目指しました。
(親孝行できていますか)頑張ります。
──特に大事にしている事はありますか。
相手の話を一から十まで、ちゃんと聞くように心掛けています。
気持ちを全部吐き出してもらわないと、その人が何を考えているのか、どんな人間なのか、よくわからない。
その人を理解したうえで、どの部分が大切で、どこは省いていいかを判断しています。
私の性格のポイントはめったに怒らないということでしょうか。
一年に一度あるかどうかくらいの頻度です。
社会的な不条理には憤りを感じますがね。
こんな弁護士ですから、どうかお気軽にご相談ください。
困ったら、まずはお声がけを。