大手IT系企業の法務経験を活かし幅広い視点と知識で対応 日吉弁護士へのインタビュー
日吉 加奈恵 (ひよし かなえ) 弁護士の第1回インタビューです。
日吉 加奈恵 (ひよし かなえ) 弁護士の第1回インタビューです。
──11月までヤフー(現:LINEヤフー)に勤務されていたそうですね。
司法試験に合格した後、その先の進路を決めるために弁護士事務所や民間企業を回ったのですが、ヤフーは当時からサービスの数が多く、幅広い分野で事業展開していたので、弁護士事務所では経験できないことができるのではないかと感じました。
会社からの説明でも、インターネットの分野ではまだまだ法律が確立されていない部分もあるため、日々法律の勉強を続ける必要があると聞きました。
そうしたことに魅力を感じて勤務先に選びました。
──どのような分野を担当されたのですか
7年近く務めたのですが、担当する職場のローテーションが早く、同時に複数のサービスを担当することもあったので、多くのサービスを担当しました。
サービスの担当者から相談を受けて、実現したい内容に沿った契約書の作成をしたり、新しい取組みをするにあたり法的懸念がないかの相談を受けたりしていました。
印象に残っているのはニュース分野で働く人たちがとても矜持を持っているということでした。
法律的な側面からみると、報道では人権問題が重要なテーマになりますし、広告分野では企業利益と消費者保護のバランスをどうとるかなどについて現場から相談を受けていました。
ヤフーは弁護士資格を持っている人が数十人いるので、先輩から学ぶことも多かったです。
また、若い人に責任をもって仕事をさせるという企業風土があって、自分で考えて答えを出すことがとても勉強になりました。
中でも、現在多くの企業が困っているのは個人情報保護法に関わることです。
──新しい分野で、改正も頻繁ですね。
個人情報保護法では、社会の動向に合わせて法改正できるよう、3年ごとに内容を見直しすることが定められているので、改正も多く、昔は個人情報保護法上の義務を負っていなかった会社でも、今はそうではなかったりします。
ヤフーでも広告分野など、ユーザーの個人データを扱う場面が多く、私自身も担当者として法改正の際の対応をする機会もありました。
でも、多くのスタッフを抱えている会社ならば専門のスタッフを置くこともできますが、お取引先の小規模の事業主さんなどではすべてのルールを守るのはとても大変です。
そもそも保護するべき個人データとはどのようなものか、ご自身の事業が個人情報保護法の適用の対象となるか、ご理解されていない方もおられました。
個人情報を扱う会社では、プライバシーポリシーといって自分の会社で個人情報を扱うルールを定めるのが望ましいのですが、それがない会社もありました。
ご相談いただけば、ヤフーでの経験を踏まえていろいろな角度からアドバイスできると思っています。
──個人情報に限らず、契約にかかわる相談も多かったでしょうね。
1日に3件は普通にありました。
昔は口約束で取引するようなこともあったと聞いていますが、今はコンプライアンスの観点からもできるだけ契約書を交わすようになっています。
ただそれも、小規模事業主の立場になると負担だと思います。
その場合は大手の側が発注書を出すなど、少なくとも取引の根拠となるものを残すことが大切です。
企業の実態に合わせて、できうる対策を一緒に考えていければと思っています。
──ヤフーではずいぶんやりがいを感じておられたようですが、そこを辞めて弁護士事務所での仕事を選んだのはどのような理由ですか。
一番大きな理由は、静岡だったからということです。
私は沼津の出身で静岡が大好きです。
気候が温暖で人も温かい。
食べ物もおいしい。
以前から地方には関心がありました。
ヤフーの先輩で地方創生活動に取り組んでいる人に誘われて、田植えのボランティアに行ったこともありました。
大学の同期でゼミの同期でもある長谷川弁護士が静岡で事務所を開くという話を聞いて、最初は雑談として「手伝ってあげようか」などと言っていたのですが、改めて考えると静岡に帰るいい機会だと思いました。
静岡は将来人口が減ると懸念されています。
地域振興ということであればやはり地元の静岡県の役に立ちたい。
IT分野を得意する弁護士はどうしても東京に集中してしまいますが、私のIT企業での経験が静岡で生かせるのではないかと思いました。
──企業法務とは勝手が違うのではないですか。
前の会社で1年間弁護士事務所に出向したことがあります。
そこで家事案件、訴訟や裁判も経験しました。
それに一緒に働く長谷川弁護士は離婚訴訟に詳しくて民事についてはアドバイスももらえます。
お互いの強みを活かしつつ、幅広い分野の案件に対応できると考えています。
相談者にはいろいろな方がおられますが、事務所に男女両方の弁護士がいるというのは強みだと思います。
──弁護士を志望した理由はどのようなことですか。
大学に入るときにはそれほど強い弁護士志望はなかったのですが、中央大学は司法分野を目指す人が多く、司法試験受験のためのサークルもありました。
そこではすでに弁護士として働いていると先輩方と接する機会が多かったので、いろいろな話を聞くことができました。
みなさん自分の仕事に誇りをもって取り組んでいることが伝わってきましたし、中でも、ほとんどの方が「依頼者の方に感謝してもらうことができる仕事である」と言っていました。
話を聞いているうちに、弁護士に魅力を感じるようになりました。
──弁護士として最近関心を持っていることは何ですか。
近年は、美容整形が身近になってきていることもあり、それに伴ってトラブルも増えてきています。
施術を受けたところ傷やあざが残ってしまったり、誇大広告からトラブルになってしまったりなど、そのトラブルの内容は多岐にわたります。
被害者は私と同世代の方や、より若い方も多く、弁護士への相談に辿り着ける方ばかりではないように感じています。
──どのように対応するのですか。
被害にあった時にどう対応するかは案件ごとに異なるのですが、とにかく早く相談に来ていただきたいですね。
例えば悪質な業者であれば、時間がたつほど被害者が増え、業者側の対応が難しくなります。
早いうちならば業者もトラブルが表面化しないように返金してくれることもあります。
私も、一緒に働く長谷川弁護士も、できるだけ相談のハードルを低くしたい、相談者、依頼者にスピード感を持って寄り添いたいと考えています。