弁護士として離婚問題にどう向き合いケアするのか?林弁護士へのインタビュー
林 奈緒子 (はやし なおこ) 弁護士の第1回インタビューです。
林 奈緒子 (はやし なおこ) 弁護士の第1回インタビューです。
──離婚を相談の柱に据えているということですが。
自然に相談者が集まってきたという感じでしょうか。
女性の弁護士は少ないですが、話しやすいと思うからか、離婚や家庭の話を聞いてほしいという方が多いです。
私としては聞くことが好きなので、クライアント様からは「人間味のある対応がいい」と言われますね。
家庭というのは人生そのものであり、人間関係の土台です。親と自分。それが基礎になり、そこから人間関係が広がっていきます。
子どもは保育園、幼稚園、小学校、中学校、さらに上の学校にと、人生は逆円錐形の形になっていきます。
その始めの部分がしっかりしていると、上のほうも広がりやすい。先々の将来も含めてですね。
逆に家庭が不安定だと、子どもの進路にも影響します。人生を左右するものですから、そこのトラブルをしっかりケアしていくことが大事だと思っています。
──離婚は愛憎の究極という側面があると思います。弁護士としてどこまで入り込んでいくのか、難しいことが多いのではありませんか。
基本的な事として、クライアント様からはまず、話をしっかり聞きます。
法律的な事柄だけに限らず、例えば裁判所で聞かれるようなことだけではなく、夫婦間の行き違いのような細かな事も詳しくです。
裁判官に取り上げてもらうには難しい事かもしれませんが、離婚したいという気持ちに至るまでの経緯というか、そこの土台がないと、訴訟で受け入れられる主張を組み立てていけないと考えるからです。
一見、何でもないような事から聞いていかないと難しいと思うんです。
クライアント様に対して、「それは聞いても仕方ない事柄です」と切ってしまうと、その方はそれ以上、言えなくなってしまいます。
しかし、裁判では悪い材料だからと、切り捨ててしまうよう話の聞き方は致しません。
そのようにして、まずは私とクライアント様の人間関係を作っていくことを心がけています。
超プライベートな事を人に言うということは、とても勇気がいります。そういう話を聞けるようになるまで、そこは時間をかけます。
──解決に向けてどのような進め方をするのでしょうか。
裁判を介さずに進めていくこともあります。
相手(一方の当事者)の方とも直接会ったり、電話で話したりするケースはよくあります。
訴訟や法的な解決だけで進めていくわけではありません。
必ずしもどちらの言っていることが正しいという性格のものでもありませんから。
ただし、弁護士として一方的に肩入れするということもありません。
寄り添うことはしますが、クライアント様と気持ちが一体になるということはないです。
やはり法的にどう評価されるかという点を常に考えながら対応することは必要です。
カウンセラー的な側面もありますが、それだけでは弁護士ではありません。
たまに、弁護士によってはクライアント様と一体になってしまって、まとまらないケースも聞きます。
──平常心を保つのは大変なのではないですか。
もちろん同情はしますが、核となるところはかなり冷静になっていると思います。
この相談はどのように料理したらいいのだろうかと。
その調理法を考えるというような対応です。
話し合いではもう難しいというケースもあります。
その場合は法的な手段として調停に入ります。
家庭裁判所で調停委員が間に入って進みます。
当事者同士が顔を合わせることはありません。
若い夫婦で子どもがいない場合だと、財産もまだ少ないので解決は比較的に早いです。
調停は双方が納得した形での解決を目指します。
しかし、現在受けているケースでは結婚から約20年経ち、財産も多く調停は不成立になりました。
間もなく離婚訴訟に入ります。
裁判中に和解するケースもありますが、裁判は判決での決着ですから、必ずしも双方納得というわけにはいきません。
判決に至るまでに、判決内容がだいたい予想できることもありますが、まったくわからない場合もあり、期待したような結果にならないこともあります。
──弁護士になる前は民間の会社に勤められたそうですが。
大学卒業と同時に法科大学院に進みましたが、普通の社会人経験もなく、弁護士の勉強だけでいいのかと悩みました。
それで2年生くらいの途中で休みまして、通信会社と損害保険会社に約半年間ずつ勤めました。
それからまた大学院に戻りましたが、大学時代にスーパーのレジのバイトをやったこともあり、現在の弁護士活動にはいい経験としてとても役立っていると思います。
いろんな目線で社会を見られるし、人の気持ちとか立場とか、生きていく苦労や大変さを身を持って知っているつもりですから。
──個人事務所を運営されていますが、どのような経緯で。
弁護士になって6年目になります。
最初は新宿に本部を持つ大きな弁護士事務所に勤めました。
雇用契約ではなく、業務委託の形ですが、実際はとても忙しく、休みも取りにくい。毎日終電まで働く生活でした。
企業法人部という部署にいましたが、クライアントの多くは家賃の保証会社。
滞納している相手に建物明け渡しの請求訴訟を起こす手続きをするのです。
滞納者というのはたくさんいらっしゃいましたから。
そんな生活をしていて、子どもができまして、それで家族のことを考えて思い切って独立しました。
始めは家賃の安いシェアオフィスを借り、独立した今の事務所は3か所目になります。
──弁護士を目指したきっかけは。
小学校の高学年くらいから、なりたいと思っていました。
そのころ、父方の祖母が60歳で、格安カットの理容店を開業しまして。
店舗数を拡大し、大当たりしたのですが、同時に労働トラブルや店舗の賃貸トラブルもあって、弁護士に相談していました。
私もその話を聞かされ、その際、祖母が「弁護士になるといいよ」とよく話してくれたものです。
祖母が頼った人(弁護士)が恰好よく見えるじゃないですか。
小学校で将来なりたい職業の絵を描かされた時、法廷に立つ自分の姿を描きました。
ただ、一方でマスコミ系で働きたかった気持ちもあり、弁護士でいいのかと悩んだこともありました。
政治にもマスコミ論にも興味がありましたしね。
──どんなクライアント様が多いですか。
女性が中心と思われるかもしれませんが、実は半分くらいは男性です。
一般の家庭だと、女性の立場が強いことも多いのです。それで困っている男性が相談に。
暴言や暴力といったモラルハラスメントは男性だけが加害者ではないんです。
「これくらいのことで、相談に来るの」と見られることが嫌みたいで、同性の弁護士には話にくいようです。
特に社会的地位の高い人だと、相談する弁護士によっては優秀な部下と話しているようで、気が引けるようです。
──クライアント様にお伝えしたいことはありますか。
めちゃめちゃ緊張してくる相談者の方もおられますが、気軽に相談してほしいと思います。
話を聞いてほしい、寄り添ってほしいなどなど。
まずは電話でもネットからでも予約をしてください。
お待ちしております。